#004 見るものが気絶なのではと心配するような眠り方
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青年が帰還する。
神は少し驚きの表情を見せた。どう見ても光珠の少し大きいもの、といった風にしか形容できない外見をしているので、あくまで神がそういう表情を見せた、と思っただけなのだが。
青年の元いた時間の流れで計算して半年ほど、異世界に光珠を探しに行ったことが過去最長である。反対に過去最短は三日程度か。
神はつい三十秒前に、青年を送り出したところであった。いかに無限の時を過ごす絶対神であっても、青年と共にすごすことで、体内時計は青年の時間軸準拠に変わってしまっている。だからこの三十秒というのは、あくまで青年の世界での時間の三十秒だ。
この三十秒というのは、あくまでこのピラミッドの中だけで経過した時間の事だ。もしかしたら青年は、異世界で十年を過ごしてから帰還したのかもしれない。また、半年で帰還した時も、実際は三日くらいしか異世界で滞在していなかったのかもしれない。
それは「絶対神」にはわからぬことであった。
このピラミッドの外のことは、彼――あるいは彼女かもしれないが――にはわからないのである。そして興味も無かった。
絶対神はただ、光珠が集まりさえすればそれで良かったのだ。
しかしどうでもよく思ってはいるが、神は、時間の流れがバラバラなのは「世界の飛び散りが中期になり始めたからだ」、ということは知っていた。
青年が犯した大罪、世界の崩壊は、この絶対神の世界に影響を及ぼすほどになっていたのである。
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帰還した青年は、いつだったか神が用意したベッドに倒れ込んだ。
ほとんど気を失ったような体の投げ出し具合。見るものが見ればそれこそ「気絶したのでは?」と心配になるに違いない。
ただ、もちろんこの場にそんなモノはいないので、青年への心配が生まれるようなことも無かった。
絶対神ももう「慣れた」のである。
だからこそ、今回青年がベッドの柱に頭をぶつけたのは少し意外であった。
この、寝ることに全人生を捧げているような男が、寝ることに対して失敗するなんて。
ふわふわと、空中を揺れる様に青年の近くまで泳いで行った絶対神は、青年の顔を覗き込んだ。
額が赤くなっている。
そして青年が懐に抱いていた光珠を吸収しようとして――
「ん……薬草……で、回復すれば……痛くない、と、思う……大丈夫、だいじょ……ぶ……」
という青年の声に飛びあがった。
――――なんだ、寝言か
それにしても、意味の分からない寝言である。
RPGゲームの夢でも見ているのか? それも、勇者が出てくるような。
だとしたら、その勇者は、一体何代目だろう。
絶対神には分かる筈が無かった。




