1st
『「『RAXUS』Age of Discovery…」世界』
作者…Ark-Royal(Aircraft carrier)
原作…『KON ~桜の夢と白狐~りめいくっ!』
原作者…黒
――静かだ。
目の前の視界を遮る闇。
何処までも続くかのような奈落の底に落ちて行くようだ。
静寂な空間に意識も――そして俺自身の存在すらも全てのこの世界を構築する存在すらも深く……それでいて何処か遠くに置き去りにした大切な物までも溶け込むようだ。
ここは。そうか――俺は。
目の前の暗闇を作るお気に入りのアイマスクを外す。微かな揺れを硬い木製のベット越しに感じながら現実に戻される。
キィキィとこの部屋の揺れに合わせて乾いた音を立てる電灯を視界に映し。上半身を起こす。
こじんまりとした部屋。その四隅に這い上がろうとする船虫を素早く捕まえては独自にくり抜かれた丸い窓の外に投げ込んだ。
「月灯りが見えないな。潮の流れが違う。方位的にはクラスリア帝国海域から約320海里付近だな。さて、昨年振りのラクサス国にようこそって事か」
ぼんやりと電灯が照らす木製の机から冷めきったコーヒーカップを手に取る。
それを眠気覚ましのように一口含みながら少し歪んだ壁掛けの世界地図を眺め、大陸間商船。ノーサプトン号が次に到着する港。
ラクサス国北海の一角に位置するシュナーベル港までの距離と到着時刻を思考する。
「さぁて、俺こと雨雲あまくも流ながれ様の大航海時代の幕開けだぜっ!」
しかし早朝から窓越しで熱く叫ぶ俺は次の瞬間。同じ部屋で熟睡中起こされた相棒に叩き伏せられたのは言うまでもないが……
精霊と呼ばれる者達が住む楽園。あまり人が出入りする事を拒絶する禁断の聖域。
『エルス島』
そんな島に足を踏み入れては先住民達が残して行った足跡を探り。現代の我々に対してのメッセージを考古学的に研究する変わり者達も少数ながら居る。
それが世間一般に呼ばれる。
『チンケな海賊だよな』
「おい!そこっ。人の思考まで犯して海賊とはなんだ海賊とはっ」
はぁ…これだから魔法を扱う奴は困る。初級無属性魔術。念話。無断で使用する水色髪の彼は一様俺の唯一の相棒。
カエルレウス・テッラ・ヴィントホーゼ。
通称カエルくんとも?
「痛って!クソガエル。いきなり人を鈍器で引っ叩くな。しかもなんだ?この杖は只の棍棒なんか?そんな使い方が主流なんか?」
「煩せぇ!これはお前専用の突っ込み道具だっつの。折角の夏休みをなんでお前の宝探し遊びに付き合わされなきゃなんね〜んだよ!しかも昨年だって黄金に変える魔術書(位さゴーグ)とかなんとかってアルカナ大陸でプテラノドンの群れに食われそうになるわ!」
「んだと?あれは洞窟事翼竜の巣をてめーの魔術で水浸しにしたからじゃねーかよ?…….はぁ…と、とにかく今回は知り合いも絡んでんだから頼むっ!もしお宝発見したら」
お互いに過去の苦い経験に懸念し合いながらもようやく落ち着きを取り戻す。
何故か相棒こと水色髪の彼は先程俺が吐き出した知り合いと言うワードにピクリと眉を潜ませては、第三者に対し嫌な表情で睨みを聞かせている。
無理はない。港から馬車に揺られたどり着いたここ。
ラクサス王国、首都ロゼリア・ローンフィア城前の王宮に続くメインストリート沿いの街路樹に、早速俺達と落ち合う予定の貴族様が迎えて来ているのだから。
ラクサス王国。その国の代表的な産物が、この季節でも鮮やかに咲き乱れる桜。
一年間ずっと絶え間無く美しく咲くこの花を観光に訪れる来客も珍しくない。
その花の名称を付けられた皇族の娘でもあるサクラ・アタナシア・リクル・ラクサス。
俺の相棒ことカエルとは学園にて一体何があったかは定かではないが。彼女の勝ち誇った表情からして冊子がつかないとも言えない。
「――ええっと」
どおにもこうにもこのサクラとか言う子とカエルとの複雑きわまりな空気は居心地が悪い。
しかもこの嫌煙な空気に拍車を掛けるように程よく伸びた銀髪をサラリとたくし上げながら第三者にもなる貴族様が「誰かと思ったら落ちこぼれのガマガエル?」やら、「なんだテメェ。絶壁で有名な姫様かよ、アホくさ。俺は帰るからな」やらある意味彼女の機嫌を駆り立てるが如く挑発しまくる。
今にもカエルの頭を鷲掴みにするなり一触即発なその彼女こと、今回での俺達の同行者でもありこれまた学園内でもレアメタル的なカエルくんの知り合いなのだろうか。
「と、とにかく二人とも、自己紹介はすんだし。ここじゃあまりにも目立ち過ぎる。だから」
「「は?…だから何(よ」」
「いえ、すみません…」
メインストリートのど真ん中にて、様々な因縁な輩を纏めて止めようとした俺がバカみたいに睨まれる。
その様子を今度は俺と同じ意見なのだろうか。
彼女に無理やり付き添われていたっぽいクラスメイトの大人しそうな黒髪の彼。
ケイジ・ルーンヴァルトがそっと俺の肩を叩きながらやれやれと、ため息を零していたのはここだけの話で。




