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一日目 槍ヶ下光一はマニュアルを読まない。

「な、なんという、クソゲーエンド!!」


 布団を蹴り飛ばしながら起き上がった俺は、いきなりそんな事を口走ってしまった。

 何がというのもあれだが、無駄に良く覚えている夢の話だ。

 三日間、何も出来ずに彷徨い歩き、とうとう行き倒れて死んだと思ったら、いきなりエンドロールが流れだし、物悲しいバックミュージックと共に、俺が夢の中の三日間で行った行動のダメ出しが、延々と流れていく。


 曰く、ちゃんと武器は装備しましょう。

 曰く、ちゃんとご飯を食べましょう。

 曰く、ちゃんと人と関わりましょう。

 曰く、ちゃんとお金を稼ぎましょう。

 曰く、ちゃんとヘルプは読みましょう。


 色々と突っ込まれた挙句、最後に獲得品のリザルトで、初期のナイフ、初期のアイテム袋、銅貨一枚、貴方の獲得した価値は、約100円です。 なんていう評価を受けたのだ、全くもってやってられん。

 

 あんまりに頭にきたので、顔でも洗おうと、捲り上げた布団を脇に寄せようとして、何か重い物を布団が巻き込んでいるのを感じた。

 布団が巻き込んでいた物。

 そこにあったのは、薄汚れているが使い込まれた鞘と共に革のベルトに吊られた、分厚い刃を持つ大ぶりのナイフ。

 そして革製の巾着袋然とした、使い込まれたポーチと、一枚の硬貨。


「マジ?」


 慌てて、俺は枕の下を確認する。

 そこには、変わらずに存在する、あのカード。

 カード拾った時からごと、夢じゃなかったのか。

 まさか、あのリザルトでの獲得とは、リアルに持ち帰る事だとでも言うのか?

 もしそうだとしたら……面白いかもしれない。

 俺は取るものも取りあえず、飯喰って用事を済ませた後、再び布団に潜り込んだ。




 夢の中で目覚めたような感覚が、俺の意識を覚醒させる。

 昨晩は認識が甘かったのか、ボンヤリしたままの状態で過ごしたが、今なら判る……これは、夢じゃない。

 そして、現実でもない。

 あくまでも作られた、仮想のリアルだ。

 とはいえ、それが判るのは、世界がちゃちいからではなく、そういう風に認識しているから。

 ここは箱庭。

 揺れ幅を持った予定調和が繰り返される、巨大で精緻な箱庭。

 俺は、その中で物語を紡いでもいいし、何もしなくてもいい。

 好きに動いて何かを得て、それをリアルに持ちだしてもいいし、持ちださなくてもいい。

 総ては自由だという事、それだけは認識できた。


 さて、今回は意識して箱庭に降り立った俺だが、前回は夢心地のまま、持ち物を一旦片付けようと、アイテムボックスを開いて、総て放り込んでしまったのが、大きな敗因だった。

 このアイテムボックスだが、通常のゲーム等で在るような保管場所とは、大きく意味の違うもので、実際は回収ボックスというか、持ち出しボックスと言うか、要はリアルに持ち出す物を入れる為のスペースだった。

 因みに、本来はアイテム価値に金貨の十枚を掛けた額を代価として持ち出しとする為、金を持ってなければアイテム等を入れる事は出来ないのだが、何故か初期装備は価値ゼロなので、入ってしまったらしい。

