表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちの部長は可愛いけど危なっかしい  作者: ミノタウロス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/1

部長と僕

「さて、行くか!」


僕の名前は田中たなか 博人ひろと

今年この高校に入学した1年生。

本日の授業スケジュールが全て終わり、クラスメイトみんなは各自帰宅したり、そのまま遊びに行く中、僕はこれから部活へ向かおうとしていた。

すると周りのクラスメイトに声をかけられた。


「お、おまえまた行くのか?」

「田中君!悪いことは言わないから、やめておいた方が・・・」

「いやいや、もう入部してから2週間だよ?そろそろ諦めろよ!」


クラスメイトは僕の進路を妨害し、祈るように諭してくる。

僕はそれを振り払いながら部活に行くのがここ2週間のルーティンと化していた。

なんとかクラスメイトの間をくぐり抜け、廊下に出ると急いで部室へ向かった。


「みんな、よくもまあ、同じことを繰り返すよな・・・」


クラスメイトが僕の事を心配しだしたのは丁度2週間前に科学部への入部を決めてから。

僕が入部をしたことを知るや否やみんなして考え直せの一点張り。

それほどこの学校の科学部はあんまりいい噂を聞くことはないことを入部してから知ったのだが、僕はそれでも部活へ行きたかった。


「お疲れ様です!部長」

「・・・ここでそうだな・・・あれを入れてみるか・・・」


ドアを開けると怪しげにビーカーでグツグツと液体を煮込み、ブツブツと呟く女性の姿が見えた。

彼女は僕の言葉なんて聞こえないほど集中しながら乳鉢で何かを磨り潰す。

僕はそのまま教室に入るとカーテンを開けた。


「なんでカーテンを開けずに薄暗いままにしてるんですか?部長」

「ん?・・・あぁ、助手君か」

「田中です。部長」


そんなやりとりも既にルーティンと化していた。

部長は暗い方が集中できるとか、性に合ってるとか言ってるけど、薬品とか取り扱っているのだから普通に危ない。

僕は部長の事を始めてあったときから熱中すると周りが見えない彼女のことが心配で仕方ない。

またいつものように注意をしようとすると先に部長の不敵な笑い声が聞こえた。


「フフフ、助手には丁度飲んでもらいたい物があるんだ。ちょっと待ってろよ~」


彼女が立ち上がると身体より明らかに大きい白衣をなびかせて準備室の方に入って行った。


彼女の名前は松下梨花まつした りか、科学部の部長で僕の1年先輩。

興味を持った物には一生のめり込む性格らしく放課後になると暗くなるまで理科室に籠るという迷惑な人だ。

場所のせいか少し薄暗いこの部屋で生徒なのに白衣を着て、こんなビーカーを沢山用意したりしてるものだから、周りからマッドサイエンティストとか悪の科学者だとか呼ばれて恐れられているけど、幸か不幸かそのことを本人は知らない。


「助手~!」


僕は部長に呼ばれ、準備室に入るとドヤ顔をした部長の姿があった。

その動きや様子で一瞬年上だと言うことを忘れてしまいそうだ。


「さぁ、飲んでみてくれ!私の自信作だ。」


突き出した部長の手には、なんか茶色く濁った色をした液体の入ったビーカーが握られていた。

その液体には色々な固形物が浮き、シュワシュワと泡だっていて、本当に飲めるものなのかも分からない。

部長はビーカーを僕に渡してくると小さい子のような期待の眼差しを僕に向けた。


「さぁ、助手!グイっと!グイっといってくれ!」


寝ぐせをそのままにしたような癖毛、制服の上から羽織ったダボダボの白衣。

近年のオシャレや流行に敏感な女子高生と比べると変な人だけど、そのボサボサ髪から可愛い顔を覗かせる。


(この人、挙動こそ怪しいけどとても可愛いんだよな・・・)


正直僕は彼女が可愛いから興味のない科学部に入部したし、クラスのみんなが止めてきても毎日部活に来ている。

彼女はマッドサイエンティストとか言われて有名だけど、この可愛さは多分知らない人の方が多いと思う。

だからって教える気はない。


(しかし・・・これを飲むのはなんか抵抗が・・・)


渡されたビーカーはキンキンに冷えていて手の感覚が無くなりそうなほど冷たい。

正直な話気が進まないけれど、彼女の期待に背くことは僕には出来なかった。


(えい!ままよ!)


僕はビーカーに口を付けて一口飲む。

浮いた固形物が唇にあたり、鼻にスパイシーな香りが漂う。

液体が舌の上に乗ると甘味を感じ、シュワシュワと舌の表面で弾け消えて行った。


「・・・お、美味しい?!」

「そうだろ、そうだろ!?」


僕が意表を突かれた顔を見せると部長が無邪気に喜びだした。

その表情を見ながらもう一口飲むと先入観が無くなり、味がはっきりと感じ出し、甘さと爽快感が口の中で相乗効果を生み、僕の知ってる味を思い出させる。


「・・・これ、コーラですか?」

「ふふふ、私の特性クラフトコーラだ!この味を分かってくれたのは助手だけだよ!・・・入部希望のみんなにこれを振舞ったらみんな逃げてしまってね・・・」


部長はそう言うと思い出したようにテンションが下がってしまった。

きっと暗い部室でビーカーのまま、何も説明せず出したのだろうか?

その様子が目に浮かぶように想像できる。

でも、ある意味良かったのかもしれない。

部長が不器用なおかげで彼女の笑顔が独り占めできるのだから。


「さて、助手!今日の実験内容はな~」

「爆発とかは止めてくださいよ?」


平凡な僕とみんなから恐れられている可愛い先輩の2人だけの部活が今日も始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