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不和世界 ―「埠」頭に繋ぐ、「わ」れらが世界の物語―  作者: ワタシイロReVo制作委員会
「睡眠欲」世界
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いち

『「睡眠欲」世界』

作者…なすび

原作…『朝起きたら女にされたんで、神をパシリにしています。』

原作者…イガイガ栗

人間には「食欲」「性欲」「睡眠欲」の三大欲求があるのだが、多分僕、雨雲流あまくもながれにはその欲求の殆どが「睡眠欲」に持っていかれているのだと思う。

 そうでなければ、僕がこんなにも睡眠時間を必要とする訳がない。


 僕は寝るのが好きだ。人間の人生の三分一は眠って過ごすらしいけれど、僕は人生の三分の二は眠っていると思う。

 美味しいごはんが食べられれば幸せという人がいれば、気持ちいいセックスが出来れば幸せと思う人もいる。それと同じで僕はぐっすりと眠れればそれだけで幸せなのである。

 眠れれば場所は選ばない。

 選ぶ必要などない。

 弘法は筆を選ばいように、AV男優は女を選ばないように、僕は寝床を選ばない。

 眠れればどこでもいいし、この底が見えない欲求を晴らせればなんでもいいのだ。


 生き続けるために僕は眠り、夢を見る。

 他の人が、スポーツや仕事で生きがいを得ているのと同じように、僕は夢を見て生きがいを得ている。

 それだけ僕は眠ることが好きで、眠れさえすればどこだっていいのだ。


 幼稚園児の頃は友達の小林君の「僕、先生と結婚するー」を真似て「僕、布団と結婚するー」と言っていたものだ。

 ついでに小学校の頃に、「布団、お前誰とでも寝るのか……びっちなのか」と衝撃の新事実に気付き絶望し、中学校の頃には「眠れれば布団じゃなくてもいい」と開き直れるようになった。


 ついでに幼稚園児の時に「先生と結婚する」と言っていた小林君は中学校では「幼女と結婚する」と言っていたから、人間成長すると好みも変わるものだ。

 かくいう僕も昔はレム睡眠が好きだったのだが、今はノンレム睡眠が好きである。やはり好みというのは変わるものだ。

 ついでに小林君は高校生の時に「幼女も年とるんだよな、いつかは成長するんだよな。すると年とらない二次元マジ神じゃね?」と言いだし二次元オタクになって学校に来なくなった。今頃何しているのだろうか? 幼馴染として心配である。


 しかしまぁ、他人の心配をしていられるほど今の僕は余裕のある生活をしていなかった。


『おい、起きろ。起きろ青年』


 頭の中に直接響き渡るような声が、僕の睡眠を妨げる。

 僕はむくりと体を上げ、僕の睡眠を妨げた存在を叱る。


「あの、僕まだ寝たりないんだよね、起こさないでよね」


『地球時間で、十四時間眠っておいて何を言っているんだ青年』


「へぇ、まだ十四時間か。じゃ、あと二回日が昇ったら起こしてね」


『何時間寝るつもりだ!?』


「あと五年」


『神もびっくりな発言だなっ! 「母さん、あと五分したら起こして」の感覚を年単位で要求してきたぞ!?』


 僕の頭に直接流れ込んでくるこの声は、自称絶対神。

 つまり神である。神。ゴッドだ。

 僕はどうやら、寝ぼけていた拍子に世界を壊してしまったらしい。

 世界を構築する、形を保ち続けるための装置を壊してしまい、世界の欠片みたいなものが異世界にちりぢりになってしまったらしい。

 ワザとではないとはいえ、僕は壊してしまった張本人。ここは仕方なく世界の修復に力を貸そうと思ったのだ。


「で、ここが、ちりぢりになった『欠片』。『光珠』だっけ? それがこの世界にあるの?」


『ある』


 被っていたアイマスクを額まで持ち上げた。光が眼球に入ってきて目をつむる。

 壊れてしまった僕の世界は、『光珠』と呼ばれる欠片となってばらばらになった。

 その一つがこの世界にあるらしい。

 つまりここは異世界である。異世界と言っても、パラレルワールドのようなもので、首を動かして見回した感じ、僕のいた世界と対して変わった所はない。


 ここはいたって普通の公園で、ベンチの上にいた。


「で、その『光珠』はどこにあるの?」


 早い所全て回収し、世界を修復して元の世界に戻りたいものだ。

 そしてゆっくり寝たい。この冒険が終わったら、僕布団と結婚するんだ。

 無意味な死亡フラグを立ててみる。

 死と言うのは永遠の眠りという訳で、それはそれで魅力的だ。

 永遠の眠り。エターナルスリープ。悪くない。


『悪い』


 神に怒られてしまった。


『お前に死なれては困る。せめて世界を直してから死んでくれ』


「はいはい……ふわぁぁぁぁ」


 適当な返事をあくびをしながらする。

 さて、じゃあ早速、


『光珠を探しに行くのか?』


「いや、寝る」


『いい加減起きろ』


 人使いの荒い神様である。


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