夜更けの悪戯
「寝てない?」
当たり前のようにセラブルがやってきたので驚いた。
「いや、寝ようとしてたところなんだけど」
俺は起き上がり、枕元の明かりをつけた。
「良かった」
そういうと当たり前のようにベッドに侵入してきた。
俺を押し出すようにセラの足と腰が俺の体をつつく。
「ちょっ、ちょっと待て、セラ。何も良くない。なんで一緒に寝ようとしてるんだよ」
「前一緒寝た。説明終わり」
「始まってもないし、終わってもないよ。とにかくベッドから一旦出て」
渋々といった調子でセラブルはベッドから出て、ソファに座った。俺は頭を抱えてその横に座る。横並びになるのは間違いだった気もする。なんとも気まずいものだ。
「セラ、俺は頭の中がぐちゃぐちゃなんだ。一人にしてくれ」
「オールのこと、私たちに任せて。明日オールが受けた傷の凶器、魔法の解析結果がわかる。私たちの仕事はそこからが本番」
「そうか。少しでも進展するなら良かった」
「解析も大変。魔力痕の有無、力の強さ。全部炙り出す」
だから、といって俺の肩に寄りかかるセラ。
「お、おい、どうした」
「最近特に疲れてる。オールの件、私たちも他人事じゃない。天使が狙われている可能性、ノア狙われてる可能性。全部考慮して警戒してる」
「セラがオールのために、俺たちのために頑張ってくれてるのは痛いほどわかる。本当にありがとう」
「そう。わかってくれるノア優しい」
セラが少し微笑む。
そして俺の顔を上目遣いで覗き込み、言った。
「疲れてる。だから癒されたい。・・・今だけ」
「セ、セラ・・・?」
その時、セラブルの情報が強烈に流れ込んできた。
体温、匂い、息づかい、美しい相貌に濡れた瞳。
昔から一緒にいた天使。いつの間にか一緒に成長していた。こんなに近くでマジマジと見つめ合うことなんて無かった。こんなに美しかったんだ。セラの魅力に、抑えきれない自分の中の欲望を感じる。
少し早まった息づかいが近づく。
柔らかい桜色の唇。少し濡れている。セラが俺の頬にそっと触れる。俺は抵抗しない。
なすがまま、ゆっくりと応えるように目を瞑る。
「アランくん?起きてます」
ドアがノックされ、俺とセラはギョッと反射的に離れる。
「ッア・・・ミルッ」
俺はつい声を出してしまった。
セラが焦って俺の口を手で押さえる。
「あ、起きてますか?ちょっとだけいいですか?」
まずい。こんな状況見られたら、セラと一緒にいるのがバレたら、殺されるに決まってる。
アミルは基本的に真面目な性格だ。学校をサボったら怒るし、オールとのデートもやたら警戒された。
セラがシーっと指を口に当て、俺の耳元でいくつかの伝言を伝えた。その後ドアの横に背を預け、OKサインを出す。俺は頷いてゆっくりドアを開いた。
「ど、どうした、アミル?」
「ごめんなさい、寝る前でした?なんだか頭の整理が色々つかなくてお話」「よし、少しだけ話そう」
俺はアミルの肩をだき、部屋に引き入れる。
「え?え?え?」
俺が横に立つことでアミルからセラは死角になって見えない。
そのタイミングで、セラは音もなくドアから出ていく。
「ちょ、ちょ、ちょ・・・」
「とりあえずそこのソファに座」らせようとした瞬間に俺は気づく。セラの匂いと温もりがまだ残っているかもしれない。
マズイ。勘繰られてしまっては面倒だ。
この中で俺の匂いが一番するところは案内しなくては。
「アミル!やっぱりこっちだ!」
「え?えええ?」
そうしてアミルをベッドに誘導するが、勢い余って押し倒すような形になってしまった。
「ひゃ、あ、アランくん、ちょっといきなり・・・!」
顔がロゼの翼と同じくらい紅くなっている。
「い、いや、そういうわけじゃ・・・」
「二人とも。何してる?」
ドアの外から声がして、俺とアミルはギョッとした。
セラがすごく冷ややかな目でこちらを見ている。まるでさっきまで何も無かったように。今通りがかりましたよと言わんばかりに。どういう感情でそんな表情をしてるんだ。
「いや、セラ、これは違うんですよ!私はそんなつもりじゃなかったんですが、アランくんが!」
「ちょっと待て!俺も誤解だ!」
セラは少しだけイタズラっぽく舌を出して、そのまま去っていった。




