8,決戦、魔王城!
なんだかゲームのストーリーにありそうなサブタイトルになってますねw
10部になったので、あとがきの部分にキャラの特徴などを書いていきたいと思います!
「聖なる力の源より編まれしベールよ、我らにかかれ、守って輝け!」
アンベシルの詠唱に合わせて、フォル達に光のベールがかかり、身体能力や魔力の操作性が上がると同時に、強力な防御結界が張られた。
そう、この魔法はパーティ全体のステータスを上昇させる効果と物理、魔法の両方に耐性のある防御結界を張る効果があるのだ。
それをアンベシルがヴラカスの作戦どおりにかけた。
バフのおかげでいつもより操りやすい自身の魔力を練って連射が可能な光の魔法の陣を敷き、ナルに召喚保護と一度だけ攻撃を跳ね返す結界を張った。
そして、ヴラカスとトァブにもアンベシルの魔法を補強する形で身体能力、防御力上昇の魔法をかけた。
ひとまずヴラカスに指示されていた通りの行動を終えてフォルは周りを警戒しつつも思考する。
(とりあえず、強化の魔法をかけたし、連射式も構築が終わったからヴラカスさんとトァブさんが攻撃を始めたら、援護射撃すればいいかな。
それにしても、嫌な予感がする。ホントに幻獣の一撃だけで勝てるのか?あんな化け物じみた魔力持ってて、しかも“勇者”をそれで縛るなんて芸当ができるんだ、サクレ様に匹敵する力かそれ以上ってことだろ?
ヴラカスの野郎はちょっと自分を過信する癖があるんだよなぁ。)
心の声だからなのだろうか、どんどん口調が荒くなっていく。それに気づかないまま、フォルは思考を紡いでいた。
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とっとと終わらせたい。
今回の件はその一言に尽きる。
レナトゥスはめんどくさいと思いながら、明らかに時間稼ぎに攻撃してくるヴラカスと後方から連射されるフォルの光の玉を軽くいなしていた。
(あぁ、後ろで召喚式描いてるな。あの式なら、幻獣ゲベートあたりだな。
確か、かなり強めの魔祓いの術を使えるはずだ。まあ俺には当たらないだろうがな)
などと今から召喚されるであろう召喚獣の検討までつけられる余裕があった。
ヴラカスの剣戟を純粋な体術だけで受け流し、ヴラカスの意味の動きを補うように打たれる光の魔法を自身が常に纏っているオーラだけで相殺していく。
正直にいえば、動かなくともその攻撃がレナトゥスを害することはない。あたったとしても、痛くも痒くもないだろう。
それほどまでに勇者パーティと実力差があり、魔王としての力の底がしれないレナトゥスも少しばかり気がかりなことがあった。
(なんで動かないんだ?時間稼ぎするにしても、庇うにしても動かなきゃできない。)
心の中の疑問はある一人に投げかけられる。
そんなことを考えているときだった。
「準備できた!いつでもいけるよ!!」
召喚式が描き終わったのだろう。
金色の光に包まれた召喚士ナルが、短い赤髪を陣から吹き出す風にかき上げられながら叫んだ。
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式を描き終えてヴラカスに聞こえるように叫んだナルの足元にできた陣から、光の粒が溢れ、幻獣ゲベートが顕現した。
純白の羽毛に金の模様が入った常磐色の飾り羽をもつ、とても美しい大きな鳥の姿をしている。澄んだ黒い眼に宿る紅い闘志は鋭くレナトゥスを射抜き、魔を滅するという意志がありありと浮かんでいた。
無事に呼び出せたことにナルは少し安心することができた。
しかし、本題は呼び出すことではない。
ナルはゲベートに向かって詠唱する。
「聖なる光の使者、御神の導き手たる幻獣よ!
目の前の魔を祓い、闇に光を灯し給え!」
その詠唱に応えるように、ゲベートの羽毛の金の模様が輝き出す。
レナトゥスを囲うようにして蒼い陣が構築されていき、そこから出た術式を形造る文字が鎖となって魔王を縛ったた。
それを見たヴラカスが攻撃をするために魔王に飛びかかろうとするのを見て、ナルは慌てて止めた。
「ちょっ、ヴラカス、ダメ!止まって!
