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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴15年~49年

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猫歴28年その1にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。森に住む巨大なUMAではないし、バスでもない。


 さっちゃんが国民的アニメごっこをしたいとかうるさいのでやってあげたけど、全員わしのお腹に乗るわ背中に乗るわ写真や動画を撮るわ。

 コリスの発情期とおめでたのおかげで猫型・大は忘れ去られていたのに、さっちゃんのせいで再燃してしまった。


 そのせいで狩りに行っても、わしは乗り物になってしまったじゃろ! だから秘密にしてたんじゃ!!


 猫歴27年はおめでたい年だったのに、わしが乗り物にされてなんだか不満な年であったが、猫歴28年には各種報告があったので、センジ首相とホウジツ学長を集めて裏猫会議に挑んでいる。


「新しい機関を作りたいから、お金出してくんにゃ~い?」

「えぇ~~~」

「まぁ聞いてにゃ~」


 でも、わしがこんなこと言ったら、センジがめっちゃ嫌そう。なので、1年間イロイロ実験した各種報告をしたら、センジも難しい顔に変わった。


「人工衛星を運営する機関ですか……」


 そう。天気予報や飛び地で持っている領土との通信ができるようになったから、わしみずからプレゼンしているのだ。ホウジツは違うことで忙しいとか言って手伝ってくれなかったんじゃもん。


「天気予報はまだ精度は低いけど、この情報を他国に売ったらよくなくにゃ~い?」

「なるほど……雨の少ない土地は喜びそうですね」

「その価格設定は任せてください!!」

「ホウジツはお金が動かないとやる気も起きにゃいの?」


 軽くジャブを出したら、センジよりホウジツのほうがやる気満々。こないだまでまったく興味なかったクセに……


「あと、ウサギ市、エルフ市、猫の島ともリアルタイムで通信ができたにゃ。まぁまだ画像と文字を送れる程度で、衛星の位置しだいで途切れちゃうけどにゃ」

「それは防衛にも役立ちそうですね」

「日ノ本やアメリヤ王国にも繋いでくれません?」

「ホウジツはもう、商売関連はノータッチにゃろ~……まさか副業してるにゃ?」

「そんなまさか~」

「だから時間がないんだにゃ!?」


 センジにプレゼンしているのに、ホウジツが邪魔するので話が途切れる。金額面の補助をしてもらおうと同席させたのは失敗だったかも。でも、副業をしていると知れたから、税金で搾り取ってやる。


「そんな殺生な!?」

「それが嫌にゃら大学にも力を入れろにゃ~」


 ちょっと脅したらホウジツは従順になったので、もう少しの間、様子を見てやる。ただ、センジのあの顔はホウジツの儲けを狙っている顔だから、わしは助言してしまったかも?

 ホウジツがケツの毛まで(むし)られる未来は見えてしまったけど、センジは新しい機関を作ることに賛成してくれたから、あとは費用の概算と猫会議にどうやって提出するかの詰めを話し合うのであった。



「とりあえず、こんにゃもんかにゃ?」


 人工衛星機関と天気予報機関を作り、大学から人員を出し、オニヒメの夫のセンエンも天気予報機関のトップに捻じ込んだら、わしは2人に確認。

 2人とも頷いてくれたから決定となったけど、ホウジツからも何かあるらしい。


「そろそろ株取引きをやってみませんか~?」


 ホウジツは悪い顔で揉み手をしてるってことは、勝算があるのだろう。てか、このために副業してたんじゃな。


「株にゃ~……」

「勉強済みですから、必ず儲かりますよ!」

「わしはあんまり好きじゃないんだよにゃ~」

「その株取引きとはなんですか?」


 これはセンジの専門外なので、ホウジツの熱いプレゼン。なんか全身から炎が出ているように見えるので、よっぽどやりたいみたいだ。


「それって……ただのギャンブルなのでは……」

「違います違います! 元手の少ない商人でも、新しい事業を始められる素晴らしいシステムなんですよ!!」


 でも、センジには響かず。たぶんホウジツの胡散くさい顔だと信用に値しないみたい。ホウジツもそれに気付いて、説得してくれとわしに泣き付いて来た。


「まぁ株取引きの発端ってのは、船で物を運ぶ……船ではわかりにくいにゃ。キャットトレインを1人の商人が貸し切りにしたいと思ったとしようにゃ。そうなったら高いにゃろ?」

「はい。かなりの額になりますから、貸し切りなんてやろうと思わないでしょうね」

「だから複数の出資者からお金を集めて、貸し切りにしたキャットトレインに商品を積み込んで売った利益を、利息と共に出資者に返すってのが、株取引きの始まりだにゃ」

「確かに新しい商売をしようとしたら助かりますね。でも、どうしてホウジツさんだとギャンブルみたいに聞こえたのですか?」


 ホウジツの顔が悪いと言いたいところだが、ちゃんと説明するからこっち見るな。


「始まりは助け合いでみんにゃハッピーになったんにゃけど、儲かり過ぎたんにゃ。だからみんにゃマネして株式会社が増えて、その株式を売買する機関が必要とにゃり、どこにお金を預けたら儲かるのだろうと考えるようになったんにゃ」

