第4話 師匠との出会い
「ふみゅうう………」
私が目を覚ました時、記憶にある城のベッドでも森の中でも無い木製のシンプルなベッドで寝ていた。
「ここはどこ……?」
もしかして、転生した事すら夢だったのか?と一瞬だけ考えたが、私はその考えをすぐに打ち消す。
「前世なら目覚まし時計とかパソコンとかあるもんね……」
そう、この部屋はよく中世の絵画に描かれるような殺風景な部屋であり、近代的な物が何一つ無いのだ。
「だとしたら、誰かが助けてくれたとしか……」
今の私は五体満足である。
火傷の痕も全く無く透き通るような白い肌。
そこまで考えた時、
「良かった。意識が戻らないから心配していた。」
一人の女性がドアを開けて入ってきた。
私と同じ銀髪に金色の瞳の美女、しかもプロポーションの方は抜群だ。
とくに胸は凶器ならぬ胸器と言っても良いくらい大きい。
「あの……私……」
お礼を言うべく私はベッドから起き上がろうとする。
しかし、
「無理しないで、貴女は死にかけていた。」
有無を言わさず。静止される
「右腕を切断。左腕から背中、両足にかけては重度の火傷。むしろ生きているのが奇跡。」
………どうやら本当に不味かったみたいだ。
前世の医療技術でも死んでいたかも知れない怪我に私は少し青くなる。
「貴女が吸血鬼王族種である事は知ってる。だけど安心して、人間に渡したりしないから。だって私も吸血鬼の端くれ、回復するまでゆっくりしていくと良い。」
私の顔色が悪くなったのを不安と察してか、安心させようとしてくれる。
「命を助けて頂いてありがとうございました。」
私は彼女に礼をする、今の私には何も出来ない。
せめて感謝の気持ちを伝えよう。
それなのに、
「気にしないで、貴女が助かったのは貴女が生きようとした力のお陰。私はほんの少しだけその手助けをした、ただそれだけの事。」
彼女は謙遜すら感じない、ただ当たり前の事をしたという風に言い、私の頭を撫でてくれた。
私は決意する。
今世の一生をかけてでも彼女に恩返しをしたいと、
その為には、
「あのっ!弟子にして頂けないでしょうか………!!」
数時間後今世初、渾身の土下座が発動した。
◆◇◆◇◆◇
その後、何とか弟子にして貰えた私は住み込みで料理といった家事をする代わりに、魔法を教えて貰える事になった。
料理は前世で自炊していたので問題ない。
「アリス、これから第一回目の座学を始めます。」
「はいっ!師匠。よろしくお願いいたします!」
そして今日は記念すべき一回目の授業だ。
「アリス。まず、授業を始める前にこれだけは覚えていて」
師匠が言うには
「あなたには回復魔術師・薬師の才能がある」
だから、
ひとつ、力には責任があること
ひとつ、責任の無い善意は必ず破滅をもたらすこと
「今は意味まで理解しなくても良い……でも、決して忘れないで。」
そう言ってまた師匠は頭を撫でてくれた。
それから私は週7日の内6日を訓練とし、2日を社会常識や倫理観などの座学。2日を魔力のコントロール。1日を魔法についての座学。1日を自主練とした本格的な内容が始まった。
薬学や回復魔術については社会常識などの座学が粗方片付いてからにするらしい。
それからしばらく経過した。ある日のこと
「師匠!魔法と魔術の違いはなんですか?」
私は疑問に思っていた事を口にした。
「丁度今からそれに関して授業をするところでしたね……それには魔物や魔族についても関わって来ます。」
師匠の説明によると、
この世界に生きる生き物は大なり小なり必ず魔力を持っている。
そしてまず生き物は魔法が使える種と使えない種に区別される。
その内魔法を使えるのが、魔族と呼ばれる知性を持った生き物と魔物と呼ばれる知性を持たない生き物である。
一方、魔法を使えない知性を持った生き物が人族であるが、人族には神から与えられた魔術がありそれを使える者を人間、使えない者を亜人としている。また、知性を持たない生き物は動物と呼ばれる。
魔法とは先の説明の通り魔族と魔物が使用できる、世界に干渉して望みを叶える力であり、種によっての固有魔法はあれども殆ど系統化されていない。
自由が利く反面高度な演算によって使用者の脳には不可がかかる為に、古龍であれども晩年には理性を失ってただ周囲を破壊するモンスターに成り下がる事もしばしば
魔術とは、高度な演算能力や魔力が足りずに魔法が使えなかった人族に古の神が授けた系統立てられた奇跡の事。
魔術師は足りない演算能力を術式と詠唱で補い、足りない魔力を魔法薬で追加する。
人族が主に使う為に魔法に比べれば世界に及ぼす力は限定的であるものの体系化されている為に最適化等が魔法よりもやりやすいし、脳への負担が術式と詠唱によって押さえられる為に晩年に狂うリスクも低い。
「え……魔法って怖い……」
それを聞いて私は震える。
使えば使うほどリスクを溜め込むって………
「でもアリスは大丈夫だから。」
師匠が断定口調でそう告げる。
「アリスも私も吸血鬼、吸血鬼にはこれがある。」
そう言って師匠は自分の右腕をナイフで傷付ける。
「師匠!何をしてるんですか!」
リストカットと言うには冗談にならないほど出血する。
しかし……
「え?血が……」
出血した血液はリング状になって師匠の腕の回りを飛んでいる。
「これが吸血鬼と言う種族の固有魔法、『血魔法』……の初歩の血液操作ね。」
「それって………」
「これが吸血鬼の基本にしてその強さ」
周囲を回るリングから血が1滴飛んだと思うと、彼女の傷口に落ちる。
すると………
「え?怪我が……」
痛々しい裂傷が、何事も無かったように完治する。
「吸血鬼の魔力は他の種族の平均より圧倒的に多い魔力が含まれている。そして吸血鬼はその血液を用いて回復する事が得意。」
師匠曰く、他の生き物は一部を除いて魔法・魔術を用いた回復もしくは、魔力そのものを用いた強引な回復しか出来ないらしい。
「それって……」
「私達の体の微細なダメージはこの血液と能力によって直ぐに回復する。」
すごっ!どんなアンチエイジング!?
「古代精霊真龍も似たような事が出来る。けど、個人差はあれども種族として可能なのは吸血鬼だけ」
「だから人族は吸血鬼を食べれば強くなれると勘違いしているけど、この能力のお陰で吸血鬼は強くなれたし、この能力が要因で吸血鬼は攻め滅ぼされたとも言える。」
そりゃ勘違いされて狙われるよね………
特に転生や転移系の小説にありがちなパワーアップアイテムみたいな感じだし……
ただ、私がそのパワーアップアイテム扱いだから笑えない。
「アリス、貴女は吸血鬼の中でも並外れてこの回復能力が高い。だから、貴女はこの世界の常識について知る必要がある。………貴女の一族のような結末を迎えない為にも。」
最後の一言を師匠は言いにくそうにしていたが、私はその通りだと思う。
だから私の為を思って色々教えてくれる師匠の為にも、
「師匠!私、頑張ります!」
まずは私が勉強を頑張ってこの優しい師匠に報いたい。




