第20話 吸血姫の実力
「ベリス・ペレニスーーーー」
「ーー開花」
私が唱え終わると同時に淡く輝く繊月に照らされながら月光花の花びらが舞う、
「久々の雛菊ね」
魔剣雛菊
これが戦闘が専門ではない私の切り札ーーー
という訳ではないが、
靴べら代わりから孫の手まで色々と代用の利く便利なアイテムである為に召喚した。
あ、決して前世の私の名前が一文字入ってるから気に入った訳じゃないからね!!
「木枯灼焼一閃」
灼熱の刃が私に迫る。
なるほど、これで木精霊狂霊を焼いたんだな
……などと余計な事が頭に浮かぶ
火の上級精霊の炎は木の精霊の守りを無視して焼いたという概念を植え付ける。
ただの吸血鬼に過ぎない私がそんな炎に飲み込まれたら消え去る……と思う。
「あははは!生意気なチビが消えて最高だわ!」
マリーゴールドがいかにも悪役な高笑いをする。
でもそれはフラグだぞ?
私は笑いを堪える、そして……
「どうして!?」
炎を雛菊で切り裂いた。
『物理こそパワー』
そんな表現が相応しいだろう。
「嘘よ!【火神照覧・呑龍】!」
最高まで練り上げられた火属性の魔力の奔流が、龍の形をとる。
斬撃と共にその顎を開いた龍は、その名の通り私を呑み込もうとする。
だが、私は不敵に嗤う。
「魔力は……まだまだ大丈夫ね」
3年間で私の魔力の純度は増して、量も増えた。
故に今の私は、雛菊を使いこなせる。
雛菊は膨大な消費魔力が欠点だ。
しかし雛菊はその名前の由来となった植物に由来する特別な力を持っている。
それは『平和』
あるべきものをあるべき形に戻す。
つまり魔法や魔術の完全無効化
術式の破壊
この場において最も相応しい力
運命をねじ曲げる力を断ち切る修正力
「【雛布都御神】!!」
雛菊がその真価を発揮した。
◆◇◆◇◆◇
同時刻、ロッジ群の入り口では……
「おねーちゃん弱いねー」
「ふんっ……わっちをあまり舐めるでないぞ?」
レイリア理事長vsロキと名乗る少女の戦いが続いていた。
しかし……
「えー、おねーちゃんボロボロでしょ?魔力回路もズタズタだし、そっちの精霊くんも存在を削られ過ぎてるでしょ?いひひっ!」
レイリア理事長と死原精霊
その二人をもってしてもこの少女は強すぎた。
仕方がない、如何に人間離れした力を持つとはいえ理事長の本質は研究者で教育者、エルフィーに至っては最近まで存在の消滅の危機に瀕していた。
「ふんっ……まだまだ若い者には負けん!【紫電界放電】」
辺りに拡散された魔力が集まり、雷雲を形成する。
この雷は彼女の得意とする【属性変化】を極めた先にある秘法
光の精霊の属性を歪めた極大魔法
レイリア=ブルーロータスの切り札
本来あり得ないはずの【雷属性最上級魔法】が真価を発揮した
………かに見えた
七億ボルトに達する雷が結界内に満たされる。
結界内を電子が暴れ、存在そのものを削る
しかし、
「何故じゃ……」
少女は全くの無傷。
「я все ненавижу………」
そして少女の右目が紅く染まる。
その瞳の奥にある感情は
虚無
レイリアは初めて震えた。
これは邪悪などという軽いものではない
それこそ、伝承にある創造神ルナスティを滅ぼした邪神……
「Разрушение」
邪神の一撃が振るわれた。
魔力も気力も尽きた少女二人
避けようが無い
その時、声が聞こえた
「【雛罌粟】」
◆◇◆◇◆◇
「あれれー?なんでおねーちゃんがこっちに居るのー?」
ロキと名乗る少女がキャハハと笑いながら問う。
…………危なかった。
全力で戻って来なければ、エルフィーとレイリア理事長は死んでいた。
ちなみに雛菊は森の魔術無効とマリーゴールドの洗脳解除の為に裏手の地面にぶっ刺して来た。
だから今握っているのは姉妹剣である【雛罌粟】である。
「ふーん、なかなかやるねー。でも私を倒せるものならやってみなよー」
ロキが大鎌を振るう。
私は雛罌粟を捨ててその刃を素手で掴み……
「へっ?」
バキン!
大鎌の刃が情けない音を立てて折れる。
「ごめんね?私は妹分を傷つけられて今とても怒ってるの、だから………」
血が滴り落ちる拳を握りしめて
「大人しく消えて?」
溢れた血液に含まれる魔力で身体強化を5重掛けして
顔面を殴った。




