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第十六章 言いたいことははっきり言おう!

一週間後、とりあえず俺の風邪は治った。

当然だ。このくらいの風邪、根気で治せなくてどうする。それと……ちょっと、絵那ちゃんのお陰かもしれない。

絵那ちゃんの書いた文字が隣にあると落ち着いた。しかも絵那ちゃんから貰った、まとめのレポート用紙は、塾に復帰してからしっかり役にたったのだから。これも当然だけど。

というか……俺のノートより絵那ちゃんのレポート用紙の方がはるかに分かりやすい。まさに月とすっぽんだった。

こうして、休んだくせに成績が前より上がっているという傍から見れば納得のいかない(そして本人は嬉しい)状態のまま、受験はあと5日に迫っていた。



「薫一くん。」

最後の塾の日、皆よりずっと遅れて帰り支度をしていた俺に話しかけた人がいた。

振り向かなくてもわかる。

この声は……

「…絵那ちゃん」

「あのね……………」

絵那ちゃんはそこで口を閉ざしてしまった。

「……」

気まずい沈黙。

「…頑張ってね、明日。」



「………」



あまりに妙な沈黙だった。

俺は、絵那ちゃんが他に言いたいことがあった気がして、気になって仕方なかった。

もし……もし『好きだよ』と言いたかったなら、言ってくれればよかったのに。

それは『頑張ってね』よりずっと、俺にとって意味のある言葉だ。

言いたかったことも気になったが、それを言わなかった理由も、同じくらい気になった。



……こんな気分で、受験なんか乗り越えられるのだろうか。


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