第十三章 引いても駄目ならスライド!
絵那ちゃんに迷惑かけないように、離れてからもう十日。
当然のように大晦日はすぎ、あっという間に正月も終わって、今度は塾の冬期講習も終わる。
となると、受験なんて…もう目の前だった。
だから、逆に絵那ちゃんにあまり固執しないで、今はこのくらいがいいのかもしれない。
俺に何か望めるなら、
「一緒に受験を頑張る」
ことくらいだった。
だいぶ醒めたな。と思うかもしれない。でも、十日間だけなのだから、こんなに醒めてしまったわけはない。
醒めたのではない。
心の奥でちゃんと、共に受験を乗り切り、連帯感がうまれた俺と絵那ちゃんを思い描いていた。
あくまで連帯感だ。
そこから先がどうなるかは、絵那ちゃんの反応次第だ。
結局、選択権はない………………
なんて言うのは
「らしくない」
けど、つくづくそう思う。
あの日、俺の隣の席の綺麗な白い手を見たら、握らないわけにはいかなくて、その後で見た困った顔に、胸が痛くて……
全部俺のせいだ。
それはよくわかってる。
我慢していたら、どんなによかっただろう。
それを考えるほかに、俺に出来ることは勉強だけだった。
これって、よく考えたら、
「押して駄目なら引いてみな」
の「押す」でも「引く」でもなく………………
言うなれば、「スライド」ってところか。
そんなことを考えて、俺は独り笑いをし、馬鹿だ、と自覚する。
そんなこんなで、クリスマス前の
「合格する」
という目標は日に日に達成に近づいていった。