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4.私の呪い

――とても疲れた学園生活1日目。


人と関わらないように地味に過ごそうとしても、最低限の出会いはある。

とは言え同じクラスの人はともかく、謎の行動をしていた副会長や、不良の様な生徒には出会わなくても良かったのではないかと自身の不運を嘆く。


これで王子とも関わりが出来ていたらフルコースだったのではないだろうか。なんと恐ろしい。

夜着に包まれた腕を抱き締めブルっと体を震わせる。


…しかし、相談室の存在を知る事が出来たのは収穫だった。

いつでも来て良いと言っていたので、学園に慣れるまでは隠れ場所として使わせて貰おう。


そこまで考えて大きな欠伸が出た。


手元の照明を落とし布団に潜り込む。

目を閉じるとすぐに意識が溶けていった。



……その日は不思議な夢を見た。




―――地味な顔立ちに骨太体質、肌は色黒で髪は剛毛。

そして汚れ役を進んでする盛り上げ体質なので、友達は多くとも男子にモテた事はない。


そんな私の人生は乙女ゲーム無しに語る事は出来ない。


リアルではこんな私だが、ゲームの世界なら美少女になれる!イケメンにモテる!お姫様にだってなれる!


お小遣いやお年玉、働く様になってからは給料も、収入はいつも乙女ゲームに消えていた。


結婚適齢期になってもリアルの男は私に手を差し伸べてくれない。

でもゲームの中でなら恋愛し放題、イケメンから求婚されまくり!乙女ゲーム最高!!



…そんなある日、私にとって最高傑作とも言える作品に出会った。


私がこの主人公になれるなら、ラノベみたいに今の人生終わらせてもいい!

…とか思ったけど最終的に92歳まで生きた。我ながら大往生だ。


生憎、伴侶には恵まれなかったが、友人に囲まれて幸せな最期を迎える事が出来た。かけがえの無い最高の人生だ。


そしてずっと大切にしていた例のゲームは私と一緒に墓に入れてもらった。



――ああ、唯一の心残りは恋愛らしい恋愛をリアルで出来なかったこと。

もし生まれ変わるなら、このゲームの様な人生が送れたらいいな…。

顔良し性格良し男受け良しとまでは望まないから、いっそコミュ障でも口下手でも人見知りでも何でも良いから……せめてこの主人公…クリステラの様に愛らしく生まれたいな……。


そう願いながら私の意識は光の中に消えていった。




目覚めると目の前には、まだ見慣れない寮部屋の天井。時計を見ると起きるにはまだ少し早かった。


変な夢を見た気がする。少し寝惚けたまま髪をくしゃりと搔き上げながらベッドから降りる。


薄暗い部屋で鏡の前に立つとぼんやりと自身の姿が映し出された。


――絹の様な肌に血色の良い唇、長い睫毛に縁取られた澄んだ青い目、甘い色の柔らかな髪の毛、華奢な身体。


()が望んだ物だ。


そしてコミュニケーション能力が低く、口下手で人見知りが激しい性格。


()が受け入れた物だ。



……私……、…私って…何の事だっけ?


少し考えて頭を振る。

ダメだ、まだ寝惚けている。もう少し寝ようとベッドへ倒れ込んだ。


ごめんねと呟く誰かの声が耳に残っていた。



―――これは()の呪いなのだ。


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