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第24話 冬薔薇の名を知る者

「おう、なんだアリスか」


精霊学園の終業式が終了した後、王宮に転移するといつものように触手を器用に動かして書類にサインする国王陛下が居た。


「あ、もう突っ込まないんですね。」


「たわけ、お主が煙のように湧いて出るのはいつもの事だろう?」


このやりとりも既に馴れたものだ。


もちろん精霊国王が居る王宮に転移することは大問題だし、普通はできないが、

とりあえず物は試しとばかりにトライしてみた所、


できたのだ。


しかし、その時にはもう私のハチャメチャな行動が知れ渡っていたので不問。


というか多重多層の魔術結界を侵食(ハッキング)と魔力の周波数調整でくぐり抜けられるのは私くらいだから大丈夫だろう。


という理由もある。


「それで今日の用件はなんだ?」

ちょうど仕事の区切りだったのか、スライム収納(?)からコーヒーを取り出して飲む国王陛下


おい、コーヒーあるならいつも謁見した時出せよ。


まあ、一応(?)良家の令嬢(笑)である私に配慮して紅茶なんだろうけど


とりあえず些細な問題はさておき本題に入る


「実家に帰らせていただきます」


「ブッ!」

途端に国王陛下が飲んでいたコーヒーをマーライオンよろしく吹き出す。


わーばっちいね。


「えっと……我が国の待遇そんなに悪かったか?……それともいじめでもあったのか………?」


国王陛下が慌てる、それにあわせて場の空気が体感で5度くらい下がった気がする。

私何かまずい事言ったかな?


「いいえ?皆さんにとても良くしていただいておりますわ?」


「え……ならばまさかインペリアル帝国のヘッドハンティングか?」

いや、あんな国行かんぞ?

ラ・ルナ教の権威を利用して精霊国に圧力かけてくるボケどもの国なんか


「いいえ?……ただ来年から留学ですので一度師し……義母の元に帰省するだけですわ」


あれ?もしかして師匠みたいに出奔すると勘違いされたのかな。

まあ去年までは私も思ってたけど………


今は友人も居るし……


「ならば良い……またグレイスリー殿の逆鱗に触れたのかと思ったぞ……」

国王陛下がわりと声を震わせて言う。


そう、国王陛下は一度師匠にキレられているのだ。


去年私は邪神(?)の分体を倒した。

しかし、


それを知った師匠が怒髪天を衝く勢いでこの王宮に乗り込んで来た(らしい)


その時の怒りはもう……

現役時代以上の威力を持った魔法を連発して近衛騎士をバッタバッタとなぎ倒し(もちろん殺してない)………


謁見の間まで乗り込んで来たのでとりあえず国王陛下は土下座した(らしい)


激怒の理由は邪神と私が戦わせた事。

一歩間違えれば死んでいたかも知れない事。


その怒りは四華家現アリッサム家当主(マリーローズの父親)を一撃で沈めても止まらなかった(国王談)


師匠、貴女は何をやってるんですか……

医療の家系が軍務の家系をボコボコにしちゃまずいでしょ……


「義母が申し訳ありませんでした……」


「いや……良い……じゃが……彼女が怒る少し分かるのじゃ」

珍しく歯切れの悪い口調で話す国王陛下


「分かる?とは、」


「む……いや……まあ良いか」


国王陛下は少し言い淀み

僅かに躊躇った後、語り始める。


「グレイスリー殿が50年前に出奔理由なのじゃが……」


師匠はおよそ500年前こちらの大陸に渡って来た国王陛下の手助けをして精霊国の建国に尽力した。


そして四華家の一員として主に医療や魔法の研究といった分野で精霊国に貢献してきた事は前に述べたと思う。


そんな師匠の運命が変わったのは今から70年前の事だ。


精霊国の発展と共に流行病が蔓延したのだ。

【黒死斑病】と名付けられた病は瞬く間に全土に広まった。


もちろん師匠はこの病の終息に尽力するのだが、

師匠一人に救える人間には限りがあった。


それでも多くの人を救った事には間違いはないのだが


師匠という天才『一人』が圧倒的だった故に周りが育っていなかった。


師匠が治療薬を作れても周りは作れず

師匠が病の根源を理解できても周りは理解できなかった。


結果、当時の人口980万人の内9万人ほどが犠牲になってしまった。


そして師匠は責任を感じ身を引くことを考え、人材を育成してから50年前に出奔した。


そこで私は師匠の言葉を思い出してしまう


(責任の無い善意は必ず破滅をもたらす)


師匠の事だ、救いたいという善意から精霊国の医療。医薬品の作成・研究を一手に引き受けて来たのだろう。


しかし、結果的には流行病から人々を救いきれずに多くの悲劇を生んだ。


きっと師匠に救われた人は多かったのだろう。


でも救う手段を決めれる立場にいたのにも関わらず、『自分が救う』という無責任な善意のせいで『人を育てて救う』という手段があったのに救えなかった事実が有る限り師匠は己を許さないだろう。


私はそう思ってしまった。


「グレイスリー殿の事については我々にも非がある……彼女に我々は頼りすぎた」


そうなのだ、師匠一人が負うべき責任でも無い


「そして……お前を自分のようにしたくなかったのだろう」


そこでハッとする。


もしかして殺されるというのは建前で、私が邪神を倒した功績を讃えられて自分と同じ道を辿ろうとするのを防いだのかも知れない。


真相は分からない。


とりあえず帰って話をするべきだと思った。






しかし、この時の私はまだ知らない。


あのような結末が待ち受けている事を。





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