星空の下でデートの約束
列車から一人またひとりと人が降りていく。
島間列車『スカイハイレール』は穏やかに夜の島々を渡っていく。
ボックス席で俺とアミルは横並びになっている。アミルは遊び疲れたのか、俺の肩に顔をのせ、静かに眠っている。
コレドーラ峡間に差し掛かった。島を繋ぐ橋の上を走る。窓の外は数え切れない星々が煌めいていて、俺はしばらくその光景を眺めていた。
「・・・・・・」
「アミルに感謝するんだよ、アラン」
ふと後ろのボックス席から、声をかけられた。
ビクッとしたが、声の主は見なくてもわかった。
「オール・・・。同じ列車に乗ってたのか」
サラっと視界の上から紫髪が垂れる。オールが上から覗き込んできたのだ。
「・・・感謝って何をだ」
オールは俺の上をふわっと通って、対面の席に着地する。
「そんなこと言わなくてもあんたがよくわかってるでしょ、ノア」
オールは気だるげに言う。
手に持ったドーナツをぱくぱくと食べながら、指を振って魔法で窓を開ける。
「・・・・・・行儀が悪いぞ」
びゅうという風の音で俺の言葉は聞こえなかったようだ。
代わりにアミルが目を覚ました。
「・・・んん、窓開けたんですか?」
「おはよう、アミル。デートは楽しかったかな?」
オールは意地悪い笑みを浮かべる。
「うわ!オール!?なんでこんなところに!?」
「驚くべきは私だアミル。あんた今日学校サボったんだって?」
「なんでそれを・・・」
アミルの顔が青ざめるのが、薄暗い車内でもよくわかる。オールはその顔を見て、ふんとドーナツをまた一口食べる。カラースプレーチョコがぽろぽろとこぼれるのを、アミルは、ハァと落ち込んだ顔で、風の魔法を使って車外に捨てる。
「それで、明日のことだけど・・・」
「学校か?行くよ頑張ってな」
「意気込みはいいけど、残念。アンタは明日学校にはいけません」
「・・・・・・どういうことだオール?」
オールはもぐもぐと口を動かしながら言う。
「明日は私と地獄のデートよ、ノア」
「で、デート!?」
「何であんたが驚くのよアミル。あんたも今日したでしょ?」
「う、それはそうですが」
その何というか、ともごもご言うアミルを見てオールはニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべる。
「ノア、明日9時に『スカイシティ第一地区駅』で待ち合わせね。逃げたら外に放り出すから」
と言ってオールは窓に足をかけ、その身を乗り出す。
「こんな感じで、ね。じゃまた明日」
そう言って窓から飛び降り、大きな紫色の翼を広げて飛び立った。
紫色の翼は月の光を反射しながら、やがて闇に消えていった。