第20話 ジェノサイド計画は上々ですわ
私とリエンは大迷宮の入口へと赴く。
周りの人間はこちらを見るなりぎょっとすると、一目散に逃げていってしまった。
因縁をつけてきたら殺すつもりだったというのに。
二週間での所業がすっかり広まったせいで、カモと見なされないようになったらしい。
それどころか触れてはならない怪物のような扱いをされている気がする。
私が残念に思う一方、リエンは笑いながら茶化してきた。
「はは、嫌われ者だな」
「当然の反応ですわ」
気を取り直して迷宮へと踏み込む。
目指すは最下層なので、最短距離で盗賊やモンスターを虐殺して進んでいく。
事前にルートは確認しているため、特に迷うようなことはない。
強めの魔物が表れたとしても、私達の敵ではなかった。
私が動く前に、リエンの攻撃魔術が即死させるのでノンストップで移動を続けることができた。
道中、魔物の大群を焼き払いながらリエンが尋ねてくる。
「ところで、主要三大国の王を始末させた理由を教えてくれよ。ただの無理難題ってわけでもないだろ。マリスには何か考えたあったはずだ」
「買い被りではありませんこと?」
「いいや、間違いない。俺は騙されないぜ。どういう計画なのか知りたいな」
リエンは飄々とした態度で断言する。
何を言っても誤魔化せそうにないのは明らかだった。
仕方ないので部分的に説明しておくことにした。
「安寧を崩して、混沌の時代を招くのが目的ですわ」
「混沌の時代? なんだか面白そうだな」
「世界規模で舵取りが狂えば、その誤差が付け入る隙になるでしょう。我々が活動しやすくなる下地が出来上がりますわ」
本当はもっと時間をかけて進める予定だった。
徐々に暗躍の場を広げて、世界を取り返しの付かない状態まで追い込む……そしてとどめを刺す。
ところが、リエンがとんでもないスパンで暗殺を決行したので、少し想定とずれが生じていた。
まあ、今のところ困る要素はない。
失敗したわけではないので問題ないだろう。
「主要三大国の混乱は、世界情勢にも波及しますわ。今まで従うばかりだった諸国も反旗を翻すでしょう。きっと素晴らしい光景が見れますわ」
「……やっぱり最高だな。マリスを選んで良かったよ」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
私とリエンは固い握手を交わす。
そこには単なる愛情より深い想いが込められていた。