13,和やかに晩餐を
この作品を読んでくださっている皆様、あけましておめでとうございます!!
12/26〜1/5までを勝手に狼花の冬休みとさせていただいておりました。スミマセンm(_ _;)m
今年もよろしくお願いいたします!
ドアが開く。
レナトゥスがちょうどドアノブに手をかけようとするところだった。
「なんだセフェレアか。驚かせるなよ。」
「失礼いたしました、足音がしましたので。
気づいているのに主人にドアを開けさせるなんてできませんよ。」
「お前、晩餐の用意に行ったんじゃなかったのか?」
「お客様を放って置くのもどうかと思いまして、お相手をさせていただいておりました。
ですが、レナトゥス様方も戻られたので私は準備に取り掛からせていただきますね。」
そう言うとセフェレアはさっきレナトゥスとサクレが入ってきたドアから出ていってしまった。
そこでようやくレナトゥスの意識がヴラカス達に向いた。
彼らが座っているソファを見ると、全員肩を寄せ合って眠っていて穏やかな寝息が聞こえてきた。
あるとは到底思えないが、もし何かあった時、彼らが起きていなければ…。
それを考えると、セフェレアが談話室から離れなかったのも妥当と言えるだろう。
「ありゃりゃ、だいぶ寝入っているみたいだねぇ。この様子じゃしばらく起きそうにないね。」
「だな。聖都からここまでかなりの距離があるし、お前がコイツらを送り出したのは…確か3日前って言ったか?」
「うん。ここまで3日間で来るには相当無理して進んだんだろうから、晩餐くらいまでなら休ませてやっておくれよ?」
レナトゥスはサクレの言葉に無言でうなずくとセフェレアに念話を飛ばした。
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『セフェレア、晩餐の用意なんだが少しゆっくり目で頼む。』
『それはいいですけど…、何かございましたか?』
『いいや、ただ勇者達がソファで寝ててな。もう少し休ませてやりたいってサクレが言うんだ。』
『そういうことでしたか。もちろんです。では失礼いたしますね。』
セフェレアは念話を切ると少し休憩することにした。
(やっぱりレナトゥス様はお優しいですよねぇ。“嫌いだ”とか、“面倒くさい”とか言いつつ結局サクレ様のお願いを聞いてあげていますし。まぁ、そういうところが相応しいと思ったんですけどね。)
厨房にある背もたれのない木の丸椅子に腰掛け、セフェレアはそんなことを考えていた。
そんなときだった。
地下にある厨房の壁をすり抜けてどこからともなく紙でできた鳥がセフェレアに向かって飛んできた。鳥はセフェレアの周りをくるりと一周すると彼女の手のひらに収まり、その姿を小さめの手紙に変えた。
添えられたドライフラワーと赤い封蝋に綴じられた手紙を開けば、華やかな香の匂いとともに美しく崩された文字が目に飛び込んできて、セフェレアには、差出人を見るまでもなく誰からの手紙かを知ることができた。
セフェレアは手紙にサッと目を通し、きれいにたたんでメイド服のポケットに入れた。その葡萄色の瞳は不安げに翳っている。
ハッと我に返り、壁の時計に目をやれば、休憩しようと思った時間から30分も経ってしまっていた。
(ちょっと休憩しすぎてしまいましたね。それでは続きを始めましょうか。)
パンッと小気味よい調子で手を叩き、気持ちを切り替えるとセフェレアはレナトゥスの念話が来たときに、丁度下処理が終わった食材の調理を再開した。
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アンベシルがふわふわとした気分で目を開けると、視界は暗紅色で埋め尽くされていた。
「うわぁ!」
驚いてソファから飛び上がってしまい、落ちそうになったところを細い腕が支えてくれた。
「おっと、驚かせたな。すまない、あんまり気持ち良さそうに寝てるから毛布をかけようと思って」
それは15歳程の姿に戻ったレナトゥスであった。彼はアンベシルの隣で未だ寝息を立てるフォルやヴラカスを見た。彼らも毛布をかけられており、レナトゥスの言葉に嘘がないことを感じた。
「ホントにごめんな。って、お前そんなの頭についてたか?」
眉を下げなが謝罪を口にするレナトゥスの訝しげな視線が自身の頭に向かうのを見て、アンベシルは頭に手をやってみた。
そこにあったのはフワフワの真っ白な長い耳だった。
「えっと、コっ…コレは、その…」
慌てふためきろくに言葉が出てこなくなったアンベシルの言葉を遮るようにサクレが口を挟む。
