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~夏目 香織~ 3


「左から三番目の窓ガラスは鍵が壊れていたはずだから、そこから入ってちょうだい」



「え? 雨沢先輩は一緒に来てくれないんですか?」



「私はほかにすることがあるから」



 そう言うと雨沢先輩はすたすたと急ぎ足で、校門の方角に歩いていってしまった。



「なんなんだよ、まったく……」



 確かに僕が一番に作戦に賛成はしたが、朝一を指定してきたのはそっちじゃないか。すべてを人に押し付けるなんていくらなんでも酷いと思う。



 しかし、いくら雨沢先輩に対して愚痴を言ったとしても、それに比例して作戦が遂行されていくわけではないので、しかたなく一人で目的の物を届けることにした。



 空が少し明るくなり始めたころ、目的の場所――生徒玄関前まで来た俺は、とある人物の名前が書かれた下駄箱を探すために、眠い目を擦りながら一つ一つの下駄箱を確認していく。


なにぶんこの高校の生徒数は千人を超える。


名前だけで探すというのはとても重労働だ。


雨沢先輩がいてくれたらもっと効率よく作業を進めることができるのに。



 しかし作戦に賛成したとはいえ、よく考えたら今時下駄箱に手紙って……ちょっと古い感じがするな。


正直こんなところを誰かに見られるのはできるだけ避けたい。いくら人に頼まれたからとは言っても、他人が自分の下駄箱を物色している姿を見て、良い気分になる人間なんて人はいないだろう。



早くミッションをクリアしなければ。



 しかし、俺の願いも虚しくなかなか目的の名前を見つけることができない。すでにもう三往復目だ。これだけ探しても見つからないなんて……いったいどういうことだ。



「浦君」



 四往復目に入ろうとしていたところで、雨沢先輩が――めずらしく困ったような顔をしてこちらを見ている。


そういえばもうあれから何分経ったんだろう?


 探すことに集中しすぎて時間を忘れていた。外がもう随分と明るくなっている。



「もうすぐ陸上部と野球部の生徒がやってくる時間よ。今日はここまでにしましょう」



「そう……ですね」



 まさか下駄箱に手紙をいれるという作業がここまで時間のかかるものだとは思いもしなかった。情報が名前しかないとしても、この方法だったら簡単に成功すると思ったんだけどな。


夏目さんにもっと他の情報を貰わないと。





 ――この時、明らかに動揺の色を隠せないでいた雨沢先輩の様子に気づいていたら、もしかしたら未来は変わっていたのかもしれない。


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