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~雨沢 怜~

「ミステリー研究部」に部室は用意されていないらしい。


 理由としては、いろいろあるらしいのだが、やっぱり一番の理由は、部員が一人しかいないからだろう。


 生徒会の人間も、さすがに部員一人の活動を『部』として認めていないらしく、その為、部室もなければ部費もでない。ましてや顧問もいないらしい。


 なので今ミステリー研究部の活動場所は屋上になっている。まあ、『部』として認められていないので、活動もなにもないと思うのだが……。


 しかし木下さんはそれが許せないらしく、



「ほんと信じらんない! 生徒会のやつらはいったいなにを考えているのかしら。いくら部員が一人しかいないからって部室を与えないなんて……」



 まじで頭にくる! と愚痴を言いながら俺の五メートル先を歩いていた。


 これほど木下さんを興奮させることのできる雨沢先輩という人、いったいどういう人なのか。ますます気になることこのうえない。




《あんなご主人様を見たのは久方ぶりだ》




「どうぇばぁ!」



 お、おま! い、いつのまに俺の肩に!



「ん? どうしたの浦君?」



 振り返って疑問視を浮かべる木下さん。



「いや、なんでもないよ。なんか肩から腐乱臭がするな~(ぐさっ)と思ったら痛い目が焼けるように痛い!」



 目……目が! 目があああ! 俺の大切な感覚器官のうちの一つが!


 この人間もどきインコめ! 木下さんの守護霊じゃなかったら四度ほどぶっ殺してやるのに!



 俺の肩になれなれしくとまっているのは、自称、人間になれなかったインコ、またの名を妖怪人間インコマン、であるところの、木下さんの守護霊だ。




《今ので、多少なりとも気が晴れた。貴様の無礼な言動はこれでなかったことにしてやろう。しかし……次は命の保障、ないぞ?》




 容姿がキモ過ぎるため、全然見た目は怖くもともないのだが、俺の目だけは瞬きを尋常じゃないくらいのスピードで行っている。


 たった一回の攻撃で、トラウマとなってしまったようだ。




《しかし、お前には感謝している。あんなご主人様を見るのは何年ぶりか……》




 最後まで言い終わる前に、守護霊であるところの妖怪人間インコマンは再び、自分の居場所である主人の肩の上へと移動した。いや、足が人間なため、立っているようにしか見えないが……。





「さっ、着きましたよ」




 ふと前を見ると、屋上に通づるらしい一枚の扉と、その少し前に『立ち入り禁止』と書かれた看板が見えた。

 





「どうぞ。入ってください」



 『立ち入り禁止』と大きく書かれた看板を右に避けながら、木下さんによって開けられた扉の中へ入っていく。

 




――――人の少女が、そこにいた。





 格好は木下さんとまったく同じ、この学校の規定制服。胸のあたりについているリボンの色が青色というところが、上級生を示している。(ちなみにこの学校では、一年生は緑、二年生は青、三年生は黄といった、イメージカラーみたいなものが決まっている)




 腰の辺りまで伸びている黒い髪が、どこかの漆黒の令嬢みたいなそんなイメージを感じさせ、今は反対側を向いているため、顔を確認することは出来ないが、木下さんが可愛い系なら、目の前にいる先輩は、多分綺麗系に分類されるだろう。

 



 いや、そんなことよりも一つ気になることがある。





 目の前にいる女子がストライクゾーンかどうか確かめるとういう行動は、俺の頭の中の引き出しで、『そんなこと』の部類には入っていなかったはずなのだが、その決定事項をいとも簡単に覆してしまうような光景が俺の眼球に写っている。どうして……







――どうしてこの先輩には守護霊が憑いてないんだ?





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