第1話 プロローグ
鏡の中を覗くと見知らぬ美幼女が居た。
5歳くらいで銀髪、くりっとした金眼の超絶美幼女だ。
ん?鏡………
「これってまさか自分?」
私は呆け……
「うそー!」
叫んだ
◇◆◇◆◇◆
はいはい、いい加減認めます。どうやら私は転生したみたいです。
あれから頬をつねったり「これは夢だ……!」と思ってみたり目覚める為のありとあらゆる方法を色々してみたが効果はナシ。
仕方が無いがこれは現実だ。
私の名前は雛形愛理。16歳だった記憶がある。
ごくごく平凡な学生だった、強いて言うなら血液検査で血液がとても綺麗でサラサラという謎の誉め言葉を医者から言われたくらいだろうか?
そんな私がなんの縁か吸血鬼に転生しました。
わー、神様よくみてるー…………
……現実逃避しても仕方が無い。状況を整理しよう
現世での名前はアリス・ブラッド
吸血鬼の王族の二女として産まれて城で育った箱入り娘ならぬ城入り娘。
しかし、大切に扱われていたかと言うと決してそうではない。
むしろ幽閉に近かった。
理由は単純、姉であるローザ・ブラッドの方が吸血鬼として優れていたからである。
吸血鬼は魔力が澱んでいる者が尊ばれる
何故なら、吸血鬼独自の魔法『血魔法』の発動のキーとなっているのが呪詛が込められている澱み、禍々しい魔力であるからである。
その点私はとても澄んだ魔力をしていた。
それは、普通の魔法を使う為には利点となるが『血魔法』を使う為には大きな障害となる。
そして澄んだ魔力は吸血鬼が嫌うものの一つ。
故に私は『忌み子』として幽閉されつつ王族として子を産む為だけに生かされていたのである。
うわー、私超いらない子……
「わぁ……私って結構詰んでる……」
『アリス』の記憶と知識を整理しながら彼女のあまりにもあんまりな状況に私は思わず脱力した。
ただ、姉のローザを恨んではいない。
確かに『アリス』はローザを怖がって居た、しかしそれは彼女と相反する魔力を持つ故の事。
父や母がアリスを折檻したとしても、ローザが『アリス』を虐めた事はないし、むしろローザが『アリス』に『魔法』を教えていた記憶すらある。
だから『アリス』は人間の使う『魔術』よりも強力な『魔法』を使える。
その事は大きなアドバンテージとなるだろう。
しかし、軟禁されている以上百戦錬磨の吸血鬼による見張りが必ずいる。
と言うか、部屋の外に大きな魔力を2つ感じる。
「あれ?」
ふと部屋の外から鍵がかけられているドアの隙間に紙が挟まっていた。
「何だろ……これ?」
その紙を取って開けてみると………
明日の夜に勇者が攻めてきます。
戦闘の混乱に乗じて逃げなさい。
宝物庫の鍵は開いています。
不甲斐ない姉でごめんなさい。
ローザ
走り書きの血文字が書かれてあった。
血の魔力は姉、ローザのものである。
それを見て、記憶を取り戻す以前に城の使用人の間で流れていた噂を思い出す。
「王が人間に手を出した」
「王国から財宝をせしめた」
「人間は吸血鬼を恐れているから勇者が来る」
そして、この日の為に姉が私に魔法を教えてくれていたのだと思い当たる。
「ありがとう、ローザお姉ちゃん」
私は手紙を抱き締め、姉の優しさに涙した。