5th
――ツンと地肌に突き刺さる冷気の中をカツコツと乾いた複数の足音だけが無音の世界に響き渡る。
何処かしらの空洞から生暖かい風と共に唸りが一定周期に耳に触る。
何百。いや何千もの時代の流れを感じるかのように、薄っすらとした鍾乳洞が水滴を含んでは大自然の芸術を構築している。
そんな薄暗い闇を切り裂くように光明な光でダンジョンマップをチェックし、先頭を行くリナちゃん。更にケイジくんの攻略組。
その二人にカツカツと足早に絡みつく第三者。サクラちゃんの後ろ姿が闇に映り込む。てか、かなり先程の綱渡りがお気に召したようなのだが?
「ねえ。聞いてる?全く、わざと突き落としたんでしょ!」
「――ふっ」
「って又笑ったわね!バカ護衛。突き落とされもし死んだら絶対化けて出てやるんだから!」
いや、ダンジョン攻略の折角緊迫した空気をぶち壊すような黄色い声でケイジくんに突っ込みを入れてはやはり軽くあしらわれフグみたいに膨れているような。
「つーかさぁ。なあカエル、さっきからお前。なに石器時代みたいな事やってんだ?」
「石器時代?ふふふ、良くもまぁお前達はダンジョンマップのみでづかづか行けるなぁ、もしかしたら危ないトラップとかも見落とすぜ?」
「いやいやいや、トラップってもこのとんでもなメンバーなら関係ねーんじゃね?以前みたいに俺達だけならヤバイけどな」
「おーおー、言ってくれんな、流」
彼との会話の中。俺達二人の様子を興味本位で眺めるフェリアちゃん。
まぁ彼女の目線は今現在カエルが何処かしらから持って来た先住者の亡骸の一部。
その骨に薄汚れた布切れを巻きつけ手持ちのオイルを染み込ませては発火性のある石でインスタントだが松明を作るのだろう。
「ほうほう。そーやって原始人は火を起こしてたのか。面白い遊びだね!」
「あ、あそ?…は、ははは」
うわちゃ〜。なんか言いたそうだなとは察知していたけど、まさか俺が思っても言えない一言をド直球で吐き捨てるフェリアちゃんの突っ込みはもう彼の扱いに慣れたのか。
「最初からこれ使えば?」と、拳代の魔弾を右手の平に形成。眩く光るそれを野球ボールを投げる容量でホール天井付近まで浮き上がらせ、臨時的に照明弾を作り出す魔術を発動。
俺も、ぶっちゃけ始めて見たが、これ、後でコッソリ教えてもらいたいと思ったのはつかの間。昼間のようになるホール。そのホールを先頭を歩くリナちゃんとケイジくんの足が止まる。
それに合わせるようにケイジくんは懐にある剣に手をそえギャーギャー騒ぐサクラちゃんを自分の背後に起き臨戦態勢。
え?な、なに?ダンジョンを明るくしたらマズイんか?
「ちょっ!流にカエル!アンタ等、なに危険な事してくれたのよ」
「えっ?…って、俺がやったんじゃ。フェリアさんんん?」
「危ない冒険するね。カエル」
「なぁ!フェリア…てめ、俺様をダシに使うとはいい?」
「ね。流」
「うっわ…」
多分、彼女が興味津々な笑顔で見てたのはやはりカエル弄りか…
まぁ別の意味じゃクーとのやり取りでかなり楽しませてはもらっていたが、
しかし、ダンジョン攻略にて無闇矢鱈に光り物で照らす行為は、暗闇を好み住み着く生物を最悪眠りから叩き起こし、襲われる危険性もある。
ま、このメンバーならそんな初級や中級クラスの魔物なら余裕で駆除が可能だろう。
多少の危険性はあるが、暗闇の中襲われる可能性を思考すれば一気に奴らを閃光魔術で挑発し纏めて駆除もフェリアちゃんの考えなのだろう。
ま、別の意味的にもカエルネタで、受けを狙っての事もあると思うが。
「おわ?なんじゃこれ、こんな高さまであるんかよ」
「コラ!カエル!魔物はいないのは分かったからいいけど……でもあれって、まさか?」
「うん。たい焼きがあるな」
「「「違うだろが」」」
まさかあんなにも簡単に攻略にて終点になろうとは。
照明弾に照らされた頭上を指を差すリナちゃんに何故か突っ込むケイジくん。
もう、彼曰く最高のお宝イコールたい焼きという図式はお約束的に慣れたが。
外見からもこの遺跡は、突き出した塔の如く頭上450フィートまである天井まで突き抜け式のようである。
当たり前ちゃー当たり前だけどかなりベタなパターンにもなるが。その中間地点当たりまで螺旋状に設置された階段。
その階段をガチャガチャと一気に駆け上がり、更に俺達の最終目的にもなる宝の箱らしき物が目の前に見える。
その箱がある位置まで登りきり。更に箱を挟むように続く通路には、仕掛けやトラップみたいなものが無いのはリナちゃんが魔術で確認積みだ。
しかし、トラップよりもとても危険性があり、尚且つ刺激すれば対処方法すらも浮かばない獰猛すぎる何か。
「ど、ドラゴンなの?あれ」
「そう。ベタだわ。全く」
そう。首をかしげ際にリナちゃんに向かいサクラちゃんが口にしたそれが最後の最終にての一番の難所にもなるんだけどね。