「フハハッ、アンベシルの獣化は久しぶりに見たなぁ。でも、前に見たときは完全にうさぎに変化してしまっていたから、少しは制御できるようになったということだね。」
サクレの揶揄いを含んだ、というか揶揄いしかない嬉しそうな声にアンベシルの頬が赤く染まる。
「サクレ様ぁ?!それは禁句ですよぉ!それにぃ!完全に兎に変化してたってぇ、かなり昔の話ですよぉ!」
獣化の影響で橄欖石から柘榴石に変わった瞳を潤ませて、アンベシルはサクレを精一杯睨んだが、サクレには効かなかったらしい。
「でも事実じゃあないかぁ。ククッ」
と、心底愉しそうに笑うから、とうとうアンベシルは泣き出してしまった。
「サクレ、お前ホントに良い性格してやがるなぁ?ったく、ここにセフェレアがいなくて良かったな。命拾いしたぞ。」
サクレを小突きながら懐から取り出したハンカチを渡して
「ほら、これでも食って泣きやめ。セフェレアのだから美味いはずだ。」
と、テーブルにあった小さめのメレンゲクッキーを口に入れられた。
口の中で溶けたお菓子はほんのり甘酸っぱくて、レナトゥスに少しだけキュンと来てしまったのはアンベシルだけの秘密だ。
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なんだかとても騒がしい。
そう思ってトァブが目を開ければ、真っ赤な目と顔をしたアンベシルをサクレが揶揄っていた。それをレナトゥスが呆れ顔で見守っている。
トァブはレナトゥスの容姿に違和感を抱いた。今、レナトゥスは少年の様な見た目で、身長は170cmくらいであった。
(魔王…あんなに小さかったか?さっき戦ったときには俺とあまり変わらなかった気がするが…。それに角が無くなっている…。)
思考に勤しむトァブに、不意にレナトゥスの視線が向けられる。
「お前、トァブといったか?俺の容姿に疑問を持ってるようだな。」
まさに今考えていたことを当てられ、良く言えば素直、悪く言えば単純なトァブは驚きを隠せなかった。
「なんでわかったんだ?」
「いや、すんごいじ〜っと見られて考え込まれれば誰だって分かんだろ」
そう言われても、トァブにはそれがとても凄い事のように思えて仕方がなかった。
「お前が考えていることとしたら…、あぁ、俺の身長と角の事か。答えてやろう。
今のが俺の本来の姿だ。お前らがオリアスに入ってきたときに会ったろ?で、やり合った時の姿が魔王用。こんな少年みたいな姿で“魔王だ”って言っても誰も信じない。現にお前らも信じなかっただろ?」
レナトゥスの言葉に、確かに、と納得を示しトァブはうなずいた。
そのままレナトゥスと談笑を続けていると、フォル、ナル、ヴラカスも目を覚まし、談話室は一層賑やかになった。
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その頃、セフェレアは食堂にいた。昼餐の片付けをした後掃除をしたのだが、もう一度チェックをしに来たのだ。
(うーん、クロスを変えましょうか。なんだか色がくすんで見えますし、そもそもかなり年季の入ったものですからねぇ。それに、晩餐に黒は暗いですから。ついでで…)
大人数が座ることができる長テーブルにかかった黒いテーブルクロスを指を鳴らして消し去ると別の真っ白なクロスをテーブルクロスをかけた。
ついでにカーテンを黒から柔らかく深い青に、シャンデリアと燭台を金から銀に変えれば、禍々しかった食堂は爽やかかつ威厳があり、かと言って硬すぎない不思議とリラックスできるような雰囲気になっていた。
「まあ、もとの姿に戻っただけですけどね」
セフェレアは誰にということもなくつぶやく。
そう、食堂はもともとこんな感じだったのだが、勇者達が来るので魔城仕様になっていただけなのであった。
セフェレアは食堂とをもう一度ぐるりと見渡し、完璧になったことを確認すると、レナトゥスに念話を飛ばした。
『レナトゥス様、晩餐の用意が整いましたので食堂にサクレ様方を案内して差し上げてください』
『了解、すぐ行く。』
レナトゥスからの返答を聞き、セフェレアは厨房に戻った。
《アンベシル》
·アンベシル・ミウィというのがフルネーム
·薄桃髪とペリドット色の瞳をしていて庇護欲を誘う容姿
をしている
·母が人間、父が兎の獣人であるハーフで、感情が大きく
揺さぶられると獣化してしまう。特に恐怖からくる感情
の揺れでは完全に兎になってしまうことが多い
·聖霊の力を借りることができ、その能力を買われて聖陽
教会の巫女となって、(本人には全くそのつもりはなか
ったが)教会初の平民上がりの聖女となったため、信者
からの絶大な人気を誇る




