第101話 システムアップデートですわ
私は虚無に佇む。
久しぶりに手の力を抜いて自分の腸を投げ捨てた。
なんとも言えない開放感が込み上げて微笑む。
手がフリーだとこんなにも楽なのかと感心してしまった。
何億年も他人の首を絞めるものじゃないと思った。
神の残骸は消えていた。
不意打ちで蘇ってくるパターンも考えたが、その兆しは一向に訪れない。
本当に滅びてしまったらしい。
実にあっけない最期だった。
神は原則として不死身だ。
向こうは私に対抗できるだけの力は持っていなかったものの、逆にこちらも決定打に欠けていた。
だから途方もない年月を膠着状態で浪費したわけである。
神の死因は、精神の敗北だろう。
絶望と恐怖で心が満たされた結果、そのまま自壊したのだ。
そこについては私の狙い通りだったが、ここまで早く処理できるとは思わなかった。
もっと粘ってくると予想していたのだ。
個人的にはあと百倍の時間は耐えてくるのではないかと身構えていた。
こんな形で消滅してしまうとは、期待外れもいいところであった。
神に失望していると、肉体に新たな力が流れてきた。
どうやら神の権能を取り込んだらしく、さっそく視界に変化が生じる。
目の前にパソコンのウィンドウのような半透明の画面が表示されている。
そこには私のプロフィールが記載されていた。
RPGのステータスに酷似したデザインで、どことなく懐かしさを感じる形式である。
ユウトがレベルやスキルがどうとか言っていたので、おそらく吸収した彼の能力が反映されたのだろう。
画面を指でタップすると操作できたので、私は具体的な機能を確かめていく。
(なるほど。ポイントを消費してスキルを取得できるのか)
画面が切り替わって膨大な数のスキル一覧が展開された。
消費ポイントと簡潔な効果説明が載せられている。
ユウトはここから取得したスキルで無敵に近い力を得ていたようだ。
取得に必要なポイントは現在進行形で増え続けていた。
どうやらレベルと連動しているようで、高速で上がるレベルにしたがってポイントも際限なく増大している。
RPGの理論でいくと、神を殺したことで経験値が入ったものと思われる。
おかげで実質的にスキルを取得し放題になっていた。
せっかくなのでどんなスキルがあるか端からチェックする。
幸か不幸か私は虚無を漂っており、時間だけはほぼ無限に持て余している。
果てしない量のスキル一覧はちょうどいい読み物になってくれるはずだ。