なな おわり
ネタばらしというか、この世界に起きた出来事を全て話すことにしよう。
神によって全部教えてもらった。
この世界の絶対神が、TSと言うものを見たい、というたったそれだけの理由で三人の部下を下界におろし、木風ちゃんを男から女にしたらしい。
そして、その木風ちゃんは女になったが、それなりに上手く生きていたようだ。
だが、TS学園ラブコメに飽きた神は、今度は凌辱エロ物語が見たいと言い出した。
確かに、ギャルゲーを遊んだ少年が、そろそろエロゲーに手を出したいと思う気持ちも分かる。
三人の部下は、上司の言う通りに木風ちゃんの知人を全て殺し、木風ちゃんを詐欺風俗店に引き渡す。
そこで木風ちゃんは、仕事のノウハウを体に叩きこまれ、純血を奪われ、毎日客の奉仕に使われた。道具のように。
そこで、僕が現れた。
僕という異物を排除するために、三人の天使が舞い降りたが、僕が全員殺してしまった。
天使を殺したのだ。多分この世界の神は怒りで、別の天使を使って復讐しに来るかもしれない。
電車を乗り継ぎ、現在遠く離れた地方に来ていた。
僕の傷も、木風ちゃんの傷も神によって修復してもらい、ホテルの一室にいる。
「あの、ありがとうございました。流さん」
「うん、礼はいいよ」
見ただけで気を失いそうなほどに美しい美少女は、ベッドの上で僕にお礼を言う。
「木風ちゃんが無事でよかった」
「えっと、あの……実は、私……木風じゃないんです。楓って言うんです」
「そうなの?」
確かに、天使たちは木風ちゃんのことを楓と言っていたのを思い出す。
てっきり名前と苗字かと思っていたが、どうやら木風は偽名だったらしい。
「木風は源氏名です」
「ああ、そういうことか」
風俗で働くために、付けられる別の名前。
ペンネームだったり、芸名だったし、仮の名前だったらしい。
「そっか、じゃあ楓ちゃんだね」
「そうです」
木風ちゃん改め楓ちゃんの名前を呼ぶと、彼女は嬉しそうに笑った。
「私、これからどうなるのでしょうか?」
「分からない。ヤクザが来るかもしれないし、天使が来るかもしれない。でも、僕は君をずっと守ってあげることは出来ない」
「……連れてって、くれないのですか?」
「ごめんね、無理」
僕はまた、別の世界に行き、その世界でまた特異点を見つけ出し、光珠を取り出さなければいけない。これからも、ずっと。全て回収するまで。
「残念です」
「ごめんよ」
僕は、申し訳ないように、楓ちゃんの細い体を抱きしめる。
「これからは一人で生きていくしかない。それはとても大変なことだけど、出来るかな?」
「はい、頑張ります」
「その代わり、今夜は一緒に寝よう」
「……私で、いいんですか?」
「もちろん。君より美しい子を、僕は見たことがない」
「私、元々男ですし、今はもう……汚れています」
「気にしない」
僕は、ホテルのベッドで彼女を押し倒し、抱き枕のように抱きしめ、目をつむる。
彼女も、僕を抱き返す。
「ありがとうございます……流さん」
彼女は、泣いて喜んだ。
「涙は似合わない」と僕は楓ちゃんの涙を舐めとる。
神が『光珠が出てきた』といい、どうやら僕のこの世界での役目は終了したらしい。
終わったのだ。
でも、この一晩限りは、ゆっくりと眠らせて欲しい。
僕は疲れた。
長年溜め込んだ力を殆ど使ってしまい、僕は死んだように眠りについた。
この、世界一抱き心地のいい抱き枕を、離さないように強く抱きながら。
人間と言うのは、言ってしまえば「食欲」「性欲」「睡眠欲」さえ満たして生きていけて、うまい物食べられて異性とエッチ出来て、たっぷり眠れればそれだけで幸せなんだ。
だから、美味しい物を作ろうと人生をかける料理人がいる。
だから、金を払ってまで女の子とエッチ出来る風俗店が出来る。
だから、今日も僕はふかふかの布団の上で、最高級の抱き枕を抱きしめて眠る。
生き続けるために僕は眠り、夢を見る。
おやすみ、楓ちゃん。
そして、さよなら。
名前:イガイガ栗
作品提供:朝起きたら女にされたので、神をパシリにしています。
不和世界に参加して、その他感想や一言:
『忙しくてライター参加は諦めたんですが、できれば執筆側でも参加したかったですね。稚作は、なんでもないただのTSラブコメ(っぽい何か)なので、ライターの方が、どうやってその点を活かしてくれるか楽しみです。ありがとうございました。』




