03 END
モンスターハウスを抜けると、そこには幻想的な空間が広がっていた。
深い青の湖畔、適度に湿った土、日の光が湖畔に反射して見れば見るほど、幻想的な空間である。
「ここがナイロック湖だ。」
「うーん!いいとこ!」
「樹、でっかい。」
皆、思い思いの言葉をあげる。
と、ふと目を向けた先におっさんが釣りをしていた。
リードが話しかけていた。
「調子はどうですかな?」
「ダメじゃ。ボウズじゃよ、ボウズ。」
と言っていたおっさんの竿が凄い勢いでしなり、引かれる。
「ぬぅおぉぉぉぉぉ!!!!」
柔和な表情のおっさんに青筋がたち、腕や足にも筋肉と血管が浮かんでいた。
と、不意に皆にも浮かんであろう手伝いますか?と言うウィンドウが浮かんだ。
「よし、手伝おう。」
リードが真っ先に言った。
しかし、リードが手伝っても全く動かない。仕方なく、ラッキー以外の全員で手伝うと竿が持ち上がり、その巨躯は宙を舞った。
「でっっっか!!!」
「大きいな。」
と、その魚……もうアザラシとかトドみたいな感じだ……は地響きを発しながら落ちたが、直ぐに体勢を立て直す。
「やった!やったぞ!主を釣った!しかし……旅人さん、頼まれてくれぬか?この主を倒すのを……」
全員が頷き、イエスを選ぶ。
「よし!やってやろうぜ!」
「よっしゃぁ!!勝ってやるぜぇ!」
「後方支援はお任せを。」
「……」
「行こう!クロウ!」
「はい!!」
全員が鬨の声をあげて主の前に立つ。
どうやら、序盤にしては強そうなモンスターだ。中ボス級だろう。
「行くぜ!」
リードとセカンドの二人がタゲ取り、ハラが後方で回復や強化、ラッキーは遠距離攻撃、俺は基本、駆け回り攻撃、クロウは委任と言った感じの陣形。
しかし、敵は地震など広範囲の攻撃を使用してくるため、中々はかどらない。
「場にさまよえるって!危ねぇ!」
クロウは先程から呪文を詠唱しているが、地震でキャンセルされてしまうようだ。
「くっ!」
先程から、刹や二連撃技 閃刹などを使い攻撃しているが、これもまた厳しい戦いをしている。回復が後一人いれば……パーティが六人というのを今更恨むほどだ。
ハラのエンハンスがされたのを確認すると、俺は閃刹を放った。
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敵のHPも四分の一をきった。
しかし、こちらも厳しい。
「!!」
無言の気合と共に放ったラッキーの礫は敵のHPを五十程度削っただけにとどまった。
「がぁぁぁぁぁぁ!!!」
主はシャウトと共に地震を出すモーションをとったとき、俺は閃刹を放った。
「後は、任せたぜ……」
丁度、詠唱を終えたクロウが頷いた。
「ああ、任せろ。」
クロウの周りの地面からゾンビが現れ、咆哮をあげた。
「と……突撃――!」
へっぴり腰になりながらも突撃する彼に援護として、ラッキーが礫を放つ。
先程と同じ程度のダメージ、さらにセカンドがタワーシールドを構え突撃。
シールドなのでダメージは少ないものの、貴重なダメージソースだ。
「地震だ!急げ!離れろぉ!!」
総勢が退く。しかし、クロウは少し遅れているようだ。
「ぬぅっ!」
ヘトヘトの身体を奮い立たせ、クロウを引っ張る。
「大丈夫か?」
「ええ!」
クロウは再び、構え直すと突貫の指示を出した。
グロテスクな姿になったゾンビ達も続く。
グロテスクなものは慣れていると思ったが、何かもよおすものがある。
「あと五十!!」
「行くぜぇぇ!!」
俺とクロウが同時に突撃。
クロウの右ストレート、残り三十五。
俺の刹、残りの五。
「トドメだぁぁぁ!!」
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
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「クロウ君……すまないが君にはパーティを抜けてもらいたいんだ。」
「私も…………それは無理ですね。」
「俺も苦手なんだ。そう言うの。」
「……キライ」
皆、クロウに言う。
「お詫びと言っては難だが……このナイロック湖の主の魂を譲るよ。」
