プロローグ
俺の名前は雲和 類、高校2年生だ。
彼女はいないが、別にコミュ障とかいうわけではなく、普通などこにでもいる高校生である。
まぁ、特徴…特徴と言っていいのか甚だ疑問だが個性としてあえて言うのだったら「運が悪い」ってことだ。
高校に入ってから遅刻回数約100回。
いや、もう留年だろと思ったそこのあなた、遅刻した理由が(ほぼ)全て電車の遅延、もしくは事件に巻き込まれたことによって、なので書類上では無遅刻なのだ。
これは氷山の一角であってまだまだあるのだが、まぁそれはいつか機会があったらということで。
その日も朝から遅延と、目の前で婆さんが突然倒れたことを通報したことで遅刻した。
別に俺は不良でも何でもないので、申し訳なさそうに後ろの扉から教室に入ると
「おい、雲和。また遅刻か?」
担任の鈴原が声を掛けてきた。
まぁ、当たり前なんだが。鈴原は数学の担当にもかかわらず、むしろ体育教師みたいな、見た目の男だ。生徒に一定の理解があるからか、割と人気の教師ではあるが。
「遅刻です」
「今度は、何があった?」
「遅延と婆さん助けてたら遅れました」
「なんだよ婆さん助けてたって…まぁいい。座って授業受けろ」
「はい」
他の生徒は、若干恒例行事となっているこれに、特に反応を示すことは無い。
最初のうちは色々あったが、みんな慣れるのが早いようだ。
窓際の自分の席に座ると、いつも通りの授業が始まり、いつも通りの日常が進む…と思っていた。
数学の授業が進み5分ぐらい経ったころ、突然教室の床に魔法陣(?)の様なものが浮かび上がってきた。
「なんだこれっ!」
「意味わかんねぇよっ!おい、なんのドッキリだよっ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
クラスメイトは、数人を除けば皆うろたえ、女子は悲鳴まであげている。そして、魔法陣の光が、目を開けられないほどになったところで“シュン”という音がした。
その瞬間、自分の体がほどけていくような感覚に襲われ、体を強ばらせていると、微かに
(こいつ…めだ…ろいが…つよす…)
という声が聞こえたが、すぐにその声も遠くなり俺の意識はどこかへと、飛ばされてしまった。