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不和世界 ―「埠」頭に繋ぐ、「わ」れらが世界の物語―  作者: ワタシイロReVo制作委員会
"LOOPs” Re BROKEN
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#011 しいてどこで間違ったのかを挙げるとするならば、当然最初から

最終章『“LOOPs” Re BROKEN”』

作者…たしぎ はく

原作…不和世界 ―「埠」頭に繋ぐ、「わ」れらが世界の物語―

原作者…不和世界参加ユーザー様

 絶対神が右手を掲げると、その手のひらの上に乗った光珠に、絶対神世界の光珠が吸収された。一際強く光り輝いたそれは、更に絶対神に吸収される。

 その瞬間、ピラミッド世界に走る亀裂。

 もはや絶対神の頭の中から、青年のことはきれいさっぱり消え去っていた。

 振動する世界、床が傾き、ひび割れ、出来た隙間に、青年はベッドごと落下する。こんな時でもなお睡眠から覚めない根性はなかなかであったが、これまで何度も言ってきたように、この世界には観測者は「青年」しかいないのであって、そのことを「褒める」ような者はこの場には存在しなかった。

 存在するのは、完全に力を取り戻した絶対神、ただ一人である。


「一体いつであったかなんてとっくのとうに忘れてしまったが、とにかく私が自分を知覚した瞬間、その場には何もなかった。私から発される『光』のみに満たされた空間だけがあった。それからしばらく、私はずっと一人でそこを漂っていたが、ふと思いついて自分の『家』を創った。それから、悠久の時が経った。殺風景な世界に、飽きを感じた。だから、『子』を創った」


 左胸、人間でいうとちょうど心臓がある辺りを慈しむように撫でながら、絶対神は、壊れゆく世界の中、自分の「過ち」を確認していく。


「私が造った子供たちそれぞれに、私の力を与えた。それが光珠になった。光珠を与えられた子供たちは、めいめい己の世界を構築した。私の世界に依存しなければ維持できないような、そんな脆弱な世界群である上に、今だから頭の固いなんていえる、当時の私とほとんど同じような物の考え方をする子供たちが創った世界であったから、当然面白みなんて全くなかった」


 自分が生まれてから、今までを、頭から振り返る。最初から、最後まで。


「だが、ある時、一人の子供がミスをした。自分が作り上げた粗悪な生命に、『知恵』の獲得を許してしまったのだ。リリスにそそのかされて知恵の木の実を食った男の名はアダム――その伴侶はイブといったか。不思議なもので、神が追放した「人類」と言われる私の孫たちは、地上に堕ちた後に、わずか二千年とはいえど、一時代を築き上げた。文明を、言葉を、彼らは、成功を手に入れたのだ」


 この辺りからが間違いなのだろうな、と、絶対神は思った。


「私の子供である神々と、その神々の子供である人間の違いは、『心の有無』だ。一番最初にアダムが追放された以降も、次々と他の世界でアダムは『知恵』を『心』を手に入れた。どんな過程をたどっても、最終的に、人類は『心』を手に入れてしまう――」


 その時であった。


「だから壊すの?」


 背後。

 まったく認識していなかった空間から声をかけられ、しかし絶対神は、内心の動揺をおくびにも出さず、それどころか振り返りもせず、青年に声をかけた。

 否。それは、声をかけたというよりは、やはり独り言の延長に過ぎないのかもしれない。


「だから、とは?」

「僕達人間が心を持ってしまったのは失敗だから、ゲームみたいに全部リセットして、もう一回最初からやり直そうっていうの、ってことだよ」

「いいや、違う。リセットして、次を始めるかどうかはまだ決めていないのだ」

「それじゃあ、全部壊してしまうだけじゃないか」

「その通りだが? 私が造りたかったのは、誰かが不当に虐げられる世界ではないのだ。青年、お前といくつか世界を巡ったことで私は知ってしまったのだ。人間とは、完全に失敗作である、と。人間は確かに心を手に入れたことで発展したかもしれないが、しかし心を手にしたことで、他人を虐げる『気持ち』まで獲得してしまったのだ。これが失敗と言わずして何と言おうか。……そうだな、もしも次があるのなら、猿からではなく鳥から知的生命体を創ることにしようか」


 神は半身だけを青年の方に向けて言った。

 青年はその瞬間背筋を掻き毟るように走った悪寒に頽れそうになるのを必死で耐える。


「もう今更止めても遅いのだぞ、青年。世界の中心である神々――つまりは光珠を、私はすでに回収してしまった。もうほとんどの世界が崩れてしまったころではないか?」

「世界が崩れたら、どうなるっていうの?」

「もちろん、この世から無かったことになるな」


 それじゃあ――青年は。

 天雲流は。アマクモナガレは。

 言った。

 僕も、もうすぐ無かったことになるのかな、と。


「それは無い。青年――いや、天雲流。お前は、私の子供だ。私の子供である神々がそうしたように、私が造り上げたただ一人の人間、それがお前だ」

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