3,勇者、魔城に到着する。そしてメイドに振られる。
勇者が魔王様のお城に到着です!
「なんたってこの森は暗いんだ?」
勇者ヴラカスはうんざりとそう告げた。
独り言のつもりだったのに、隣で光の魔法を使いあたりを照らしている法術士フォルから返事が返ってくる。
「ここは穢れた魔種の瘴気で植物が異形化してるんです。木の精霊たちもそうなってしまっていて、サクレ様から頂いた地図がなかったら迷っていたところですよ。」
(そんな真面目な答えが聞きたかったわけじゃないんだが……)
勇者はそのキラキラしい顔に苦笑いを浮かべた。
「そんなことよりヴラカス、魔王を倒す手立てはあるのか?」
聞き取りづらいくらいに低い声が後ろから聞こえてきた。
武闘家のトァブだ。
「ああ、もちろんさ。
魔城にも近づいてきたことだし、みんなにも作戦を話しておこうと思う。」
そう言ってヴラカスは立ち止まった。
「作戦はこうだ。
まず、魔城に行ったら戦闘になると考えていいだろう。だから、戦闘が始まったらナルが光の幻獣を召喚するんだ。」
ナルはベテランの召喚士で、今回の魔王討伐に向けてサクレから聖なる幻獣を貸し与えられていた。
「わかったわ。でも、聖なる獣だから詠唱と召喚に時間がかかると思うの。その時間はどうやって稼ぐの?」
「そこは俺やトァブがどうにかするから、召喚したらすぐいちばん高威力の光の魔法を打ち込むんだ。
フォルはその光の魔法と幻獣を補助してほしい。」
「了解です、ヴラカス様。」
そこに間延びした舌足らずの声が挟まれる。聖女アンベシルだ。
「でもでもぉ、その魔法だけで魔王倒せなかったらぁ、
どぉするんですかぁ?」
「たしかにね。いくら光の幻獣でフォルの援護があっても魔王を倒せないかもしれない。」
ナルもアンベシルの言葉に賛成する。
「そんなの知るか!正面から戦って勝てばいいんだよ!」
「そんなことはないと思うが……、まぁ、考えておくのに越したことはないな。そうなったら俺とトァブで真っ向勝負するよ。その時はフォル、ナル、援護を頼むよ」
そんな、作戦とも呼べないようなのんきな話をしながら歩くうちに、勇者たちは森の出口に到着した。
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森を抜けると不気味な蔦が絡まった大きな門がそびえ立っていた。
「この門〜、すごぉく古そうですよぉ?
錆びついててぇ、開かないんじゃないですかぁ?」
アンベシルがそう言ったとき、門がひとりでに開き、門の
右側にある狼の彫刻が柘榴石の目を右に向けて告げる。
『賢者の墓は右の道、賢き茨の谷。』
左側の碧玉の目の狼はその目を左に向けて、
『魔を望むなら左に。紫の蝶に蜜を捧げよ。』
そして緑柱石の瞳のフクロウは、翼を広げて真ん中の坂道を指し示す。
『城の主の許へ向かうなら下の道。闇に侵されぬよう、光をともして進むが良い。』
「そんなの、城の主の許へ行くに決まってる!」
声を揃えてそう言った勇者ヴラカスたちの前に何色とも形容できない不思議な色のランプが現れる。
『『『ランプの灯を消すことなかれ。奪うことなかれ。忘れることなかれ。さすれば城への道、自ずと開かん。』』』
3匹の彫刻はそう言うと動かなくなってしまったが、その目に嵌った宝石の光は消えていなかった。
ヴラカスたちはランプを持ち、一寸先も見えぬ真ん中の坂道を下っていった。
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「レナトゥス様?どこにいるんです?
もう!すぐ勇者が来るから食堂にいろって言ったのに!」
セフェレアは禍々しく変貌を遂げた魔城の中を忙しく動いて魔王を探す。
「こうなったらあれしかないですね……。
これだけは最後の手段だったんですけど」
そうつぶやくとセフェレアは図書室に向かった。
そして、天鵞絨のカーテンで隠された部屋の扉を開けると
そこには、先客がいた。レナトゥスである。
「ああ、セフェレアか。どうした?」
「どうしたもこうしたもありますか!?
食堂にいろって言っておいたのになんでいないんです?!もうすぐ勇者様が来るって言いましたよね?」
「セフェレア、殺気を抑えてくれ!魔王の俺でも怖いから!」
「早く食堂にいってください。
さもないと……」
「分かった、分かった!!分かったから」
そう言ってレナトゥスは隠し部屋を出て行った。
「はぁ。それにしても、“私”に何かようでもあったんですかね?わざわざこの部屋に来るなんて。」
疑問に思いながらもセフェレアも部屋を出る。
すると、玄関の方から何やら覚えのある気配がする。
ちょうど、城の前に勇者たちが到着したようだ。
ホントはサブタイトルを回収したかったんですけど、長くなっちゃったので切ります。
次話で戦闘シーンがかけるといいなと思っております!