7th
「ふっほほほ?これはすんばらしい。我が代々イェーデ家に伝わるコレクションに相応しいあの幻獣の王。あの翼竜に宝箱つきとはむっふぅう」
「親方様!あれを」
「む?なんじゃ?ハードルフ。ほほほほぅ?これはこれは我等に先程反逆をしたフレックイン魔術学園の生徒か。これもすんばらしい!あのカリオスから資金を毟り取る大切な人質も確保とはのぅ」
「「「うっゲェ…成金公爵ぇ」」」
「むぅぅぅううるさいぞガキ共。良いか、あのこ生意気なガキ共を三番隊が確保しておしまいっ!そして七番隊から八番隊は翼竜。そして二番隊は我とあのお宝を。ほほほ」
「「「がってん!」」」
「――バカだわ、あれ」
塔の中間付近から覗くリナちゃんは呆れ顔をあの無能極まりないちょび髭オヤジに向ける。
そのオヤジの背後から、まるでお約束の如くワラワラとラクサス兵が湧いて来るように塔最下層に何処かの無双ゲーのザコキャラの如くひしめき合う。
ま、これでこの冒険劇というステージに相応しい役者が全て揃ったっつー訳だ。
「全く…こんな狭い場所をあんなに騒ぎ立てて、あの翼竜を叩き起こし逆に慌てるのが目に見えてるわね」
リナちゃんはそう告げながらため息を零し。一段となり我先にと下方からワラワラと登る兵士に向け八元素の一つになる大気中に含む微量の鉄分を吹き返す風を利用し句集める。
八元素の一つ、土。更に鉄分と摩擦を繰り返し…多分某魔法少女ばりな無数のランスを構築する筈が?
「あら!?……少し違ったけど」
巨大過ぎな鋼鉄のモーニングスターを片手に3つ、系6つ錬金整形させる。当然重力に従うように石段を粉砕させながら転がって行く。
その様子に「ギョッ」とする兵士達に容赦無く次々に直撃させワラワラと突き落とされる。
「ちょっと!リナ。冷静顔でカオス作らないでくれる?」
「ふ、不可抗力よ。これも作戦の内だし」
ライフルを構えながらフェリアちゃんに突っ込まれては、「策の内よ。文句ある?」と錬成ミスを誤魔化すのはやはり。うん。
結果オーライにしておこう。
先制攻撃をぶちかましたリナちゃんを皮切りにケイジくんが軽くうなづき、次々に氷の槍を群がる兵士に容赦無く撃ち込み突き落し始めるリナちゃんに向ける。
「次から次へと切りがないな。仕方ない、俺が先端を開く。その隙に西側下にある通路にカエルと流。サクラを連れて撤収だ」
「え?私の宝ぁ…」
サクラちゃんの残念がる様を横目に500フィートはあろう高さからケイジくんは素早くダイブする。
重力と特殊な移動術も手伝い斜め九時方向に起動を描き移動途中の複数の兵士が豪快に巻き込まれ落下。
その彼等の落下速度を上回る速度で更に瞬間的に加速し、最下層に群がる兵士を硬い床事四方に飛び散らせ着地。
「すげぇ…」
ほんの数秒の間に三分の一の兵士を気絶させ、更に瞬く間に群がる輩を素早く撃破する。
「な、なんと!…ええい、怯むでない!四方から取り囲め、あの少年を生け捕りにすれば報酬は三倍にしてやる」
五六人がかりで三方から飛びかかる輩。しかし飛びかかる所か次々と甲冑を撃ち抜かれてはザコキャラお得意な悲鳴を挙げてはバラバラと気絶して行く様が見える。
「ったく、敵地に単身突っ込まないでよ!壁が見ている以上手加減して殺さないのも大変なんだから!」
「壁?――あー。壁サクラか、悪い」
「だぁぁれぇが壁ですってぇ?早くあのザコを片付けなさいよ牛フェリア」
いや、こんな場所で痴話喧嘩は余計カオスになるだけだから、しかも?
「流っ。前っ!後ろっ」
「カエル?…おわ!」
サクラちゃんとフェリアちゃんに気をとられていたのか、俺自身敵さんの接近を忘れていた。
すかさずベルトの後ろに突き刺した2丁拳銃を?
「あれ?…やべ」
万事急須とはこの事だろうか。俺の武器。フェリアちゃんに預けっぱなしだったっけ?しかもぶっちゃけバトロワでも最下位だった俺とカエル。
武器があったとしても唐突すぎる敵を目の前にしては扱えず?
「小僧共。動くな?っい!」
「あれ?カエルの杖、折れちゃったじゃない、なにこれ」
「お、おお俺様の杖ェ」
危機一髪に俺を捕まえようと近づく兵士が白目を向き落下。
棍棒みたいにカエルの杖を振りかざし、キョトンとするサクラちゃん。しかし彼女の足元には破壊神サクラに涙目カエル。しかもクーがカエルを慰める形なのだが。
残りの数名いる筈の兵士もいつの間にやられ声を響かせ次々と落下している。もしかして。
「だからケイジが早く避難しろと言ってたのに、ほら、今の内に壁を連れて早くっ!」
又壁って…
そう告るもあの距離から確実な狙撃をするフェリアちゃんの無双。更に一番安泰な氷の槍を形成しては登って来る輩に撃ち込むリナちゃんの支援も鮮やかとしか。
「ねえ、流にカエル。ちょっといいかしら?」
「「って?早く逃げなくちゃサクラちゃん」」
下側から「かかれぇ!」やら「畳み掛けろ!」やら無双状態の惨状のさなか、何故か場違いな円満な笑顔を向けるサクラちゃんに俺達二人は非常に嫌な予感がしてならない。
何故なら。
「お宝をさぁ、このままみすみす逃すよりね?私的にはこの騒ぎに乗じて確保する良い作戦を思い付いたのよ」
『チャチャチャチャラ〜』
と、未だよくあるRPGに有りがちな戦闘ミュージックを奏でるクーを頭上に乗せこれまた無駄なドヤ顔がこの後とんでもな頓挫の予感がしてならないんだが。
「さあ、怪盗サクラ!眠れるドラゴンの瞳を頂きに参上ってね!」
「……」
「なあ、流。あの壁。置き去りにしてトンズラかますか?」
いやいや、サクラちゃん。自ら怪盗を名乗るのはお姫ちゃんじゃないからね?怪盗イコール墓荒らしかコソドロ?……トレジャーハント自体俺やカエルもコソドロか。
うん。ま、ここまで来たんだ、俺達はそもそも先住民が残したお宝を盗む泥棒。
こうなりゃ伸るか反るか、あのサクラちゃんの為に人肌脱ぐのも夏休みの良い思い出になるしな。
「で?ねえ、サクラはあの眠れる巨大翼竜をなんとかする方々思いついたのかしら、先ずは正攻法で熟睡中接近するのもありだけど。この騒ぎだし、もう無理ね」
「え?リナ?」
「「リナさんんん!?」」




