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~始まり~

時刻は朝の七時、場所はとあるマンションの一部屋




 朝の起きる間際の数分間、この時間を1分300円で増やしてやろうなんて誰かに言われてしまったら、俺は考えるまでもなくすぐさまサイフの中から野口さんを三人渡してしまうだろうな。

 

 それほど朝の起きる間際のこの時間というのは一日の中でもっとも貴重な時間であり、故に一番恐ろしい時間でもある。

 

 この時間の魔力に負けて、今までどれほど多くの人間が辛い思いをしてきただろう。まあ、俺もその一人なのだが……。


 

 しかしこの問題の解決方法は以外とシンプルでもあり、寝る時間をあと1時間ほど早めればいいだけの話なのだが、やっぱりそれもできなくて(夜の1時間だって、朝の10分間と比べれば劣るものの、俺にとってはストレス解消の為の大切な時間だ)、結局は朝のこの時間をダメな意味で楽しむ結果となってしまう。

 


 でも、今日の俺は違う!



 なんてったって今日は四月八日、待ちに待った高校の入学式当日である。

 

 そんな日にゆっくりぐっすりしっかりと寝られるわけもなく、テニスのことを熱く語る松岡●造なみに、俺の心は熱く燃え滾っていた。



どうやら一番心配していた、寝坊してしまって学校に遅刻する……なんて、アニメでよくある展開にはならなかったものの、逆に緊張しすぎて眠れず、小学生にでも笑われそうな子供みたいな理由で頭を痛める結果を招いてしまったことはとても残念だ。(バファ●ンでもあとで飲も。)

 

 

 時刻は現在七時五分ちょっとすぎ。高校までの距離はそこまで遠くもなく、歩いて十五分くらいでついてしまうから、あと四十分ほど時間があるな……と、ここまでの計算を頭の中でしながら、素早くパジャマから学校規定の制服に着替える。

 


 寸法を測りにいった時一度は着たが、やっぱり新品の制服というのはいいものだなあ……なんて考えながら台所に向かい、朝食の準備を始める。

 

 この辺の手際の良さは自分で褒めてやりたいくらいだな。

 へたしたら関東代表にでも選ばれるかもしれない……なんの大会かはおいといて。



 家を出る際、玄関口に貼ってある某アニメ番組のメインヒロインが載っているポスターに「いってきます」と別れの返事をして、我がマイホームである佐久間マンション205号室をあとにした。




 今回は前回みたいな失敗はできない。


 

 

 わざわざこんな遠くの都会までやってきたんだからな……と自分を元気つける為に声を出す。

 

もうあんな辛い思いはしたくない!



 そんな決意をいだきながら道を歩いていると、


「――あら、おはようございます」


「あっ、どうも」


 周りがよく見えてなかったのか、前からやってくるお婆さんの姿にまったく気づかなかった。突然のあいさつに内心少しドキドキしてしまって、曖昧な返事しかできず悲しい。


 

 すると数分後、再び前から、今度はお爺さんが、腰が悪いのか杖をつきながらやってくる。

 

 先ほどの失敗もあったので、今度はこちらからの先制攻撃を……、



「おはようございます。お爺さん」



「……」


 

 あれ? 無視ですか? いや、明らかに今、目が合った気がするのですが……

 

 ん? そういえばあのお爺さん、守護霊が憑いていな――、


「――っ!」


 しまった! やってしまった!

 

 ついさっき前みたいな失敗をしないよう、気をつけようと思ったところだったのに!

 

 とりあえず周りに人がいないか確認して……ってやっべ、あそこの木の影で幼稚園児がこっちを見ているではないですか!


(ニヤリ)


 笑ってる! 幼稚園児とは思えないほどレベルの高い悪顔でこっち見てる!



 とにかくまずはこの場を離れよう! 

 

 俺は全速力で、私立海生高校へ向かった。


 

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