と、クロウに言い放つと彼等は行こうと言った。
「なら……俺もパーティ、抜けさせてもらうよ。」
「何故だ?君は主力に必要だ!」
「そう言うの、嫌いなんだよね。いくらあんたらがグロテスクなもんが嫌いであっても、お前らがピンチになった時、最後まで戦い抜いてくれたのは彼だ。少なくとも、ラッキーよりは働いたと思うぞ。だから俺は、決してそんな奴とパーティを組みたくないし、信用したくもない。」
俺らしくない言葉が続く。
「お前らにはわからないだろうな。彼がどれだけ傷付いたか。」
俺はクロウに行こうと合図して彼等を離れた。
「文句があるなら、着いて来ても構わないぜ。秘密にしてたけど、俺のHPはナイロック湖の主と余り変わらないし、攻撃力もお前達を一撃で屠れるくらいあるからな。」
そう言うと、俺は見晴らしのいい場所に行った。
「いいのかい?彼等と上手くコンビネーションとれてたけど。」
「仲間外れにする奴が嫌いなだけさ。自分から誘っといて抜けて欲しいって。笑わせんのも良い加減にしてくれよ。」
「優しいんだね。」
なんだか照れるが適当にごまかす。
と、クロウが泣いているのがわかった。
「リアルの方でさ、普通の人間とは違う容姿なんだ。それを理由に友人が出来なくて、自然とコミュ障になってさ……」
「もういい、それ以上言うなよ。」
つまらない理由で……
世界には色んな人がいるってのに。
「俺も言わなくちゃならないことがあるな。」
「えっ!?」
と、その時、聖夜を名乗る青年がログインして来たようだ。
「クロウ!伝えたいことがあって来た。丁度、流もいるな。」
俺は彼の言葉を遮り、言った。
「俺の口から話すよ。」
無言で聖夜が頷くと俺は続けた。
「俺、実は光珠って物を集めて異世界から来たんだ。信じられないかもしれないけど、事実なんだ。」
「確かに流なんてプレイヤーはプレイヤー情報になかったし、侍ってのも上級職なんだ。」
「ああ。そして、その光珠は君の心の中にあるのがわかった。君が、それを心から信じてくれればそれが出てくるんだ。」
暫くの沈黙の後、クロウがメニューを開きながら言った。
「ありがとう。君にはこれを。」
「ナイロック湖の主の魂……いいのか?レアアイテムらしいが……」
それと同時にクロウの胸が一層、光り輝いた。同時に光珠が出て来た。
「よし!」
「へへっ、ありがとう。すごく楽しかった。例え異世界でも君と言う友人は忘れないよ。本当に……ありがとう……!」
段々と視界がホワイトアウトして行く。
「クロウ、君の事も忘れない。俺もすごく楽しかったぜ!」
完全に視界がホワイトアウトした。
俺は、この世界で出来たコミュ障の友人の事を絶対に忘れないだろう。
名前:たしぎ はく
作品提供:友達はいないけどゾンビなら大勢いる
不和世界に参加して、その他感想や一言:
『そもそも本編が、まだ伏線だけばら撒いて放置してる状態にもかかわらず、こうして二次創作に使って頂いて恐悦至極。さて、ともゾンの宣伝もチョビっとだけ。文字数制限来たら強制終了します。
ハーレムはお好きですか? ……この物語には、主人公を好きだと「言う」女の子が多数出ます。
VRMMOはお好きですか? ……この物語には、VRMMOであると主人公の友人が「言う」ゲームが出てきます。
不遇職の抜け穴無双はお好きですか? ……この物語には、ゲーム内たった一人だとか、そんな職業が出てきます。
コミュ障ぼっちが友達作るために四苦八苦するお話は好きですか? ……この物語の主人公は、「確かに」コミュ障ぼっちです
ただ、そういった要素がお好きな方は、この小説を読まない方が良いでしょう……
なにせ、このお話は、それらすべてを【←ここまでで文字制限である350文字】』
名前:風林火山信玄
不和世界に参加して、その他感想や一言:非常に難しかったですね。選んでから驚きました。ですが、「ともゾン」は非常に面白い作品ですので、皆様も読んでみてください。某の作品も、気が向いたらよろしくお願いします。また、こんな企画があれば参加したいと思った企画でした。次回は、もう少し余裕を持って提出したいところですね←




