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~ミステリー研究部~

「別に無理にとは言わないんですけど……だめでしょうか?」



「え? ……いや、別にそれは構わないですけど」



 構わないけど、なんだかな……。

 木下さんはなんにも悪くないんだけど、なにか男としての価値が四レベルくらい下がってしまったような感じがな……するんだよな……。



 でも、どうやら話の内容的には、俺と一緒にクラブに入ろうと誘ってくれてるみたいだし、これはこれでありな気もする。


 え~となんだっけ? ミステリー研究部だっけ?

 さすが木下さん! 彼女らしい選択……なわけないじゃん! な……なんでよりにもよって、



「ミステリー研究部なんですか!」

  


 おっと、つい心の声が表にでてしまった。



「あれ? 浦君、幽霊とかお化けとか信じてない? 結構好きそうに見えるんだけど」



「いや……信じてはいるんですけど……そんなに好きではないというか……」



 いまさらクラブで研究しなくっても、授業中でもどこだろうと実験しほうだいなんだよな。



「そっか……残念だな。浦君を雨沢先輩に会わせたかったんだけど」



「え?」



 雨沢……先輩? 



「その人って、どういった方なんですか?」 



 もしかして、木下さんの彼氏なのか! そ……そんな。俺の人生初めての恋は高校生活が始まる前にバッドエンドを迎えてしまうのか……。


 三次元の高校生活は、ギャルゲーみたいにうまくはいかないんだな……。



「な、なに考えてるの浦君? 雨沢先輩は女の子だよ? それに……私今――――」



「え? あっ、すいません。最後のほう聞き取れなかったんですけど」



「う、ううん。なんでもない」



 でね、雨沢先輩は、私の家の近所に住んでるんだけどね、と前置きをし、



「あの人は本当にすごいのよ! さすがはミステリー研究部の部長をやっているだけのことはあると思うの! なんていうか、人を寄せ付けないオーラ? みたいなのが漂っていて……とにかくもうすごいんです!」



 木下さんをここまで興奮させることのできる人物だから、きっとすごい人だとは思うのだが、なぜよりにもよってミステリー研究部なんてところに身を置いてしまったんだ。



 違う形で出会いたったな……。



「けれど雨沢先輩、人付き合いが苦手みたいなの。そのせいでミステリー研究部の部員も雨沢先輩一人だけだし。浦君も同じようなこと自己紹介で話してたでしょ? 人付き合いが極端に苦手で……みたいなこと。もしかしたら、雨沢先輩と気が合うと思ったんだけどな」



 残念です……と言いながら顔を伏せてしまう木下さん。ドMな俺としては、こんなことをされると、ちょっと心が痛む。



「じゃ……じゃあせめて、一度だけでいいので、先輩に会ってみてもらえませんか?」



「え? 雨沢……先輩に?」



「はい! 裏君も一度会って貰えたら、先輩の魅力が分かると思うんです。それに、もう先輩に言っちゃったんです。同じクラスに面白い男の子がいるって」



 行動速っ!



「だから……ね?」

 と言いながら両手を顔の前に合わせる。いわゆる『お願い』のポーズだ。

 いや待ってくれ。いくら俺でも一度決めたことを簡単に曲げるようなことはしない。そんな眼をウルウルにしながら見つめられたって……ほかの馬鹿な男ならともかく……俺は……。



「分かりました。会うだけなら大丈夫です」



 効果抜群でした。はい。



「ほ、本当? よかった~。じゃあ明日の放課後、すぐ帰らずにここの教室で待っててくださいね」



「え? 今日じゃだめなんですか?」



「うん。今日入学式だから部活はまだ始まってないの。明日から活動開始だから、どうせならそのほうがいいじゃない?」



「いや、俺会うだけだから、別に今日でも――」



「じゃあ、また明日ね!」



 俺の話も最後まで聞かず、まるで湖を飛び立つ白鳥のような、優雅で可憐な笑顔を教室中にばら撒きながら教室を出て行った


 ……会うだけ、なんだよな?



「まあ、明日のことは明日考えよっと」


 

 深く考えることはない。ただたんに会ってほしい人がいると言われただけ。だけなんだ。



 逆に気になってきた。雨沢先輩って、いったいどんな人なのだろう?



 まあ、明日になれば分かることか。

 



(((また明日がくればいいけどな))) ←クラスメイトの野太い声 


 




 翌日俺の机の中は、不幸の手紙でいっぱいになっていた。



 

 どうやらこのクラスは、ロリコンだらけらしい。

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