第1の街ヨルド~不幸の始まり~
露天商には俺の責任だから弁償はいらない、と言われそそくさと俺達はそこから歩き去った。
道を目的もなく歩く。
すると、突然背中に何かがへばりついたような感覚がし、ぞわぞわぞわっと全身に鳥肌が立った。
「……」
「どうしました?」
「やばい気がする」
「えっ?」
「何か、すっごい不幸なことが起こるような感覚が...」
「気のせいですよ」
「そうかな?」
「はい」
俺は恐らくそんなことはなく、普通に不幸な目に会うだろうなと思ったが、
「あっ」
つまづいた。地面に小石が置いてあったらしい。ドン臭すぎるな俺は。そして、横を通り過ぎようとした大きめのアタッシュケースのようなものを持った執事風なひとにぶつかった。
がこん
「ん?」
執事風の人が持っていたカバンが開いてしまった。
「あっ、すみま...」
中には、獣人族の少女が詰め込まれていた。
...来たぜ不幸が這いよって
「...」
「...」
「くっ、貴様見たな!」
「みっ、見てないです」
「嘘をつくんじゃないっ!悪いが、死んでもらう!」
執事風な人が何やら呪文を唱える。
「危ないです、類さん!あれは、範囲魔法、地獄業火です!」
「えっ」
「地獄業火!」
執事風の男が呪文を唱えると、地面が地獄に変わった。半径10mぐらいの範囲は全て火の海に包まれる。当然そこを歩いていた、人達、老人や子供も
燃え盛る。
子供を連れていた母親は子供を助けてと叫び、裕福そうな男性は周りの人間を盾にしようとし、下から発生した炎にやられていた。
正に地獄。
俺はリリカに助けられ何とか逃げていたが先程の地獄業火がかけられた場所は地獄絵図だった。人々が逃げ惑い、火は魔法で作られてるからなのか全然消えず、全身火達磨になっている人もいた。
「おっ、おいリリカ。助けないと!」
「無理です!類さん1人で精一杯です!」
俺はリリカにおぶられていた。
執事風の男は俺が生きているのを見ると、「チッ」と舌打ちをして逃げ去っていった。
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俺は、元の場所に戻ってきた。
火を消す作業を手伝い、生存者を探した。
すると、さっきの執事風の男が持っていたカバンが置きっぱなしなことに気づいた。
火が消えた後、さっきの執事風の男が持っていた、カバンの中身を確認すると、
「いた」
獣人の子供は中で蹲っていた。




