第13話 精霊契約の後……
「わっちの授業では杖を振ったり、馬鹿げた術式を構築したりはせん!」
精霊召喚の儀が終わり、集団転移で帰ろうとするレイリア理事長を押し止めて何とか徒歩で教室へ帰還した後、ようやく授業が始まった。
………あの後スゲー大変でした。
学園史上8回目の最上級精霊との契約、
レイリア理事長が大笑いして、バラバーノフ先生は無駄に腰をクネクネしてたしシャンクス学長は真っ青な顔をしてお腹を押さえてた
………シャンクス学長にはあとで調合した万能胃腸薬送っとこうかな?
(まあ最上級精霊どころか精霊王女と契約してるんですけどねーーー!)
つらい
「ところでミス、ウインターローズ?」
現実があまりに辛すぎてトリップしてたら理事長に名指しされていた。
「はい」
「木精霊狂霊と木上級精霊の違いはなんじゃ?」
あー、あれだね授業聞いてない奴を晒すやり方
レインリリーちゃんが顔色を悪くしてるよ
嫌いじゃないよ、でも相手が悪い。
「まったく仕方がない、有名なだけでは……「魔力の汚濁で精霊としての質が反転したのが『木精霊狂霊』ですね♪」」
「正解じゃ……」
ちょっとレイリア理事長が悔しそうな顔をしてる
ざまあみろー
ウチの師匠をなめないでもらいたい、その程度なら初めの方の授業で習った。
「ウインターローズが言ったように精霊は魔力の汚濁によって『変異』する」
ならば
とレイリア理事長は続け……
「人為的に我々の都合の良いように『変化』させる事も可能なのじゃ」
そう言うと水の精霊を呼び出し……
「【属性変質】」
そう呟くと
「『氷柱』」
小さな氷の柱を産み出した。
「もちろん、知っての通り精霊は概念を司る王族精霊を除いて2極4大元素に加えて自然精霊である木精霊しかおらん。【氷精霊】など存在しないのじゃ」
へえー、戦闘用の魔法は師匠の専門じゃなかったから知らなかったけどこんなやり方があるんだー
「おぬしらには3年で基本を学んで、高等部編入前には【属性変質】をマスターしてもらうからな!」
教室に衝撃が走った。
いやいやいやいや、キツくない?
「そしてーー」
更に追加で
「あと最も早くマスターした者が来年行われる人間の国との交換留学生となるぞー」
おい、待てや
一年以内にマスターできる奴が居る前提かよ
っていうか理事長こっち見てるし
一応アテはあるんだね…… というかやれる自信はある。
キーンコーンカーンコーン♪
「おおっと、これにて1時限目は終いじゃ、次は実技になるからのー」
そう言ってレイリア理事長は転移魔法を使い、消えた。
◆◇◆◇◆◇
場面は変わり、修練場となる。
「まずは精霊と対話するんじゃ、ほれ!」
【精霊召喚】
各々が精霊召喚用の呪文を唱える。
『汝は力を欲するか………?』
我が家のフェニックスさんことフェネも致し方が無いので召喚するが、悪ノリというか悪魔みたいなセリフで登場してくる。
あなたがそんなキャラじゃないの私知ってるからね?
ちなみにレインリリーちゃんは水の中級精霊で名前は『アクア』と言うらしい。
見た目は可愛いスライムである。
何で私だけ、厳ついフェニックスなの?
解せぬ
「殆どの精霊は会話ができん、じゃからまずは精霊と信頼関係を築いて魔法を使えるようになる必要がある、故に……」
レイリア理事長が精霊とのコミュニケーションのコツを教えてくれているが、そもそもフェネは人化して会話できるし、私だって念話を使えるのであんまり意味は無い。
あ、カトレアちゃんとレインリリーちゃんが精霊の名前を知れたのは精霊との親和性が高くて精神的な繋がりが強かったので、意志疎通が可能だったからだ。
「おっと、わっちはこれから会議がある。しばらく自習じゃ、」
これからレイリア理事長が会議らしいので反復練習となるみたいだ。
(アリス様、)
一応、メインの契約精霊(という設定)のフェネが念話で話しかけてきた。
(どうしたの?)
(エル様が、『私も外に出たいです!』と仰られております。)
(わかった……ちょっと待ってと伝えて)
どうやらエルが限界みたいだ。
普段、エルは次元断層内に居てもらうことになっている。
だがしかし、次元断層内は特に何も無いため凄い暇なのである。
早く別の方法、それこそベース的なものが欲しいと思うが、そう簡単には手に入らない。
(それこそ便利な『スキル』があれば良かったんだけどねーー)
『スキル』とは転生者に神が与える特権のようなものであり、師匠の話によると古の創造神が滅ぶ前の世界では『邪法』という名前で存在したらしい。
最も、創造神が滅んだ後に転生した私は貰えていないが。
(そもそも現代では『邪法』は別の意味で使われてるしねーー)
往々にして時の流れは言葉の意味を本来からかけ離れたものにしてしまう。
創造神に合掌。
まあ悩んでても仕方がないのでエルフィーに透明化魔法と魔力隠匿魔法をかけて召喚する。
(流石アリスお姉さま……)
(いきなりどうしたの?)
顕現するなりはしゃぐのではなく、いきなり私をヨイショするエルフィーに少し戸惑う。
(いえ、最高位精霊を越える王族精霊に2つも隠匿系の魔法をかけるなんて……)
(あれ?今更じゃない、エルの霊体を復元したのよ)
(それもそうでしたね……やっぱりアリスお姉さまは規格外です♪)
そう言って私に抱きついてくる。
え?自習をサボってる
いえいえ、精霊魔法における初歩は精霊と心を通わせる事。
すなわちコミュニケーションが重要なんです!
決して美幼女と触れあうのが目的じゃないからね!
そこんとこヨロシク!
というかレイリア先生(理事長)が優秀だから転生モノにありがちな同級生への授業が無くて助かるわーーー
そう思っていた時期が私にもありました。
「ねえ、アリスちゃん。来週の校外授業どうする?」
「へ?」
レインリリーちゃんが言った言葉に私は固まる。
「え!さっき先生が『来週、新入生合宿があるから各々でチーム組んどくのじゃー』って言ってたよ!」
いや、レインリリーちゃん理事長の物真似上手いな…
じゃなくて、おい
「それで……アリスちゃんが私達とチームを組んでくれると心強いな……って。組んでくれる?」
「私からもお願いー!」
カトレアちゃんよ、お前か
まあ、良いかーー
完全初対面の人や単独で行くよりかはーー
少なくとも2人は火球エルフより遥かに信頼できるし
「良いよー!よろしくねっ!二人とも」
ここにおいて将来SSランクギルドの中の1パーティーの雛形が産まれるのであるが、それはまた後の話である。
「ところで……レインリリーちゃん?パーティー名は決めているの?」
「うん!カトレアちゃん、発表どーぞ!」
「デデデデデデデデデデデ!」
効果音:レインリリーちゃん
「バン!」
効果音:水の精霊アクア
「森羅万象の調律師」
「ピュィー!」
効果音:風の精霊ライブラ
「却下で」
抜群のコンビネーションで発表された名前を私は切り捨てる。
「「えええええ!」」
私を除く全員が驚いているが、そんなことは知った事ではない。
いくらなんでも酷すぎる。
私は頭を抱えた。




