第五章 スキー場の雪は八割が人工だと誰かが言っていた
題名が酷くてごめんなさい。
スキー場に着いた。
はっきりいって寒い。
自殺するとはいえ、死ぬまでに苦しむのはごめんだ。
だから俺は、自分の昼食に、薬局で買った睡眠薬を混入させるつもりでいる。
寝てる間に死ねたら、きっとそれは楽だと思う。
準備は万端だ。
トイレの位置はもちろん、どのタイミングでどんな台詞をいうか、すべて考え、確認してある。
絶対に、大丈夫。自分に言い聞かせる。
「流時、着膨れてない?」
北村が言った。
「いや、これが適度な防寒なんだ!」
弁解しても、やっぱ見た目はダサい。
北村は赤のダウンベストを着ている。
珍しくなかなか似合っていて悔しい。でもメガネが曇っている。
笑える。
俺、死ぬ前なのに。
「うわぁ、栗原のベスト格好いいね!」
田中緋咲が言った。
「そ、そう?ありがと…」
俺はスカイブルーのベストを着てきた。店頭で一目惚れ(?)したものだったので、微妙に嬉しい。実は俺がこいつと心中するのだということを、田中は知らない。
褒めてくれるのが絵那ちゃんだったら、もっと嬉しかっただろう。
「とにかく、昼食にしよっか。」
「うん。絵那のお母さんが手配してくれてるんだよね。」
「そうなの。温か〜いカレーだよ!」
『やったあ!』
恐らく全員がハモった。
俺を除いて。
「ハッピーアイスクリーム!」
誰より速く、たぶん幸せを誰より山ほど持っている絵那ちゃんが言った。
懐かしい響きは、雪山に吸い込まれていった。
まだまだ続きます。でもどれくらい続くかは未定…。行き先不安です。