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第十八章 合格発表の時「やったー」って叫ぶひんしゅくな奴がいた

合格発表。

昔は「サクラサク」とか「サクラチル」とか書いた紙が封筒入りで送られてきたらしいが、今は残念ながら誰かが自分の番号を見つけて喜び跳ねる横でがっくりすることになる。



……まぁ、落ちれば、の話なのだが。

二月二日、俺はついに第一志望の合格発表に来ている。

ちなみに受験番号は65番。

やっぱり二日に男子校の二次の面談が無い人は多いらしく、子連ればかりだ。皆落ち着きなくゆらゆらうごめいていて、まるで海藻だ。


緊張しているのは……やっぱり、誰も同じなんだなあ。


他人事のようにぼんやり考えたその瞬間、腕に鋭い痛みが走った。


「薫一……」

母親が、物凄い馬鹿力で腕を掴んでいたのだ。

「落ちても泣かないでよね……。仕方ないわよね、その時は……。1月からあんなに頑張ったんですもの――それだけで十分よ」

……落ちる、前提か。

「やめろよ、痛い。それと、俺は落ちても絶対泣かないし、それに落ちる気も無い。」


母親はびっくりして腕を放した。そして、うっすら涙ぐみながら言ってきた。

「……薫一、大人になったわね……!母さん、感動しちゃった……。」


そんな事、母親から言われるとむずがゆく、面映ゆいのだが。


前方の人だかりから、ざわっと騒ぎが聞こえた。

あえて母親に返事はせず、慌てて前に向き直る。


係の人が引いてきたホワイトボードには、およそ200の番号が示されていた。

前述のように泣いたり、跳ねたり、肩を叩きあったりする人々の姿がそこにはあるのだが、その人々の数が半端でないため、ホワイトボードがよく見えない。


比較的背の高い俺が少し背伸びをすると、一気に視界が開け100番くらいまでがざっと見て取れた。


65、65、65を探せ………


ひたすら番号の列を辿ってゆく。


そして………

「――あ、あった………!」

その数字を確認した俺は、呆然とその場に立ち尽くしてしまった。

母親は小声で叫ぶように

「やった、やった、やったわよ!」

と繰り返していた。


受かった……んだよな?

なんだか嬉しすぎて感情が麻痺しているらしい。

母親の抱擁を受け、父親の感激した声が聞こえ、電話ごしに塾長の嬉しそうな声が聞こえ、気が付くと家に帰りベッドの中。



……なんだこのデジャブな状態。


デジャヴですよ(汗

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