~エンピオ~ 7
次の日も、木下さんは学校を休んだ。
この事態は想定内だったので、特に驚きはしなかったものの、机の上に見知らぬ一枚の紙を発見したときは、正直焦った。
書かれていた内容は……
((右を見て))
……右?
そう書かれていたから、反射的に軽い気持ちで右を見てみると、
(ヒュ――――――――――――――ン)
夏目さんが降ってきた。空から、屋上から、窓の向こう側に、地面に向かって……。
同時に教室内にHR開始の時間を伝える為の、チャイムの音が響く。
精神面への攻撃はキツいっすよ……先輩……。
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「とりあえず、理由を聞かせてもらえる?」
「……」
「朝集まる約束、忘れてたわけじゃないわよね?」
「……」
「言えないようなことしてたの?」
「……」
「何か発言しないと、捻るわよ?」
「――っ! (ブン! ブン!)」(注) 首を横に強く振る音。
「(ゴリッ! ゴリッ!)」(注) 首を捻ったことによって出た、正体不明の音。
「すみません、すみません、すみません」(注) 命の危険を感じた少年の口から出た懺悔の音。
「分かればいいのよ、分かれば……(ゴリリッ!)」
「――っ!」
言葉と行動、合ってないじゃん――というツッコミを入れることが出来ないまま、さきほどよりもさらに強い力で、俺の首に巻かれた腕は絞めてくる。
もう……ダメだ……、死ぬのか……俺……。