 其処は入ったら拙いだろ。

 因みに現金は普通に一割の金額を持ち出せる為、銅貨十枚放り込んで一枚持ち出せたわけだ。

 そんな訳で、武器も初期費用もなくて、三日持ったのは中々頑張ったかと思う。

 というか、途中退場すれば良かったんだが、そこら辺を理解してなかったからな。

 今回は、ヘルプを読んでみるのを含めて、最初からやり直してみようと思う。


 ヘルプについては、疑問について開示できる情報があれば、答えが帰ってくる形になっているそうだ。

 親切なのか不親切なのか、疑問を考えないと答えが出てこない辺り、微妙としか言いようが無いな。


「じゃあ、まずこの世界って?」

『とある世界の、ある時点での情報を切り取った箱庭世界です。

 そこにイベント的な仕込みを行い改変しています。

 更に再生時にある程度の振り幅があり、毎回同じ状態とはいえなくなります。

 また、介入者(プレイヤー)の存在強度や行動に因っても変化するため、スタート時から時間が経つほどに、先は読めなくなります』

「アイテムのリアルへの持ち出しについて」

『条件の許す限り、すべてが可能です。

 その代償は、世界のエントロピーを少量使用しますが、個人使用の範囲であれば、世界の寿命が認識できないレベルで減少するに逗まります』


 なんか、物騒な話が聞こえたが、聞かなかったことにしよう。


「ステータス、レベル、スキル等について」

『現状のプレイヤーのステータスです。


 LV:1 HP:10

 STR:1

 DEX:1

 AGI:1

 CON:1


 現状は最低限のパラメーターの開示となります。

 この先のスキルの開放によっては、パラメーターが増えることもあります。

 また、プレイヤーの状態に因ってもステータスは変化します。

 初期装備のナイフを持つと、


 LV:1 HP:10

 STR:1+1

 DEX:1

 AGI:1

 CON:1


 以上の様に強化されます。

 また、ステータスの影響ですが、近接攻撃の命中はAGI同士の対抗判定となり、プレイヤースキルや事前準備による状態判定を含まない、同値での殴りあいなら基本的に五割の確率で攻撃の可否が判定されます。

 数値に差がある場合には、値の勝る側に5%のボーナス、劣る側に5%のペナルティが発生します。

 射撃においては、DEXと対象AGIによる対抗判定を行います。


 攻撃が命中した場合のダメージは、STRとCONの差で決まります。

 STRが1大きい毎に5ポイント、同値なら1ポイント、少なければダメージは入りません。

 大雑把に過ぎますが、この世界での基本となります』


 あっさりしたもんだが、中々に酷いな。

 特にダメージ周りの仕様に、酷いクソゲーの予感がする。


『レベルについては、現在のレベルよりも上位に在る者を打ち倒した際、その対象よりも1段階低いレベルに昇格します。

 また、レベルに差がある場合、上位者にはレベル差分の数値だけ、ステータスが増強されます。

 また、基本的な体力は、レベルごとに10ポイントを持ちます』


 おおい、経験値制じゃないんかよ。

 さっきのクソゲーって予感が極まった気がすんぞ。

 雑魚を幾ら倒してもレベルアップが無いとなると、既に基本線は攻撃力特化しかなく。

 回避・命中はプレイヤースキル任せで、相手は常に大物狙いってか?

 しかも、どれだけ強くなったとしても、レベル差とステータスの微かな差が致命的という、ある意味判りやすい、カーストじみたシステムだな。


『スキルについては、一度成功した行為について取得が可能で、次回の行為を容易にする効果を持ちます。

 例えば森において、偽装を施した潜伏を成功させると、潜伏:森のスキルを得ます。

 このスキルを使用する場合、初回時の偽装の準備を必要とせず、同程度の隠蔽効果を得ることが可能になります』


 なるほど、ステータスやらよりも、こっちの方が重要な気がしてきたな。

 とりあえず、ステータスとかレベル周りが、現状どうにもならなそうな事は理解したので、スキルに望みを託しつつゲームを進める事にした。


「ヘルプさん、チュートリアル的な事はないのか?」

『今の発言と、戦闘による死に戻りではなく、リタイアでもない、行き倒れによる死亡の実績により、補助特典が開放されました。

 称号:”無為の行き倒れ”を獲得しました。

 近郊の村に”初期訓練施設”がアンロックされます』


「ちょっ!?」


 なんか、某ダンテさんのゲームで、いきなり初期のステージで迷走すると、イージーモード開放的な感じか?

