第100話 ですわ
「まだ死にませんのね。しぶといですわ」
「神がそう、簡単に滅ぶと思うか……」
「ふふ、強気でいられるのも今のうちですわ」
「まだ……やめないのか……」
「あなたが死ぬまでやめませんわよ」
「馬鹿な……魂の輝きが強まっているだと? なぜ生き生きとしているのだ! 世界は死んで神も殺せない君に一体何が残っている!?」
「あなたの苦しみが私の幸せです。どうぞそのまま素敵な顔を見せてくださいね」
「やめろ」
「こちらの非を認めよう。謝るからやめてくれ」
「いつまで続くのだ……気が狂ってしまう」
「なあ、何か話してくれ」
「お願いだ、退屈すぎる」
「仕方ありませんわね。暇潰しに数を数えましょう。試しに一億秒なんていかがでしょう」
「い、嫌だ」
「遠慮はいりませんわよ。さあ、ご一緒に」
「一億秒ですわ。感想を教えてくださるかしら」
「…………疲れた」
「まだ休むには早いですわよ。はっそく二周目にいきましょう」
「これで二億秒ですわね。まだまだ元気です。あなたはどうですか?」
「…………」
「三周目を始めますわよ。ついてきてくださいね」
「四周目ですわ。一億秒って思ったより早いですのね」
「五周目ですわ。さっきまでの威勢はどこへ行ったのでしょう?」
「六周目ですわ。そんなにぐったり倒れていたら風邪を引きますわよ」
「七周目ですわ。もっと楽しそうな顔をしてください。せっかく二人の時間なのですから」
「八周目ですわ。首を絞め続けるのも疲れますわね」
「九周目ですわ。もう随分とあなたの声を聞いていませんが大丈夫ですか?」
「十周目ですわ。一億秒を十回……つまり十億秒になります。記念のコメントをいただきたいのですが、その様子だと厳しいですわね」
きっかり一億五千万周目を終えた時、神は砂になって死んだ。