第四章 酔うからってバスの座席窓際にする奴は大抵たいして酔わない
「うっぷー。バス酔ったぁ〜。薫一、頼むから窓際代わって!」
窓際とは俺の座っている座席であり、要するに絵那ちゃんの隣だ。
「無理。他の窓際席も男子ばっかりなんだし、近い奴に代わってもらえば。だいたいバスの右上と左下で交代なんて出来るわけないじゃん!!」
たまたま俺の超近くに、頼んでおいたバスの入り口が来たから、俺はバスの左下に座っている。
絵那ちゃんは、女子の譲り合いとやらで二番目に入ってきた。
だから、俺の隣だ。
「だったら私が代わってあげようか??どうせあんたたちは絵那の隣に座りたいだけでしょう?」
ちなみにバスの一番後ろは、
俺→絵那ちゃん→その他女子三人
となっている。
今発言したのは、よく分からないがど真ん中の番長席に座っていた田中緋咲なんだろう。
「いや、さすがに右も左も女子っていうのは………なんていうか………」
興奮する?幸せ?
どうせ嬉しいだろ、逆にお前は。
「ねぇ、やめない?せっかくのスキーなんだし。ねっ、絵那ちん。」
「そうだよ、みんな盛り上がろうよ!!」
絵那ちゃんがはにかみ気味の人懐っこい笑顔を見せると、バスの中に笑いがあふれる。
絵那ちゃんの凄いところは、こんな風に盛り上げられるところだと思っている。
そして、絵那ちゃんは言った。
この中に、今日命を断つ予定の少年がいることも知らずに。
「受験終わったら、もう一度どこか行こうね!」
純真とは、時に刃のように人を傷つける。
緋咲という名前はうちの姉のあるPCゲームでの飼い主名です。