 なんか色々思う所はあるにしろ、受け入れよう。

 道を辿りつつ、村へ向かう。

 前回の時は、道とか無視して歩きまわってたが、洋々村にも行き当たらんとは、どれだけ同じ所を迷走してたんだろうな。


「ヘルプさんよ、何やら草原に兎っぽいのやら、豚っぽいのがいるけど、勝てるかな?」

『現在、対象の力量を判定するスキルも知識も持っていません』


 余計な事は考えるなってか。

 暫く歩くと、小さい村に行き当たった。


「よお、見かけない兄ちゃんだな。

 村に用事ってんなら、銅貨三枚だ。

 何か売りに来た商人ってんなら、物でも構わんが」


 約三百円か。


「ちょっと、お邪魔するよ。 ほれ銅貨三枚」


 騒ぎは勘弁だぜーと、後ろから掛けられる声に、片手上げて答えとく。

 訓練施設って、どこか聞いときゃ良かったな。

 とか、考えてたのも二十秒くらいだった。

 目の前に、明らかに後付で拵えました的な建物が見えた。

 看板に初期訓練施設と書いてある。

 どうみても、この村の需要とかにそぐわない、立派な建物が違和感バリバリに立っていた。


「コンビニの自動ドア開けたら、ホテルのロビーだったレベルだな」

「いらっしゃいませ。

 この度のご利用、有難うございます」


 あくまでも、にこやかに受付してくれる受付嬢。

 外の村には、どう見ても中世農村の女性しか居なかったのに、どう見てもデパート総合案内カウンターみたいな内側。

 元歴戦冒険者の親父とか、ロリ巨乳の奴隷エルフとか、親身になってくれるスレンダー美人のお姉さんとか、ストレス解消にハマった、ネット小説の異世界モノによる、ちょっとした夢が崩れた。


「すいません、此処では何ができるんでしょうか?」


 ちょっと腰が引けつつも、とりあえず聞いてみる。


「はい、この近辺の村にて取得可能な武器一式の訓練。

 近郊一帯の狩猟・採取可能な対象の知識取得です」


 うわ、確かにイージーモードだが、俺は気にしない。


「武器訓練を、お願い出来ますか?」

「そちらへ、お進み下さい」


 指示された先へ進むと扉があり、開けて進むと武器庫というか、雑貨屋の一角というか、余り上等とは言えないような感じの、道具やら武器やらが並んでいた。


「とりあえず、何使えば良いのやら途方に暮れるな」


 ざっと見た感じでは、両手使いの物は、斧と鉄の輪っか嵌めた棍棒、それと槍に棒くらいか。

 鍬やら鎌やらピッチフォークみたいな物もあったが、刃を立てるのに苦労しそうな斧よりも、更に癖が強そうで除外した。

 片手の代物としては、小剣、手斧、鉈、小槌、棍棒か。

 こっちはリーチと威力が両手より小さそうだが、盾の類が使えるメリットが有るんだろう。

 俺に使えるかどうかは別として。

 他に弓に弩が幾つかと、鞭か。


「いや、防具とかが先か、それ付けて動ける範囲の武器が、今の選択肢だな」


 今の格好を見る。

 初期の布シャツ、初期の布ズボン、初期のサンダル。

 初期のナイフ、初期の小袋。


 まず、サンダル脱いで、確りしたブーツと替える。

 布シャツの上から、半袖丈の革ジャケット。

 布ズボンの上から、膝上までの革ズボン。

 なめして柔らかそうな手袋と、手首から肘までの丈のある革製のガントレットもどき。

 革一枚の端に革紐が付いてて、腕に添わせて縛るだけのもんだが、邪魔にならないなら足しになるだろう。

 あとは、皮の帽子に革の外套。

 結構ズッシリしてるが、動けなくはない。


「ヘルプさん、ステータス見せてくれ」

『現状のプレイヤーのステータスです。


 LV:1 HP:10

 STR:1

 DEX:1

 AGI:1

 CON:1+1

 以上です』


「こんだけ着て+1かよ」


 かと言って、どれか外したら修正が無くなったので、纏めてセット効果とでも思ってるしか無いな。

 それじゃあ、とりあえず槍かな。


「ヘルプさん、ステータス」

『現状のプレイヤーのステータスです。


 LV:1 HP:10

 STR:1+2

 DEX:1

 AGI:1

 CON:1+1

 以上です』


 まあ、マシになったんだよな。


「これからどうしたらいいのやら?」


 多分、来た方とは逆に有る扉から出ろって事なんだろうが。


「行ってみるか」



 でたら、そこには草原が広がっていた。

 慌てて後ろを振り向くと、ちゃんと扉はそこにあった。

 草原には、村への来しなに見た兎っぽいのと豚っぽいの、遠くには牛っぽいのも居て、のんびりと草を食んでいる。


「これは、実地で覚えろと?」


 しばし考える……考えても仕方が無い事が判った。

 とりあえず、兎だな。

 そして、槍を持って二時間ほど、兎を追い掛け回した結果。

 どうやっても、無駄だと判りました。

 仕方ないので弓に持ち替えて、散々に明後日な方向へ向かって矢を飛ばしまくった結果、まぐれ当たりの一発が兎を仕留めて弓のスキルが開放されたらしく、それからは何とか当たるようになり、兎を五羽ほど狩りました。


