7,いざ、戦いの場へ(2)
またまた1ヶ月空いてしまい、誠にスミマセンm(_ _;)m
(いつもコレばっかりですねw)
おかしい…
自分の何かがおかしくなっていく…
最近、妙に魔種を討伐することに嫌悪を感じていた。
今までそんなことを思ったことはなかったのに。
なんなら魔種に対して憎しみすら感じていたというのに。
何が起こっているのだろうか?
考えて、探して、ようやく見つけた答えは認めたくないものだった。
だから、魔種を屠った。
自分は違うのだと、そうはならないのだと自らに証明するために。
そうしているうちに魔城に着いた。城の中に入った。そこから、もっとおかしくなった。
魔王に会って、その名をその口から聞いた途端、自分の体の中で魔力が暴れ回って叫んだ。“跪け”と。
魔王に跪けるわけがない!
自身の魔力に、心に抗ってただ戦いの時を待つ。
魔王を倒せばこの感覚が無くなると信じて……
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黒い柱、黒いカーテン、黒いシャンデリア。
黒で覆い尽くされた謁見の間に一つだけある豪奢な金の玉座。
深紅の天鵞絨で誂えられた座面はフカフカでとても座り心地が良さそうだ。
そんな玉座にドサリとはしたない音を立てて座る。
どうせそんな座り方を窘めるセフェレアは今、勇者たちをこの部屋に案内している途中だ。
それにしてもやけに来るのが遅い。
レナトゥスは手のひらの上に2匹の死紫蝶を創り出した。
1匹はすぐに飛び立ち壁を抜けてどこかへ向かう。残ったもう1匹はレナトゥスの周りをふわふわと優雅に飛び回っていた。
少しして飛んでいった蝶が戻ってきて、レナトゥスのほしかった情報を持って帰ってきた。
その情報とは、セフェレアが今どこを案内しているかというものだ。
苛立ちを隠しもせず、セフェレアに念話を飛ばす。
『セフェレア、なんでそんなとこ案内してんだ?謁見の間と反対だろうが。』
『貴方が姿を変化させる時間を稼いでたんですよ。さっきあんなに魔力を暴走させたんですから。
その様子だと無事に変化できたみたいなので、すぐそちらに行きます。』
『ああ。』
念話を切った途端、オリアスの構造が歪んだのがわかった。
どうやら、セフェレアがショートカットのために部屋と部屋を繋いだらしい。
謁見の間の扉が重厚な音を立てて開き、セフェレアに続いて勇者達が入ってくる。
不機嫌そうに玉座にふんぞりかえるレナトゥスの周囲を2匹の蝶が戯れていた。
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セフェレアの案内に従い、部屋に入った。
玉座には、えらく不機嫌そうな人型の魔種が座っている。
「まさか…さっきの自称魔王じゃない…わよね?」
その雰囲気が先程とあまりにも違うので、ナルは思わず目の前でふんぞりかえる人型の魔種に問う。
その問いの答えは、ナル達の後方に控えたセフェレアから返ってきた。
「そのまさかです。そちらにいらっしゃるのが貴方様方の宿敵、魔王レナトゥス様にあらせられます。」
「はぁぁ…まったく。今代の勇者達はホントに話にならないな。自分たちの討伐対象の魔力も覚えられないのか?」
ナル達の数段高い位置にある玉座から、呆れ返った声が響く。
その言葉にもどことなく不機嫌さが滲んでいて、この魔王は一体何にそんなに不機嫌になっているのだろうかと思ってしまった。
「確かにぃ、魔力の波長は同じですけどぉ、容姿もぉ、魔力の密度なんかもぉ、さっきと全然別物じゃないですかぁ。ナルさんが確認したくなるのもぉ、当然だと思いますぅ。」
そう、アンベシルの言う通りなのだ。
食堂で別れるまでは15歳程にしか見えない、中性的で可愛らしかった容姿が、今は精悍さが増し、十分大人と言えるような姿をしている。
濡羽色から暗赤色にグラデーションする髪の間、側頭部からニ本一対の角が生えていて、ただ金色に輝いていただけの瞳も、中心が漆黒の瞳孔により縦に裂けていた。
160cmくらいだった身長も、今は190cmをゆうに超えるであろう長身になっている。
その身体に纏う魔力も密度が格段に大きくなっていた。
要するにさっきとは本当に別人なのである。
「で?戦うんだろ?こっちはとっとと終わらせたいんだ。かかってこい。」
本当に面倒くさそうに魔王が言ったのを皮切りに、ヴラカスの雰囲気が変わった。
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魔王が煽ってきた。それはもうとんでもなく上から目線で。
“とっとと終わらせたい”だと?
勘違いも甚だしい。こっちがお前のことを思って食事に付き合ってやったのに。
ヴラカスの口角が釣り上がる。
「そうだな。腹も満たされたし、魔力も回復した。そろそろ始めようか。」
そんなに終わらせてほしいなら、終わらせてやろう。
ヴラカスはそう考え、自身の魔力を操作して仲間達にステータスアップの術を張る。
それを察したのだろう!フォル、ナル、アンベシルは、自分達の杖を構え、作戦どおり術を構築し始めた。
やはりトァブだけは何も反応を返してはくれない。そのことに一抹の不安を覚えながらも、ヴラカスは魔王の方を向いて、剣を構えた。
その様子を見てだろうか、トァブも拳を構たことに少しだけ安堵した。
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