#003 広域殲滅用自立歩行大破壊型決戦兵器付きベッド
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青年は再び、ピラミッド――正確には違うが、ここでは便宜上そう呼ばせてもらう――へと帰還した。もう何度目になるかもわからない、ルーチンワークである。光珠を手に入れる、気付けばピラミッドに転送されている。そして、その後死んだように、半日以上眠りこける。ここまですべてが一連の流れであった。
絶対神はそのことについて、もう、何も言わなくなっていた。早く光珠を集めに行け、と、青年を叩き起こすことも無い。青年の眠りを邪魔することで彼の怒りを買うことを恐れたか、はたまた自分が声をかけた程度では青年が目覚めることが無いことに気付いたのか。
あるいは――別の事情があるのか。
日本語で「神のみぞ知る」という言葉があるが、まさしくその通りであった。ありとあらゆる森羅万象あまねくすべての生物事象の絶対的上位存在である絶対神の考えていることは、絶対神にしかわかりえない。それこそそのまま「神のみぞ知る」、である。
とにかく青年は、「アイマスクを下ろすのもそこそこに」、眠りへと落ちていったのであった。
そして。
青年の懐から飛び出た光珠は、絶対神と合体した。
……かのように見えた。
しかしそのことについて言及するものは、この場にはいない。それを「できる」可能性を持っているのは、ただこの場において青年だけなのだが――しかし彼は、眠っていたのだ。
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「寝足りない」
――――第一声がそれか、青年よ
「どうも最近、ここで寝てもあんまり疲れが取れないような気がするんだよね。僕になんかしてない?」
――――そうか。ちなみに青年が何時間寝ていたか聞くか?
いや、いい。
青年はそう返し、アイマスクを押し上げた。宣言の通り、確かに疲労の色が見て取れた。
それはなぜだろう、と、青年は考えて――そして。
ある、一つの考えに辿り着いた。
「やっぱり、ベッドが無いからかもしれない」
確かにこの床は、床とは思えぬほど寝心地が良い。並みの布団では到底太刀打ちできないに違いない。だが、いくら寝心地がよくとも、床は床だ。
――――ベッドだと? そんなもの、なくとも寝られるだろう
「いや、寝られるのは寝られるけど、やっぱりなんか違う気がするんだよね。なんか違う」
――――それなら、次の光珠を取ってくるまでの間に作っておいてやろう
青年の我が儘に対する神のその提案に対して――青年は、苦笑した。
「見たことないような破壊機能はつけなくてもいいからね」
――――どういう意味だ
神のその問いに対して、青年は小さな笑い声をあげたきり、答えなかった。




