#008 新世界は女神の腹の中で胎動し、青年は宝探しの夢を見る
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今回も珍しい方、わずか数秒での帰還になった。
青年はピラミッド――と青年が勝手に形容しているだけに過ぎない――に帰還するなり、ベッドに倒れ込んだ。余りに勢いよく倒れ込むので、柱には緩衝剤代わりに床と同じ素材が貼り付けられている。
余りに勢いよく、とはいえ絶対神が眠りの暗示をかけている以上、仕方のない事ではあったが、白々しくも神は、恩でも着せるかのような気持ちで、青年の代わりにベッドを改良してやったのだ。
青年の懐から零れた光珠は、もはやそれが当たり前であるかのように、ピラミッドの中央にある絶対神世界の光珠には向かわず、似たような形をしている絶対神と融合を果たした。一度大きく脈打つ。さながらそれは胎動であった。「これから構築される」、新しい世界の胎動。
もしもこの場に視力がある者がいて、正常に絶対神を直視する事ができたのなら、神のことを「光の球のようだ」というふうな形容をしなかったに違いない。明らかに絶対神は、青年と同じ、二本の腕と二本の足、そして首を持つ、人型へと変化し始めていたのである。体の凹凸から判断するに、女性型だ。髪は生えておらず、顔面ののっぺらぼうのようにつるんとしており、まるでゆで卵のようだ。その体には何も纏っていない。
――――ふむ、まだこの程度が限界か
そんなふうに聞こえる声が発された直後、「人型」は元の光の球に姿を戻していた。
同時に、青年が目を覚ます。
「敵襲か!?」
――――何を言っている
「敵襲じゃないのか!?」
――――少なくとも、絶対神に敵襲を掛ける馬鹿者が青年以外にいるとも思えぬが……
「敵襲じゃないんだな……?」
――――そうだと言っている
凄いプレッシャーを感じた、と、青年は額の汗を拭いつつ言った。今まで幾星霜、無限、砂漠の砂粒海の魚、星の数の世界を旅し、修羅場には慣れるどころかエキスパート、専門家とさえいえる経験を十分すぎるほどに積んだ彼にとって、寝ている間に身の危険を感じることはある種必須のスキルとも言えた。
しかし、その能力は持っているだけであって、実際に自分の眠りを中断したことなど、今まで一度も無かったのだ。凄まじい圧力をその身に感じて、慌てて飛び起きたことなんて、それこそ初めての経験である。
――――寝惚けたのではあるまいか
「ちょっとガラにもなく大大大冒険を繰り広げて来たから……まだちょっと、神経が過敏になってる、のかなあ……」
――――体調を崩すことは無いとは思うが、もう少し休むと良い
「普段は文句言うのに珍しいね……。でも、まあ、ありがとう。ちょうど今寝たら良い夢が見られそうなんだ――トレジャーハントの夢とか、ね」




