01
『「異界の侍と死霊使い」世界』
作者…風林火山信玄
原作…『友達はいないけどゾンビなら大勢いる』
原作者…たしぎはく
「おい!やかましいぞ!……って……」
周りには見たことのないモンスター4匹が俺を取り囲んでいた。
「な……なんだこれ!?」
寝起きの俺には即座の判断が不可能であった。
「ね、鼠?!」
鼠だ。それも恐ろしくデカイ。
そして何か不自然だ。ポリゴンのような質感。不思議に思い自分の身体をよく見ると、やはりポリゴン質で、寝転がっていた地面も良くみればポリゴンっぽい。
ポリゴン質の世界……そしてRPGに出て来そうな敵……自分の格好……こ、これはまさか。
「まさか……これは……ゲームの中か!!」
俺が声を張り上げるとモンスターが声をあげて襲ってくる。
咄嗟に武器を探す。
もしゲームの中ならブロンズソードやショートソードなどの初期武器がある筈だ。
「あった!」
腰にかけてある。この形状……刀か。
「しっ!!」
気合一閃。抜き様に一撃見舞う。
何らかの技が発動したのか自分でもビックリの滑らかな動き、そして完璧な力の入れどころ……何かシステム上でのブーストらしきものが発動したようだ。
それは的確に敵の弱点を斬り裂き、ポリゴンの破片に変える。
「うおぉ……って、後3体もいるじゃないか?!」
感心してる場合ではない。
この鼠を大きくし、凶暴化させたようなモンスターは対して強くは無い……感じがした。
だが、数が増えると侮れないものがあるのだろう。
「くっそぉ……」
どうすればいいのか。
これが、俺の予想通りゲームの中ならば全方位攻撃的なスキルがある筈だが……敵を見る限り最初の方なのだろう、ある筈も無いと考えていると……
「キシャァァァ!!」
いかにも獣らしい声をあげながら3匹同時にうちかかってくる。
俺が再度、刀を抜き両手で顔の前に構えると俺を光が覆った。
「うおぉぉっ!!」
気合の声なのか驚きの声なのか自分でも判断出来ない声をあげ、そのシステム的なアシストに身体を預ける。
顔の前に構えた刀は、そのまま俺の腰に運ばれ腰の高さから回転斬り。
「うおぉ……すげぇ……!!」
と、感心したのも束の間、うち漏らした1匹が牙を剥き出しに後方から接近して来たのだ。
「やべっ!!」
刀は納めている。
今、抜いても間に合わないだろうという思考をコンマ1秒の速さで判断し1発喰らうと覚悟した時、鼠の横から拳が入った。
「……え……?」
唖然。
「ふぅ……」
突然の乱入者は一息つくと、不気味な呪文を唱え始め、先程倒した鼠の所に黒い光が集まり、あっという間に鼠が復活した。
「な、何者だ!」
乱入者に対する第一声。
「…………」
俺の言葉に対して何も言わず口をパクパクさせている。
まさか、此奴……俗に言うコミュ障というやつではないのか?!
さらに、今更だが乱入者は3人いる。
「あ……あ〜、と、取り敢えず名前だけでも教えて貰える?」
その不思議な3人組に訊いた。
「……クロウ…………」
「サーラだよ〜!」
「……聖夜だ。以後、お見知り置きを。」
赤い眼の少年、
「クロウに、サーラに、聖夜か。」
クロウと名乗る青年はコミュ障か寡黙か、恐らく前者だろう。
サーラは猫耳を装備している少女だ。可愛い。
彼だけは割と、紳士的な青年のようだ。
「あ、あの〜……この世界の事について教えてもらいたいんだけど……」
すると彼はビックリしたように目をまん丸にした。まるで知らない方がおかしいみたいな目だ。
「わかった。俺たちに着いて来てくれ。」
聖夜は言った。
「お、おう。」
不思議な三人組に出会い、これからどうなるのやらという感じなのだが……
とにかく、俺はこの世界についてRPGっぽいことしかわからないから彼らに着いて行くのが吉だろう。
森の中を歩く。
「そう言えば君の名前を聞いてなかった。」
「プレイヤーカード、交換しよ!」
「ぷ、プレイヤーカード!?」
そんなものがあるのか!!
どうやら本当にゲームの世界のようだ。
しかも……俗に言われるMMORPGらしい。
「なんだ、その驚き方は。」
「MMORPGだからあって当然でしょ!」
確かにそうだ。
それにしてもクロウは全く喋らない。
「クロウ!早く彼と交換するんだ。」
「あぁ……はい。」
どうやらコミュ障だ。
俺とは上手く話せないが親しいであろう彼とは上手く話せている。
そもそも、交換の話が出たが俺は交換の仕方を知らない。
「職業紋様をタッチしながらメニュー、オープンて言えば出て来るぜ。」
なるほど。
それらしきものを探すと……あった。
刀が一本、その周りを龍と炎があしらえてある。それを触りながら先程、言われた言葉を唱える。
「メニュー、オープン。」
出て来た。
このステータス的なものがバッと書いてあるのがプレイヤーカードなのだろう。
なんだかんだで交換を済ませた。
「へぇ……流ねぇ。よろしく。流君。」
「……よろしく、です。」
「よろしくね!」
自分のプレイヤーカードをまじまじ見ると、職業からステータスなど諸々が書かれていた。なるほど……侍か。
それにしてもステータスは最初から100近くあるものなのか?
「それにしても侍とは……ステータスもおかしいな……」
「確かに高いですね。」
自分は目を見開いた。
あのクロウが聖夜とは普通に話せていることに驚いた為だ。
「次の街に着いたら少しログアウトさせてもらうよ。少しひっかかる。」
「ええ。わかりました。」
「サーラもこの後、用事があるからログアウトするね!」
「お前もか!」
「じゃ、取り敢えず行こうか。」
俺は少し首を傾げると、その仲良し三人組を追いかけた。