「さて、ヘルプさん。 この兎どうしたらいいんだ?」

『兎を持って、カウンターに向かい、知識取得へ向かってください』


 要は、実地でやれということか。

 カウンターに戻って、知識取得を頼んだら、今度は図書室めいた所に出た。

 やはり誰も居らず、本を読んだら、やり方が書いてあるだけで、それ見て自分で頑張れということか。


「血抜きしてー、腹さいてー」


 もう既に大分放ったらかしだったから、今更意味は無いが、やり方だけは一通りくり返した。

 血の匂いやグロへの耐性は、基本で付いてるようで助かった。

 流石にゲームという部分の抑えは、ちゃんとしているらしい。

 五羽分繰り返すと、解体処理のスキルが開放された。


「さて、なんか腹減ってきたな」


 とりあえず、マシに見える兎肉と皮を手に、カウンターへ向かう。


「すいません、外に行きたいんですが、この兎とか装備とか、どうすれば?」

「此処で得た”初期の”シリーズのアイテムは、どうぞご自由にお持ち下さい。

 壊れず、無くなる事もありません。

 ただし、この世界では価値がないと設定されている為、販売したり譲渡する事はできません。

 他に必要な物があれば、幾つでも補充されますので、またいらしてください。

 訓練で得た兎などの獲物は、消費、使用、販売の全てが可能ですので、お持ち下さい」

「それでは、ありがたく」

「またのご利用をお待ちしております」


 俺は、受付さんに見送られて、外に出た。


「さて、すっかり夕方だな」


 辺りを見ると、皆が皆、家路に付いている様子が見える。


「やべ、雑貨屋か? これって売れるんかね?」


 兎の成れの果てを見つつ考える。


「お、今朝の兄ちゃんじゃねーか。

 どうしたよ。こんなトコで黄昏てよ」

「あ、朝の」


 村に入る時に見た警備の兄ちゃんか。


「なんだ? 獲物が売れなかったのか?」

「いえ、何処に持ってったらいいのやらと」

「なんだよ、水臭いな。 付いて来な、本当なら市場で店広げてる連中と、物で交換すんのが一番いいんだが、今の時間じゃな。

 雑貨屋の婆さんとこじゃ、多少買い叩かれるが、置いといてもしょうがないからな」

「あ、それは助かります」


 兄ちゃんに付いていくこと数分、俺の入った入口からは反対側の村の入口付近。

 幾つかの明かりの付いた店が開いていた。

 どうやら、俺の入ってきた入口は、街道とは逆の狩りやらに向かう為の、草原行きの出入り口だったようだ。

 こちらが、本当のメインの出入り口なんだな。


「あそこの店が、雑貨屋のばあさんの店だ。

 でもな、間違ってもばあさんとか言うなよ。

 ぶっ飛ばされて、鍋の具にされちまうからな」

「あはは、判りました」


 兄ちゃんと別れて、雑貨屋の軒先をくぐる。

 何やら雑多な臭がする。


「お邪魔します、遅くにすんません」

「おや、最近じゃ珍しい礼儀のなってる坊主だね」


 ふむ、見た感じ五十くらいのおばちゃんで、血色の良い丸々した感じから見るに、ばあさんって感じじゃないけどね。


「こんな時間であれなんですが、買い取って貰えると助かるんですが」

「どれ?」


 兎の皮と肉を差し出して様子を見る。


「ふん、あんまり状態の良い皮じゃないね。

 まあ、おまけして銅貨十五枚かね。

 肉は買取らんのだけどね、ま、今晩の晩飯にするかね。

 纏めて銅貨五枚で引きとるよ」

「助かります」


 大体、二千円か。

 なんとも厳しい世界だな。

 銅貨二十枚うけとって、雑貨屋を出た。

 さて、飯か。

 さっきの兄ちゃんが向かってた方に酒場っぽいのが有ったな。

 そこに向かうとするか。


「すんません、何か飯食わしてもらえませんか」

「エールと肉とパンとサラダにスープで銅貨十五枚だ」


 うわ、たっけ。

 でも、まあ、今更動きたくないな。


「お願いします」

「なあ、明日の朝飯に、パンとチーズ包んでやろうか?」

「あ、助かります」

「銅貨五枚な」


 うわぁ、今日の稼ぎかっぱがれた。


「で、弁当受け取ったは良い物の」


 残りの銅貨七枚では宿はなかった。

 馬小屋の軒差し貸して銅貨五枚とか鬼か!!


