~夏目 香織~ 7
太陽の光が届かないところだったら大丈夫、ということらしいので、俺たち三人は建物の隅の陰になっているところで小さくなって作戦会議を行うことにした。
「相手は女性の方だったんですか?」
「え? 女性って……私言いませんでしたか?」
「夏目ちゃん、名前しか言わなかったじゃない」
「そ……そうえば……」
す、すいません……と頭を律儀に下げて謝罪の言葉を述べる夏目さん。
その姿がまたとても可愛らしく愛らしい。でも百合なんだよな……でも可愛い……でも女好き……でも可愛い…………
「隼人君、どうしたの?」
「大丈夫ですか?」
はっ、危ない。あと少し遅かったら俺の中の悪魔の方の意見、(女になればいい)、という意見を採用するところだった。しかし俺の中の天使よ、(伊川君で我慢する)、という意見は悪魔以上に残酷な意見だから。俺の中、悪魔と悪魔王しかいないってことになっちゃうから。
「だ、大丈夫ですよ。で、どこまで話は進みました?」
「太陽と隼人君、本気で戦わせたらどちらが勝つか? というところまでね」
「……どんな会話の進め方をさせたら、そんな疑問が浮かんでくるんだ?」
「安心して。答えはもう出たから」
安心って、俺が負ける以外の選択肢はありえないだろ。これがテストの問題だったら、0点防止問題という扱いを受けること間違いない。
「結論としては、隼人君は素手なら勝ち目はないけど、トランクスを両手に持って、「変態ばんざ~い」と叫びながら突進すれば、五分五分でやり合える、どう?」
「貴様、太陽の戦闘力見縊りすぎなんじゃないか」
もしくはトランクスをなにかの武装だと勘違いしているのか、どちらかだ。
「ちなみにその意見、佳織の意見です~」
「あなたの意見は今後、二文字目が聞こえた時点で、鼓膜を遮断し聞かないようにします」
「しね――」
「ああぁぁぁ~、二文字目で遮断したせいで逆にとても傷ついたぁ!」
「ちなみに私が今言ったことは、「『シネマ』って日本語訳すると『爪切り』でしたっけ?」です」
「どちらにしろ、最終的に俺は傷つくことになっていたのか……」
精神的にくるな……そのアホ加減。
恐るべし、夏目佳織。