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第27話 失われし魔法神(ルナスティ)の片鱗 中編

辺りが凍る少し前……


「きゃははー、憎き精霊の子ーー!」


「あら、邪神の分体さん?いかがされましたの」


死原精霊エルフィーは邪神の分体と対峙していた。


如何に精霊王を除いた上では最強の精霊である精霊王女と言えども、この世界の理の中で存在する以上邪神の分体を滅ぼす事はできない。


そして霊体の傷が完全回復したエルフィーを邪神であるとはいえ序列40番代の分体程度では滅ぼす事もできない、


両者ともに決め手に欠け、千日手となると思われたが……


「!!」

「あら……異界の剣は2本だけとは限りませんわ。学習不足でして?」


髪止めを外し、魔力を籠めると抜き身の刀身が顕現する。


「お姉さまの『星砕きの剣(ノヴェ・ノヴァ)』と比較すれば格が落ちますが……『布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)』は異界の霊験あらたかな剣……精霊が使うにこれ以上の無い剣ですわ……精霊王(おとうさま)におねだりしましたの」


エルフィーが刀身に手を伸ばせば、魔力で柄が作られる。


彼女は遠慮なしに彼女の根源たる死の魔力を解放する。


「やめろ……やめろー!!」


「いい加減過去の異物は滅ぶべきです……全てはお姉さまの為に」


邪神は必死に魔法を使い逃げようとする。


しかし……


「『魂の在るべき場所(ニライカナイ)』戻れ、【知識を求めし流離人(ヴォーダン)】」


エルフィーが呟くと、

八ツ足の馬に跨がり、つばの広い帽子を深く被った隻眼の老人が出現する。


「何故…この世界にお前が存在する!!」


「貴女が知ることではありません。翔びなさい『神を屠りし槍(グングニル)』」


馬上の老人が投げ槍を投擲する。


ロキはその単調に投擲された槍を回避しようとするが………


「嘘だ……」


槍はまるで意思を持つように方向を変え、ロキの心臓を正確に貫いた。


「ぐふっ……こんな攻撃で滅ぶと思った「思いますわ」」


ロキが回復魔法を使おうとするが、使えない


否、回復魔法が効かないのだ。


「この武器は異界の武器では無いはず……」

異界の武器は歴史上3本

エウアンサス・パニイの『始原華霊の蔦剣(クトゥネ・シリカ)

精霊王の『布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)

アリス・ウインターローズの『星砕きの剣(ノヴェ・ノヴァ)


だけである。槍は存在しない、


「いいえ、そもそも【知識を求めし流離人(ヴォーダン)】自体がこの世界の存在ではありません」


「馬鹿な……そんなことは不可能」


「馬鹿なと言われましても……『布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)』と私の存在の相性が良かったからの芸当ですが」


魂の在るべき場所(ニライカナイ)』とは別の世界の英霊、もしくは既に滅びた神等を『魂の在るべき場所(ニライカナイ)』から召喚する魔法である。


本来は実体を持つことは出来ないが、『布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)』の特性と死源精霊(エルフィー)の死と生を司る精霊としての権能によって実体を持つ。


「どうですか?自分の作った槍で滅ぼされる気分は」


「何の……事………」


「あくまで白を切るつもりなのですね、でしたら……」


「【天弓つがえし月の乙女(アルテミス)】」


先ほどと同じ様に虚空から、1人の少女が出現する。


しかし、先ほどと違うのは少女は無骨な武人といった風体には非ず、まるで名のある彫刻家が魂を込めて大理石に刻んだ傑作の様な白磁の肌に流れる様な銀髪。


そして手には自らの身体を越える大弓


「『繊月切り裂く金の遠矢(クリュソトクソス)』」


アリスの世界の神話に存在する月の女神(アルテミス)の放った黄金の矢はこの世界の月の女神(ルナスティ)を滅ぼした元凶へと容赦なく刺さる。


神をも滅ぼす一撃。


それを2つも受けたロキの命運は尽きた。


しかし……


「腑に落ちませんわ」

エルフィーはツカツカと滅びる寸前のロキの前に立つ。


「貴女の名前から察するに…………貴女は異世界におけるとある神話の悪神………ですのに『神を屠りし槍(グングニル)』を見た時の反応がおかしい」


「ぐふふ……何の……ことかな?」


「ですから白を切っても無駄ですの、私には『とある世界』の知識だけが存在します……貴女がある悪神と同じ存在だとしたらその『神に対する敵愾心』はおかしいですわ」


エルフィーはロキの顎を蹴る


「ふじゅ……私達はロキ……」


「嘘ではなさそうですわね……なら、聞き方を変えましょう」








「貴女の『仮初の名』でない人間としての『本名』は一体何ですの?」

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