「あ~……それは誰も損なんてしたくないですよね」

「にゃろ? その結果、出資者はめちゃくちゃ儲かる人と損しか出さない人に分かれたんにゃ。だから、ギャンブル要素があるんだよにゃ~」

「なるほどです。それが猫陛下が好きじゃない理由ですか」


 センジの質問に、わしは首を横に振る。


「いんにゃ」

「違うのですか?」

「ホウジツに質問するにゃ。株式会社になったら、会社は誰の物にゃ?」

「それは代表者ですから社長の物ですよ」

「おお~い。ぜんぜん勉強が浅いにゃ~」

「え? 違うのですか??」


 センジもそう思っていたようなので、ホウジツの頭を小突いてから説明する。


「株式会社の会社は、株主の物にゃ。社長の物にしたかったら、持ち株比率の過半数以上を持ってないといけないんにゃ」

「あっ! そんなこと書いてた気がします!!」

「お前は儲かるとこしか記憶に残ってないんにゃろ?」

「あ、あははは」

「はぁ~……自分の作った会社にゃのに、株主からああだこうだ言われたり、株式を大量に買われて乗っ取られたりするんにゃよ? だからわしは好きじゃないんにゃ」


 ホウジツの空笑いはため息で返して説明してみたら、センジも理解してくれた。


「てか、そもそもにゃんだけど、株式会社にできるほどの商店にゃんてあったかにゃ?」

「あ……」


 そして質問を投げかけたら、ホウジツも撃沈。ていうか、猫の国で大手企業といえば雑誌社しかないんだから、フライングしすぎだ。


「それにゃら先に、国営銀行を作るとか列車や工場の民営化とか、やることいっぱいあるにゃろ~。ホウジツは今までいったいにゃにしてたんにゃ~」

「目先の金に目が眩んでました~~~!!」

「正直なのはいいんだけどにゃ~……」


 ホウジツに、未来の知識を見せて好きにさせていたのは大失敗。なのでここはわしが操るしかないので、先ほど言ったことを調べるようにメモを取らせていたら、センジがメモ用紙をくしゃくしゃにして投げ捨てた。


「にゃにするんにゃ~」

「国営銀行はいいですけど、民営化は反対!!」


 そりゃ、国の稼ぎ頭を捨てろと言っているのだから、首相としてはやってられないみたい。


「これも健全な国作りに必要なんにゃ~」

「僕は賛成です! 株式会社にしましょう!」

「ホウジツは黙ってろにゃ~~~」


 というわけで、裏猫会議は揉めに揉めたのであった……



 裏猫会議が終わって廊下を疲れた顔で歩いていたら、話し忘れがあったのでセンジに質問。


「ところで、大学の出資の件はどうなったにゃ?」

「検討中です」

「前は検討を加速するって言ってたにゃ~」

「だから検討している最中なんですって。一歩前進してますでしょ?」

「それは進んでにゃいのでは??」

「検討中は検討中なんです~~~!!」


 センジが逃げ出したのだから、次の獲物。ホウジツをロックオン。


「いくら稼いでるんにゃ?」

「なんのことですか~??」

「副業にゃ。わしも出してるんにゃから、ホウジツもちょっとぐらい出せにゃ~」

「借金まみれなんです~~~!!」

「噓つくにゃ~~~!!」


 ホウジツも逃げ出したのだから仕方がない。ここは秘密裏に税金で奪ってやろう。でも、先にセンジに法外な税金を取られていたから、わしもかわいそうになって「勘弁してやってくれ」と、ホウジツと一緒に頭を下げに行ったとさ。



 新機関は裏猫会議から、議員が審議する猫会議に移行したので、わしも猫会議事堂とかいう国会みたいな建物に足を運んで見ていたら、さすがは信頼厚いセンジ。

 もしもの時は王様特権を使ってゴリ押ししようと思っていたけど、議員を説得して予算なんかも勝ち取ってくれた。まぁ、王様のわしが見ていて王様の発案と言えばそうなるか。

 もう一度言っておくけど、猫会議事堂とはわしが作ったけど名付けはわしではない。この際暴露するけど、リータとメイバイだ。王族の多数決で負けた。サクラとインホワだけ、わしに賛成してくれた。だって猫じゃもん。


 これで人工衛星事業も天気予報も勝手に発展していくと安心して、赤ちゃんの世話をしていたらサクラとインホワがわしの顔を見るなり「ワーワー」騒ぎ出したので、空中庭園に連れ出した。


「大声出したら赤ちゃんがビックリするにゃろ~」

「「ゴメンにゃ~」」

「んで、にゃにを言ってたにゃ?」

「「Wi-Fiにゃ! 使えるようになったにゃ!?」」


 聞き取りにくいと思ったら、2人は「ワイファイ、ワイファイ」言ってたっぽい。


「使えるわけないにゃろ~」

「インターネットできるって聞いたにゃ~」

「誰から聞いたんにゃ~」

「ノルンちゃんだよ」

「ノルンちゃんにゃ~。にゃ?」

「いつの間にいたにゃ!?」


 わしたち白猫スリーが集まって喋っていたら、ノルンがわしの頭に乗っていたので鷲掴みにしてやった。


「ノルンちゃんはどこで知ったんにゃ?」

「猫会議を傍聴してたんだよ」

「1人でにゃにしてるんにゃ~」

「最近ベティの頭も飽きて来たんだよ~」


 ノルンは暇潰しで猫会議を見ていたらしいけど、王族すらめったに近付かないのに勉強熱心なことで。

 そこで人工衛星の話を聞いたから、「そのうちインターネットが使えるかも?」と訓練帰りのサクラとインホワに言ったから早とちりしたみたいだ。


「だから前にも言ったにゃろ? まだスマホも使えないし、新しく作れないから無理にゃ。そもそもコンテンツも動画サイトもないんじゃ、Wi-Fi繋いでも意味ないにゃよ?」

「「そんにゃ~~~」」


 というわけで、インターネットをやりたい2人の心は(くじ)いてやったとさ。


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