練習中
放課後、魔法実技演習場に俺とアミル、グラドは集まった。
俺は制服のままそばの見学席に座り、アミルとグラドは運動服に着替えていた。
「それじゃ、始めようか」
そうしてグラドが金属球を六つ地面に並べた。
金属球はそれぞれ色と大きさが違った。どうやら素材も鉄だけでなく銅製や銀製など違うようだ。
「じゃあアミル、右端の球にエネルギーを付与してごらん」
「はい、わかりました」
そうしてアミルは右端の球に向かって、手を向けて詠唱する。
「・・・空の禊と、空間の導、支点となる血、純潔の惑いと、流れ・・・」
「もう二節だ」
「っ・・・人の魔力、空へ作用せよ・・・!」
そういい終えると金属球がふわっと風に吹かれるように舞い上がった。
「おーけー、じゃあ上昇させずに、二つ目の球に当てて」
アミルが浮かべた球が、ゆっくりと降りていき、二つ目の金属球に近づき、カチと音をくっついた。
「そのまま、構造解析だ・・・」
グラドが言うと、アミルは息を一つはいて、二球目をじっと見つめる。
「把握・・・!」
言うと、今度はくっついたまま二球目もふわりと浮いた。
今浮遊エネルギーは一つ目の球にしか付与されていないにも関わらず、二つ目もあわせて浮いている。これが浮遊の連鎖式だ。上級魔法試験ではこれを六つまでつなげなければいけないらしい。
俺は傍からその様子を眺めてぼうとする。
アミルやるなあ、とも思わずにただ呆然と眺めているだけなのだ。
一応、自分の金属球を持ってきた。一度も浮いたことがない球だ。
アミルに倣うように、地面に転がし、同じ呪文を詠唱した。
しかし、球はびくともしない。上級どころか初級以下だ。やはり決心したところで急に何か変わるわけではないようだ。
見ればアミルは、四つ目を持ち上げていた。
俺は手慰みで金属球を掌で転がしながらその様子をまた眺めた。
すると気づかないうちにグラドがすぐそばまで来ていた。
「・・・君の魔法・・・」
何か言いたげなグラドは考え込むように手を顎にやりながら俺の金属球を見た。
「・・・なんだよ?」
「いや、少し気になってさ。さっきアミルから、ノア君はまったく魔法が使えないと聞いていたけど・・・変だな、君が今呪文を唱えたとき魔力を感じたんだよ」
「・・・慰めは結構だ。その優しさはいらないんだよ」
「いや、そんなつもりはないよ。変だな、確かに感じたんだけど・・・」
「ノア!」
急に、呼ばれびくっとする。
声の主はアミルでもグラドでもなく、急に演習場に入ってきた人間だったからだ。
反射的にそちらを向くと、セラブルがそこにいた。
セラブルは汗をかいて、息を切らしながら深刻そうな表情で立っていた。
「せ、セラ?なんで学校に・・・?」
「何事ですか・・・?」
アミルも急にやってきたセラに目を丸くして驚いている。
「ノア!アミル!緊急事態!来て!」
「緊急・・・?」
唾を飲み込んで、セラは告げる。
「オール、が・・・!」
その言葉に胸がざわつくのを感じた。




