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日射警報と紫の天使

日差しが強い。

雲一つない青空の中、オゾン鳥の笛のような鳴き声が高く響く。


「あついな今日も・・・」


日射警報を知らせる車が市中をゆっくりと走り回る。

太陽に照らされた石畳を行き交う人通りは少ない。

たまにナギドリが数羽やってきて何かを探すように地面をついばんでいる。


俺はその様子を木陰で、ぼうと眺めていた。


スカイシティ第5地区は、教育機関が集まる学生街だ。夕方からは放課後の学生であふれるかえるが、今の時刻は午後の2時過ぎ。学生が教室にこもってせっせと勉強をしているせいか、とても静かで穏やかな雰囲気に包まれている。


今頃この辺りをうろついているのは、この学生街で働く大人、わずかな数の近隣住民・・・そして・・・


「不良になったつもりか?」


不意に隣からそんな声が聞こえたので、俺はため息交じりに振り向く。


「『オール』、お前か・・・」


「やあ、学校で勉強しているはずのアラン君。いや、愚かにも不良の道を歩かんとするバカラン君と言った方がいいのかな?」


いつの間にか隣に立っていた紫髪の女が俺を蔑んだ目で見つめてる。


「何でお前がここに?仕事はどうした?学校はアミルの役割だろ。お前が出てくるところじゃ・・・」


「その学校にいないから私が聞いてるんですけど?宙づりにされたいの?だいたい私もあんたの保護者。とやかく言う権利はあるっての」


何を言っても俺の方が分が悪い。この紫天使はその気になれば俺を簡単に島外に放り投げる。

天使とは決して優しさの代名詞ではない、と教えてくれたのは、他ならぬこのオール様だ。


「悪かったよ。ていうかオール。今日は確か・・・デボン島線のコートデン、マズロ島間橋脚点検じゃなかったか?」


「乱気流の影響で点検日が一日伸びちゃった。だから今日はオフ。ショッピングがてらサボってるバカを発見したから詰問ってわけ」


「・・・バカとはまたご挨拶だな。けど見つかってしまっては仕方ない。大人しく連行されるよ。荷物持ちでもなんでもする」


「誰がショッピングに連行するかバカ。あんたの行き先は『インタステラ・ハイスクール』の教室だよ」


紫髪の天使は、ほらあそこだろ、と顎で学校がある方を指す。

坂の上の小高い場所に、ツタで覆われたレンガ造りの校舎が見えた。『インタステラ・ハイスクール』。間違いなく俺が通っている学校だ。

丁度その時、ゴーンゴーンと終業を知らせる鐘が鳴った。

四限目が終わった証拠だ。これできっちり一時間サボったことになる。


「・・・ところで、一体何を買うつもりできたんだ」


言うと、オールは少し間を空けて答えた。


「ホシミツツジの花束。明後日に必要な分の色合わせのために」


オールは、鐘がまだ鳴り止まない学校の方に目を向けながら言った。

そして俺の方に向き直り、ジトリと睨んだ後「さっさと学校戻れよバカ」と言い残して去っていった。


「・・・」


なるほど、明後日のための花束か。今年で5年目。

オールの花選びももはや風物詩だな。


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