アンタがその陣に触ったらゲベートの術が壊れる!」
「!そうだった、すまない!」
ナルの制止の声を聞いたヴラカスは陣に触れる寸前のところで止まり、そこから離れるように後ろに飛び退った。
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幻獣ゲベートの術の構築が終わった。
レナトゥスは文字の鎖で縛られていて動けないでいた。
この程度の縛りであれば引きちぎることも可能だが、あえてそうしないのには理由がある。
そう、“めんどくさい” だ。
それに、そうする必要がない。
確かにレナトゥスとてゲベートの構築した術が直撃すれば無傷ではいられない。
しかし、彼は攻撃が当たらないことを知っていた。
蒼い光の柱が立ち、レナトゥスに迫ってくる。
それはとてつもない熱量と聖光の力をもってしていかなる魔をも祓うと云われている、光魔法で最高峰の術式なのだった。
(そろそろ動かないと大切な主に全魔を祓う攻撃が当たるぞ?さあ、どうする?)
レナトゥスは心の中で、魔王の忠実な下僕になりつつある勇者パーティの一人にもう一度疑問を投げかけた。
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動けない魔王に迫る光の柱をアンベシルは最後方から眺めていた。
(この攻撃で少しは消耗してくれるといいかなぁ。まぁ、無理だと思いますけどぉ。魔王ってぇ、馬鹿みたいに高い聖属性の耐性があるんですよねぇ。)
彼女が思うに、魔王は動けないのではない。動かないのだ。
しかし、まともに受けても無事ではないだろう。どうするつもりなのかとアンベシルは考え、重要なことを思い出した。
(あ!セフェレアさんのことを忘れてましたぁ!あの子聖種か魔種かもわからないけどぉ、もし魔種だったら大変ですよねぇ。たぶんこの距離ならぁ、祓われてしまいますぅ。)
そう思い、自分の後ろを振り返る。
が、そこにセフェレアの姿はなくただ蒼い光に照らされているだけの謁見の間の扉が見えただけだった。
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レナトゥスの目の前が蒼い光で埋め尽くされる。
(はあ、しょうがないか。ここで攻撃を受けるのも面白くないしな。)
レナトゥスが鎖を引きちぎろうとしたその瞬間だった。突如として陣が消え、鎖が粉々に砕け散る。
「やっと動いたか、我が忠実なる下僕よ」
術を壊したのは……トァブだ。
「申し…訳あり…ません、我…が主。」
鍛え上げた大きな体を折り、トァブはレナトゥスに跪く。
しかしその言葉にも動きにもぎこちなさがあり、レナトゥスに従属することに抵抗しているのがよくわかった。
「ご苦労さん。もう少ししたら、助けてやるからちょっと待っとけ。
さて、勇者。お前らに魔王ってのを教えてやるよ。」
レナトゥスはそう言うと詠唱を始める。
「我に従いし魔の典よ、ここに来たれ。
陽を転じ、暗夜へと堕とすその力。我が意志により解き放たれよ。」
彼の足元には、魔種の文字で陣が描かれていく。
そこからレナトゥスが激怒したときに出たものと似た黒い霧が溢れる。
一瞬、眩い光が謁見の間を満たし、ヴラカス達が目を開けたときにはレナトゥスの手には一冊の本があった。
「俺の魔導書、暗夜の魔典レヴォネだ。
トァブ、俺をアイツらを抑えとけ。」
今にも飛びかかってきそうな勇者達の牽制をわざとトァブにやらせる。
(俺のセフェレアに手を出そうとしたんだ。これくらいで許してやるんだから安いものだろう?
精々、互いに仲間を攻撃しなきゃならないことに苦しめ。)
レナトゥスは悪魔らしく残酷な思考をしながらその美しい顔に心からの愉しそうな笑みを佩くと術の展開を始めた。
《セフェレア》
·葡萄色の瞳に艷やかな黒髪を持つ
·小柄で可愛らしい見た目とは裏腹に毒舌
·長い髪を纏めるために使っているシニヨンキャップのリ
ボンは昔レナトゥスから贈られたもので、彼女にとって
何よりも価値のあるもの