「あっ!?」


 いいこと考えた。

 初期訓練施設に向かう。

 訓練を頼んで、武器庫の部屋で、外套を敷いて横になった。


「おやすみなさい」


 翌朝、叩きだされなかった所を見ると、一応ルール内であるらしい。

 それから数日、草を体中に縛り付けて兎に近寄れる距離が伸び、風の向きなんかにも気が回るようになって、潜伏技能が上がったのか鳥を狩れるようになり、気が大きくなった所で豚に手を出して、CONが高いのかダメージが通ってない様子で逆襲を喰らい、半分削れて逃げ出した。

 収支としてはトントンちょっとプラスくらいで、ほぼ横這いを続けつつも、スキルの類を伸ばしているので、達成感は有る。

 それから更に数日、どうやら不意打ちだと、ステータスが半減するのか減少するのか、まさかの弓でダメージが通ったようにみえる豚に、追い打ちをかけて初討伐を成し遂げた。

 この豚、流石に肉の量も皮も大きいので、その日は初めて大きく収支が黒くなった。

 これからは、豚をメインに据えて狩りをしよう。

 そう思って、例によって武器庫で寝た翌朝。

 施設の外には、地獄が広がっていた。


「なんだこれ!?」


 施設を出て目に入ったのは、倒れ伏した村人たち。

 全身の肌をドス黒く染め、痣のように溶けた傷から、出血して死んでいる。


「伝染病? いや、出血毒か?

 ヘルプさん、こりゃ何かの襲撃か?」

『それに対する答えはありません。

 ひとつ言えるのは、死に戻りでは、その周回にて取得した諸々が、次回の再生時に引き継げないということです。 ご注意下さい』

「あー、何某かの危険があるってか。

 えっと、今は何日目だ? 15日目か。

 ヘルプさん、立ち止まりすぎのペナルティって線はないんだよな」

『はい、プレイヤーの行動に関連するペナルティはありません』

「じゃあ、普通にイベントか、強制戦闘とかじゃなけりゃいいんだけどな。

 とりあえず、飯食える所が無くなった感じだし、リタイアするのは確定として、ちょっと調べるくらいはした方がいいか」


 死亡フラグ立ってそうで嫌だけどな。

 大きく村の柵近くをグルっと回ってみたが、外から何かの襲撃が有ったようには見えない。

 死体を見てみたところ、何かしらの噛み跡か爪痕が有った。

 恐らくはレベル1程度には、あっさり致命ダメージを発生できるくらいの毒じゃないだろうか?

 噛み痕なんかを見ても、相手はそれほど大きいもんじゃない。

 つっても、メートル行かない豚の手強さ考えると、ちょっと大きい犬猫くらいでも、普通に死ねそうな怖さはあるが。

 しばらくして、無事だったか、他所から村に来た連中なのか判らんが、死体を発見したんだろう、遠くで騒ぎが聞こえる。

 俺も他所から来た風を装って、人の集まりに耳を向ける。


「こ、こりゃあ血塗れの悪魔の仕業じゃあ」

「それって、なんだよ」

「この辺にゃ居ないはずだが、爪と牙に毒を持った山猫じゃあ」


 うん、無理。

 不意打ち食らって一撃死の未来しか見えん。

 どういうイベントなんだよ、初期配置にしては難易度高すぎじゃないか?

 それとも、この辺はさっさと通りすぎて、基本発掘できないはずの隠しイベント的なもんか?

 ともかく、ここでリタイアすることにしよう。


 プレイヤー:コウイチ


 初期の槍

 初期の皮装備一式

 初期の布の服上下

 初期のナイフ

 初期の革袋内:初期の弓と矢・銅貨32枚


 LV:1 HP:10

 STR:1+2

 DEX:1

 AGI:1

 CON:1+1


 武器スキル:弓2・槍1

 一般スキル:解体2

 野外スキル:潜伏2(草原)

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