第2話 賢者は魔法薬を作る④
カランコロン
「レイアスいるか?」
店舗の入り口にはガタイのいい、厳つい男性がたっていた。
「デリスさんお疲れ様です。現場は良いんですか?」
男性の名はデリス。この街の冒険者ギルドのギルドマスター。今回の件の依頼者でもある。
「あぁ、ダンジョンは落ち着いたし、けが人の治療も終わった。本当に助かった。お陰さんで死人ゼロ。後遺症者も出なかった。恩に着る。」
デリスはそういうと頭を下げた。その姿勢からは本当に感謝している事が伝わってきた。
「頭を上げてください!?困りますよ!?」
レイアスは慌ててデリスに頭を上げてもらった。レイアスとしては当然のことをしたまでで、誰かに感謝されるために行ったことでもなく、後日料金請求をする為あくまでも仕事であると思っていた。
「代金については後日、ギルドと領主館から支払いがある。アルトの奴も感謝してたぞ。」
デリスはにやりとしながら、料金精算について説明してくれた。
「うえぇ〜。領主様からの感謝は要らないですよ。面倒くさい。」
レイアスは本当に面倒だと思い顔を顰めていた。
アルトというのは、この街を統治している領主様である。爵位は子爵で、名を〈アルト・フォン・シャロン〉。
なお、この地域を統括している〈ロイス・フォン・ガリウス〉辺境伯の実弟でもある。
「そう言ってやんな。今回の件で領主が感謝を贈らないと、色々面倒になるかなら。黙ってもらっとけ。」
デリスは苦笑いをしながらレイアスに伝えた。
「他人事だと思ってぇ〜」
レイアスは本当にいやそうな顔でそう答えた。
「じゃあ、伝える要件も伝えたし、俺は戻って書類と格闘だ…。誰か変わってくれんかねぇ。」
「やりませんよ?」
デリスは冗談交じりにレイアスに視線を向けて笑った。レイアスはいつものことのように、そっけなく答えたのだった。
「じゃあ、またな。」
「お気をつけて。」
数分お茶を飲みながら今回の顛末を確認し、デリスは帰宅の途に就いた。
「さてさて、今日はとんだ日だったね。日も落ちたし、今日は店仕舞としますかね。」
デリスのが帰った店舗では、レイアスが作業台や使った道具などを丁寧に片づけをしていく。さすがのレイアスも疲れてはいたが、どこか晴れ晴れとした印象を受ける表情をしていた。
「明日は平和だといいな。」
この言葉がレイアスの紛れもない本心であった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
第2話終了です。
何故、主人公が雑貨屋を営んでいるのか?
タイトルとどうかかわるのか。
そして、どうして戦闘シーンがないのか。
全ては後半で明らかになります。
それまでだいぶ先になりますがおつきいただけると嬉しいです。
誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。
感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。
では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。