#013 それでも僕はこの世界が好き、今ある世界が好き
「お母さん」
流が言った。
「僕はお母さんと一緒に行くわけにはいかないんだ」
その答えに対し、絶対神は、満足げに頷いたきりであった。
「それじゃあ、私を『壊せ』。その後に光珠を回収すれば、世界の崩壊は止まるはずだ。あとは好きに修復すると良い」
「お母さん。時間は、あとどれくらいある?」
「そうだな、あと十分あるかないかではないか? それを過ぎると、修復不可能なレベルまでこの世界は崩壊する」
それじゃあ、と、流は、両手を広げた。ちょっとだけ、僕の友達の話を聞いてよ、と。
「ある世界では、頭のネジが飛んだような、だけど愉快な人たちと会ったよ。ニューヨークを一緒に観光して、あとテロに巻き込まれたりとか、いろいろしたっけな。
また他の世界では、他人と喋るのが苦手な奴と知り合ったかな。クロウ、って言う名前で、白髪赤目っていう勘違いされやすい外見のせいで、卑屈になってる奴さ。
違う世界では、男だけど女の子って奴と友達になったんだ。アスっていうんだけど、すごくメカに詳しい子でさ。一緒に巨大ロボに乗って、敵と戦ったりしたんだけど。
また違う世界だったら、勇者五代目って言う名前の子と知り合ったり。年相応にちょっとアレな部分もあったけれど、話せば良い奴だったし、きっと将来は良い大人になるよ。あ、いや、良い勇者になるよ、かな。
その次の世界では、アリス、っていう奴と出会った。あいつとは良い友達になれたような気がするんだ。アリスだけじゃないけど、僕のためにいろいろよくしてくれてさ。ほとんど見ず知らずみたいなモノなのに。
んー、他には……そうだな、めちゃくちゃ強いのに、それを全然誇らない奴とも会った。あいつはちょっと難しく考えすぎなんじゃないかなあ。ただ、良い奴ではあったよ。心二くんっていうんだけど。
ああ、あと、ファンタジーな感じの世界にも行ったなあ。シャルとアシュリー、仲睦まじすぎてちょっと直視できなかったかな、なんて。
そうだ、トレジャーハントで相棒も出来たな。友達でもない、仲間でもない。相棒っていう響きに、なんとなくこそばゆさみたいなのを感じたんだっけな。
あと、ものすごくツッコミが上手な人にも会ったかな! 二ノ宮くん。店長と喧嘩ばっかりしてたけど、甲乙くんっていう子を取り合っててね? 楽しさ、でいうと圧倒的だったかも。いっぱいバイトさせられたけど……
それで、最後だ。神に性別を変えられたあげく、汚い仕事をさせられていた女の子。最高の抱き枕こと楓ちゃん。とりあえず世界を修復したら――彼女がよろしくやっているか、覗きに行こうかなと思ってる。あと抱き枕になってもらおうとも」
言葉を切った青年の指は、丁度十本、折られていた。
「こんな素敵な友達がたくさんいるこの世界たちを、それでも僕は好き。今ある世界が好き。だから、世界は壊させない」
絶対神は、流の言葉に、何の言葉も発さなかった。
「――そろそろ、時間だぞ」
「……そうだね。それじゃあ――またね、お母さん」
名前:たしぎ はく
運営として参加させていただいて、こうしてこんなにも大勢からの参加があって、自分でも正直驚いています。あと、運営の仕事量の多さにも驚いてます。なんなら投稿開始してからも作業し続けて、今ここを書いているのだって、登校時間の六時間前とかですからね。なう二時。
最後、なんとかまとめたつもりなのですが、うまくまとまっていますでしょうか。流くんのこれからは、誰にもわからない。ハッピーエンドかもしれないし、もしかしたらバッドエンドかもしれない。これは不和世界、和が不、不和、和ではない世界のお話なのです。彼の冒険はまだまだ続きます(白目
ライターとしてのおのれの筆力の無さに歯がみしながらも、なんとか完結までこぎつけて、本当に良かったです。
では、このあたりで。
追伸:世界構造、光珠については語り尽くしたつもりではありますが、もしも不足分があれば、感想等で通知していただければ、加筆したうえでお答えいたします。それが面倒だよと言うお方は、ぜひ、あえてたしぎが想像の余地を残したのだ説を周りのみんなに教えてあげてください。
本当にありがとうございました!




