第22話 星砕きの剣《ノヴェ・ノヴァ》
「大人しく消えて?」
そう啖呵を切った私は精神体すら擂り潰す気で魔力を込めて殴った。
そしてロキが吹き飛んだ先に先回りしてーーー
殴る。
蹴る。
精神体を擂り潰す為の魔法【霊崩破】で追撃し……
最後は
「塵1つ残さず散れ、『桜花』」
死原精霊から借りた死の概念魔力を【雛罌粟】の刀身で滅びの概念に昇華させてロキの心臓を刺突した。
本来世界に存在しない滅びの魔力を浴びたロキは世界から滅び去る筈
………であったのだが
「ゲホッゲホッ……ふふふー、無駄だよー」
ロキは全身傷だらけ、着ていた服はボロ切れのようになっていたが生きている。
「お姉ちゃん、終わったね?」
ロキが不敵に嗤うと、【雛罌粟】の刀身が焼け落ちるように崩れ去る。
「【雛罌粟】が滅んだ?」
【雛罌粟】は精霊剣や始源華霊の蔦剣のような神話級の武器程ではないが、伝説級の武器と言っても過言は無い武器だ。
たかだか概念精霊の魔力の一部を変質させた程度の攻撃では滅びない。
「месть」
ロキが何か小声で呟くと、地面から黒色の触手が複数個にょきりと出現する。
「この子たちハ、お姉ちゃンが死ぬまで。地のはてマデお姉チャんを追うよ」
その言葉に偽りは無かった。
転移魔法で回避を試みるが、まるで先読みでもしたかのように追いすがる。
【疑似分身散布】
げぇ、私の分身を12体試しに出してみたけど
私の100分の1の魔力を持った分身が瞬殺されている。
100分の1のでも人間換算で大賢者レベルの強さがあるのに……
「お姉さま!」
まじやべーかも?とちょっと冷や汗が出始めた時、
私に迫っていた闇色の触手が一本切断され、見覚えのある声が聞こえる。
「エルフィー!?」
そこに居たのは、先ほど魔力を借りた我が家の契約精霊こと精霊王女エルフィー。
手には一振りの太刀が握られていた。
え、日本刀×金髪幼女とかマジ眼腹なんですけど!!
するとエルは手にしていた太刀を鞘に納めて、私へと投げる。
私は意味が分からずに反射的に受けとると……
「彼女は邪神です!神は邪神であれどもこの世界の武器では滅びません。お姉さま!この異界の剣を使ってください!」
なるほど、だから雛罌粟が滅んだんだー
さらば雛罌粟、かませ犬みたいになって申し訳ない。
「正式な名前は失伝しましたが、名を【星砕きの剣】と呼ぶ異界の将軍の剣です。」
見た目完全前世の太刀じゃん。
でも残念な事に刀剣に全く興味が無かった私では正式な名前を推測することはできない。
まあいい、
とりあえず太刀を抜く。
太刀からは魔力の類いは感じられず、その代わり雛罌粟や雛菊よりもずっと手に馴染む感じがする。
それは私が転生者だからだろうか?
そして、私は体を弛緩させ……
一閃
刹那に私へと迫っていた7本の触手を切り裂いた。
「何故!始源華霊の蔦剣ガここニあル!」
邪神(仮)はどうやらこの剣の存在に気づいたようだ。
恐れるように後ずさる。
だけど残念。妹分をいじめられたのにタダで帰す程私の心は寛容ではない。
「落とし前つけてもらうわよ?【瞬天】」
先ほどまでの戦いで、魔力の波長は読んでいた。
あとはその魔力を暴走させる波長に合わせた魔力で攻撃すれば……
魔力の共振によって
「魂とは魔力と意識によって構成されている、魔力を乱した。貴方は既に死んでいる」
「キ…キヒヒ……痛くも痒くも……」
グシャリ
魂から肉体までが崩壊する。
そして挽き肉製造機でグシャグシャにされたような有り様であるロキの死体は、やがて溶けるように消えていった。
「お姉さま!さすがです!」
勝利を確信したエルが私にめがけて飛び込んでくる。
予想以上の爆弾を持って
「創造神ルナスティを滅ぼしたと伝わる邪神ロキ・ナーシャを倒されるなんて!」
まあ……邪神と聞いた時点である程度予想と覚悟はしてたけど……
あえて一言だけ言おう。
平穏な日常をくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!




