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不可視の隕石

「パロマさんの亡くなった後も、父さんとしょっちゅうここに来てたよな。」


「そうね。あんなに一緒にいたのに、アルベルトさんとの思い出ももうここしか残ってないものね」


オールが言った。


オルガンス島が落ちた時も、俺たちもまさにここにいた。

オルガンス島が落ちていったことで、俺たちの昔の思い出は無くなったが、ここだけは唯一島外で思い出深い場所になっている。


パロマさんの天体観測の機材は、大半が破損したが、生き残ったものは今の家に持ち帰った。


「お昼ご飯。みんな好きなの取って」


「あー助かりますー!だんだんお腹空いてきてたんです!」


「アミル朝ごはん食べてないからよ!しょうがない奴ね!」


「アンタもな。ばかロゼ」


俺たちはセラからサンドウィッチを受け取って、小屋で食べた。日差しが強い時に小屋があるのはありがたかった。壁に大きな穴が空いてるから風は吹くし、島の端だから景色もよかった。目の前には巨大な青空と他の島。昔と違うのはオルガンス島が目の前から消失いることだけ。


「あんな大きな島が落ちる何て今でも信じられませんね」


「しかも原因はわからないってのがな」


「はあ?何言ってんのよ!隕石だって言われてるじゃない!」


「『見えない隕石』ですよ。そんなのバカげてますよ」


俺はちょうど近くに落ちている手のひら大の石を拾った。


「・・・コレだ」



オルガンス島が落下したのは、隕石がレバーレッジ橋に衝突したからだと言われている。

落下直後、このレバーレッジ橋で本来存在しないはずの大量の隕石の破片が見つかったからだ。

何かがぶつかった、あるいは爆発したというのはかなり有力な説だ。


周辺の家屋、橋脚、今いるこの小屋にもその破片が飛んできて多くの被害を与えたし、何より俺たちはこの小屋にいて巨大な音と振動を体感したのだ。


俺たちはそれを隕石による被害というなら疑わなかった。


だが、不可思議なことにスカイシティの天文局はその日空から飛来物は観測されていないと言う。


人為的な爆発によって橋を落とした可能性はあるが、証拠も何もない。

ブルーキャノピーに未曽有の被害を与えたのに、未だに謎が解明されてない。


全く奇妙な話だ。



「どこから来たんでしょうねえ。その石」


「誰か持ってきた。いたずら」


「そんなことあるはずないじゃない!だいたいなんのためによ?」



全員が口をつぐむ。それがわかっていたら苦労はしない。

理由がどうあれ、父さんと一緒にオルガンス島が落ちていった事実は変わらない。


俺は石を投げ捨てた。

そのまま草木にまぎれてどこかに行ってしまった。












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