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異世界の始まりはママと共に

「はぁ~今日で16歳かぁ。結婚も出来ちゃうのにいまだ彼氏ゼロ、おまけに誕生日に失恋かぁ・・・」


夕食の後、入浴を済ませ自室に戻ってモテない人生を振り返ってみる。うん。強く生きよう。


「由依里ちゃーん、開けて~」

「どしたの?うわぁっ何それ?」


ママに呼ばれて扉を開けると、何やら綺麗な布?と小箱を手に持っている。


「うふふ~これはねぇママの・・・思い出かな。」


小箱の中から出て来たのは、一際輝くドロップ型をしたローズピンクの宝石とその周りを色とりどりの宝石で散りばめたネックレス。綺麗~どこぞのお姫さまの持ち物だと言われても納得できる。ママにぴったりだね。


「綺麗だね!パパにもらったの?」

「ふふふ。ママのママからもらったのよ。」

「・・・お祖母ちゃん?」


ママの家族の話を聞くのは初めてだ。幼い頃は気になったけれど、なんとなくママには過去を聞いてはいけない雰囲気があって、いつしか気にかけることすらなくなっていた。

そうか、いたのかおばあちゃん。ってまぁそりゃいるか。どんな人なんだろ?


「由依里ちゃんに似てとっても綺麗な人だったのよ。」


ママ、それは違うでしょ。あなたに似てたら美人ですが、私に似てたら平凡です。そして・・・『だった』ってことはもう亡くなってるのかな。そっか会ってみたかったな。しんみりしているママの様子に一緒にしんみりしてしまう。だめだ。話を変えよう。


「ね!ママこれ着けてみていい?」

「ん?いいわよ~由依里ちゃんにあげようと思って持ってきたもの。」


いや、ちょっと簡単に貰うとは言えなさそうな代物なんですけど。でも、つけさせてもらうくらいならいいかな?これでも一応女の子だ、綺麗な物には憧れる乙女心くらいはあるのだ。


「はい。やっぱり由依里ちゃんに似合うわ。本当に・・」


ネックレスをつけてもらうとそう言って涙ぐんでしまうママ。いやいや、泣かないで~。


「そ、そういえばお祖父ちゃんはどんな人なの?生きてるの?」

「・・・あぁのクソ親父のことは知らないわ。多分生きてるんじゃない。」


ママ!さっきまでの儚げな様子はどこへ。言葉汚くなっちゃってますから!急に荒れだしたママを宥めつつ、ママの故郷はどこなんだろう?いつか行ってみたいな~と思いながらネックレスを撫でる。ん?光ってる?いやもとからキラキラしてましたけど、なんか、めっちゃ光ってるー!!


「ママ!!なんか、なんか急に光ってるー!!」

「えっ!?まさか!?しまった!由依里ちゃん」


咄嗟に抱きしめられたママにしがみついたまま光が一層強くなる。視界が暗転した。





『・・・どうか。救って。』




誰?頭の中に響く優しい声。・・・なんだか申し訳なさそうな声だった。






「・・・ちゃん!・・・ちゃん!由依里ちゃん!!」

「・・・ママ?」


ぼんやりと目を開けると心配そうなママの顔。うん、やっぱり美人。ってここはどこだろ?頬をなでる冷たい風で一気に覚醒する。

辺りを見渡すと・・・ここはどこ!?私の部屋じゃない!どころか、なにここ!?砂漠!?鳥取砂丘か!?いや、鳥取砂丘にしても昔、家族旅行で行ったことはあるが、我が家から一瞬で来れる距離では断じてない。


「ここどこっ!?」

「う~ん。ママの故郷かな。」

「えぇっっっ!?何それ?ママはどこ出身なの?」

「ん?異世界よ?」

「・・・?えっ?」


What!?ママは頭を打ったのか!?今、なんだか某厨二ワードが聞こえた気が・・・いや、きっと良い世界の聞き間違えか。やだママ、良い世界なんて範囲広すぎるわよ?この状況でそんな冗談なんてお茶目すぎるよ。その旨を申し立ててみる。


「ごめん由依里ちゃん。実はママ異世界出身なの。だからここ、地球じゃないわよ?」

「えぇぇっっっ!?」


フリーズ。フリーズ。停止しました。てへって笑うママについていけず、しばし呆然とする。

いやいやいや、確かに昔は憧れましたよ?異世界。召喚物とかさ。ファンタジー好きですし。でもさ、平凡な私を召喚するなんて普通に考えてもないじゃない?で、転生も一回死ぬの嫌だからないじゃない?だから物語として夢は見ず楽しむことにしたのよ。物語的には、異世界に来たら美女とか美形の王子や神官に囲まれて説明されるんじゃないの?もしくは誰かの子供として生まれるのでは?

なのになぜ?保護者同伴の異世界って何?しかもなぜ平凡な私の母親が異世界出身なの!


この状況に全くついていけず、現実逃避を始めたところで、ママに肩を掴まれる。


「由依里ちゃん!こっちに来ちゃったからには仕方ないわ。とりあえず落ち着いてよく聞いて。まず、こっちの世界ではユーリアとしか名乗ってはいけないわ。地球での名前は真名にあたるから名乗っても書いてもだめよ。これは絶対に守ってね。」


「真名…ユーリア…」


いや、平凡な私にユーリアなんて異国な名前合わないでしょと思ったのに呟いてみるとすんなりと馴染んだ。


「次にこれからやってくる人間はほとんどろくなやつはいないわ。十分気をつけてちょうだい。」


ママ、故郷で何があったのよ。


「最後に、由依里ちゃんは恐らく強大な魔法が使えるわ。だから用心しなさい。利用されないようにしっかりと相手を見極めるのよ。」


魔法が使える…えっ?魔法!?それはちょっと嬉しいかも?やっぱり一度は憧れるよね。どんな魔法が使えるんだろう?こんな状況なのにわくわくしてしまう。まぁ隣にママがいるから安心しているのもあるだろうけど。


「来たわね。さぁユーリアちゃん、とりあえずこれを被っていなさい。簡単に姿を見せてはいけないわよ?」


ママがこちらに来る前に手にしていた布をすっぽりと私に被せる。しばらくすると大勢の人の気配がする。馬に乗って騎士のような人達がやってきたようだ。月明かりで辺りを見渡せるものの顔まではよく見えない。


「そこにいるのは誰だ!イシュトゥール様の御使いか?魔物か?」


イシュトゥール様?誰だそれ?私の疑問を他所にママが厳かな声を出す。


「炎の塵となりたくなければ控えなさい。わたくしはシルヴィア=エントラーゼ=イシュタリアよ。」


「シルヴィア様?まさか!」

「紅蓮姫?彼女はこちらにいないはず」


騎士っぽい人達がざわめく。


「疑わしくはその目で確かめなさい!」


ママが手を挙げると炎でできた巨大な鳥が出現し辺りを紅く染める。


「あれは、紅蓮鳥!!本物だ!」

「紅蓮姫が帰ってきたぞ!」


いやいやいや。炎でできた鳥って。紅蓮姫って。どこのファンタジーですか。ママ口調違いすぎだし。さっきから分からないことだらけでついていけない。とりあえず夢だなこれ。じゃなきゃあんなばかでかい炎でできた鳥をママが呼べるわけない。そうそう、だいたい異世界なんて、あるわけないしね。よし!寝よう!!そう思ったら目の前が暗くなった。


「きゃぁっユーリアちゃん!ユーリア!」


遠くでママの声がする。

うん、今日はフラれたいでちょっとおかしいに違いない。明日こそはいいことありますように!私は目を閉じた。

















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